築74年の木造駅舎が残る市街地内の利用僅少駅 来年3月廃止方針 根室本線 東滝川駅(北海道滝川市)
滝川市にある無人駅「東滝川(ひがしたきかわ)駅」について、JR北海道が来年3月ダイヤ改正での廃止を検討していることが分かった。令和元(2019)年度から令和(2023)年度までの5年間の同駅の一日平均乗車人員は、JR北海道が廃止の目安としている3人以下で、今後、地元・滝川市との協議を経て正式な存廃が決定されるものと思われる。
東滝川駅は大正2(1913)年11月10日、「幌倉(ほろくら)」駅として開業。幌倉は赤平市を流れる幌倉川に由来する地名で、幌倉川より下流にある駅周辺はかつて「下幌倉」と呼ばれていた。下幌倉は明治40(1907)年頃に入植した長野県出身の小林和三郎らによって開拓された地で、駅の開設にあたっては和三郎が土地を無償提供したという。和三郎は多くの小作人を集めて巨大な小林農場を築き上げたものの、戦後の農地改革では不在地主として買収解放されている。
下幌倉は戦後に空知郡滝川町が行った町名字名の改正で「東滝川」となり、駅名もそれに合わせて昭和29(1954)年11月10日に「東滝川」と改称された。駅舎はそれに先立って昭和25(1950)年に建て替えられており、今年で築74年を迎える。
駅周辺は昭和50年代から60年代にかけて宅地化が進み、市営東栄団地などが建てられたほか、公共施設や生活利便施設の立地も進んだ。しかし、この頃には既に自家用車の普及も進んでいたこともあって駅の利用にはあまり結びつかず、駅利用者数は昭和40年代以降減少の一途を辿っている。昭和57(1982)年5月30日には無人化されてしまった。
東滝川駅に停車する列車は一日9往復、始発は上下ともに6時台、終電も22時台で、廃止対象になる駅としては利便性が高い方だが、滝川市中心部まで約7キロしかなく、車を使えば15分ほどで行けるがゆえに列車をわざわざ使うという住民も少ないのだろう。また、根室本線と並走する国道38号線上には、滝川と芦別を結ぶ中央バス滝芦線が走っており、こちらは平日13往復、休日7往復運行されている。
駅前には当地出身の作曲家・仁木他喜雄氏の顕彰碑が建てられている。仁木氏は明治34(1901)年11月14日に札幌郡篠路兵村(現:札幌市北区、札沼線篠路駅周辺)で生まれ、1歳から13歳までを下幌倉で過ごした。戦前から戦後にかけて活躍し、童謡「めんこう仔馬」や東映映画の主題歌「若者よ!恋をしろ」などで知られるが、昭和33(1958)年5月13日に56歳の若さで亡くなった。平成2(1990)年9月に建立された顕彰碑の碑名部分は森繁久彌が、「めんこい仔馬」の歌詞部分は同曲を歌った二葉あき子が揮毫を行っている。
周辺に住宅が多いにも関わらず、利用者が少ない東滝川駅。存廃について滝川市は住民の声を聞いて対応するとしているが、他駅の事例から考えて、このまま廃止が決定する可能性の方が高い。ただし、列車の行き違いのための設備があるので、完全な廃止ではなく、乗客の乗り降りができない信号場として残る可能性もあるだろう。来年3月ダイヤ改正では、他に宗谷本線の雄信内駅、南幌延駅、抜海駅の廃止方針が報道されている。
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