木造駅舎の残る北の秘境駅 来年3月で廃止か 宗谷本線 雄信内駅(北海道天塩郡幌延町)
旭川と稚内を結ぶ日本最北の路線・宗谷本線。近年、利用者の少ない駅の整理が進み、名寄以北では昭和50(1975)年時点で40駅あったのが、令和6(2024)年7月現在は24駅と1つの信号場までに減少している。
古い木造駅舎の残る駅はさらに少なく、宗谷本線全体で見ても塩狩駅、名寄駅、天塩中川駅、雄信内(おのっぷない)駅、抜海駅の5駅しかない。これは宗谷本線も含めた北海道全体で昭和60(1985)年前後に木造駅舎から貨車駅舎や簡易駅舎への改築が進んだことによるもので、特に無人駅は維持費用削減のために駅舎の改築が進められた。
そんな中で、古くからの木造駅舎が残り、なおかつ廃止を免れてきた雄信内駅はかなり貴重な存在だと言えるが、X(旧:Twitter)上で同駅の今後が気にかかる情報が流れている。駅が所在する幌延町雄興地区の住民に対し、役場から3月で駅を廃止して駅舎を解体する方針が伝えられたというのだ。情報発信者が住民の家族ということを考えると、情報の信憑性は高いだろう。相当先になるかもしれないが、いずれ正式な発表が出るものと思われる。
雄信内駅は大正14(1925)年7月20日開業。駅名はアイヌ語の「オヌプナイ」に由来するとされる。雄信内の地名は天塩川を挟んだ幌延町と天塩町に跨る地名で、幌延町側は天塩町側との混同を避けるために「雄興」に改称されている。駅名の読みは「おのっぷない」だが、天塩町側の地名の読みは「おのぶない」だ。
雄興地区の人口は令和2(2020)年度の国勢調査で2人、雄信内駅の一日平均乗車人員は平成28(2016)年度以降0.0人という状況が続いている。駅周辺には住民がいなくなって廃屋と化した建物が点在しており、ネット上には「ゴーストタウン」という表現も散見されるが、地元住民からすれば気持ちのいい表現ではないだろう。
対岸の天塩町雄信内は郵便局やAコープ、駐在所、小学校などもある比較的大きな集落だが、マイカー時代になって久しい今日、わざわざ数十分もかけて雄信内駅まで歩いて行って利用する住民もほとんどいないようだ。ちなみに天塩町雄信内は指パッチンで知られるコメディアン・ポール牧の出身地である。
駅が所在する幌延町は町内の秘境駅を町おこしに活用しており、雄信内駅でも何度かイベントが開催された。雄信内駅も含めた町内5駅の廃止方針が示された際には町が費用を出して維持管理することで存続の道を選んでいる。維持管理費用にはふるさと納税も活用されているが、幌延町の負担が大きいであろうことは想像に難くない。令和元(2019)年11月29日の「第11回 まちづくり常任委員会会議録」によれば、列車の行き違いのための交換設備の維持費はJRが負担しているものの、雄信内駅は土盛りホームの維持費が大きく、今後10年で大規模修繕費用が4千万円弱見込まれるとのことである。同議事録では雄信内駅について、雄興や雄信内の住民が全く利用しないという現状にも触れられており、町としては維持費と観光資源としての経済効果を天秤にかけていたようだ。
雄信内駅の駅舎は昭和28(1953)年11月に建てられたもので、今年で築72年を迎える。厳しい気候の中で老朽化が著しく、維持費のかかる土盛りホームというのもあって、さすがに幌延町としても観光のためだけに残すのは厳しいとの判断をしたのだろう。いずれ出るであろう正式な発表を覚悟しておいた方がいいだろう。
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