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日本最東端の駅、来春ダイヤ改正での廃止検討 根室本線 東根室駅(北海道根室市)

清水要鉄道ライター
東根室駅

 日本最東端の駅として知られる東根室駅について、JR北海道が来年3月ダイヤ改正での廃止を検討していることがわかった。利用者数の減少と経費削減が理由と思われ、もし廃止になれば、隣の根室駅が日本最東端の駅となる。

 東根室駅は昭和36(1961)年9月1日開業。根室本線のうち、釧路~根室間の「花咲線」と称される区間にある。ホームだけの無人駅で、駅舎や待合室はない。駅周辺には住宅街が広がっており、決して「秘境」などではないものの、根室市の玄関口としての役目は隣の根室駅が担っているため、利用者は多くない。令和4(2022)年度の一日平均乗車人員は10.8人と、JRが廃止の目安としている3人を大きく上回っている。

 他の駅ほど利用者数が絶望的に少ないわけでもなく、廃止候補となるのが不思議な東根室駅だが、一方で「日本最東端」として有名な割には存在感が希薄なのもまた事実だ。隣の根室駅との距離はわずか1.5キロで、歩いても30分ほどしかかからない。日本最東端の高校・北海道根室高校へは東根室駅からが1.5キロ、根室駅からが2.3キロで、東根室駅が最寄り駅と言えるが、一方で高校の校門まで乗り入れるバスも運行されており、利便性でいえばこちらに軍配が上がる。列車通学の生徒も、東根室駅から20分以上かけて歩くのではなく、根室駅で列車から校門直結のスクールバスに乗り換えるようになる、という未来もありえるのかもしれない。

 では観光需要はどうであろうか。「日本最東端」だけあって、東根室駅を目当てに来る観光客や鉄道ファンももちろんいることだろうが、残念ながら列車をわざわざ降りて次の列車まで滞在という筆者のようなタイプは少数派で、多くの乗客は1分間の停車時間でホームに出て駅名標や日本最東端の看板を慌ただしく撮るだけで去っていく。それもそのはずで、周囲が住宅街で飲食店などが少ないために、例え降りたとしてもよっぽど駅が好きな人でなければ次の列車までの時間潰しに困るのだ。だからこそ「わざわざ列車を降りるのはちょっと・・・」という乗客のために撮影タイムが設けられているのであろう。

根室駅
根室駅

 もし、東根室駅が廃止になれば、根室駅が自動的に「日本最東端」となるわけだが、こちらは終着駅かつ市の玄関口で、飲食店や土産物店、ホテル、観光案内所などが揃っている。有人駅なので、列車までの時間も空調の効いた待合室で過ごすことができるし、時間潰しには困らない。同じ最東端でも、東根室駅と比べると訪問のハードルが低いわけで、根室市やJR北海道にとってみても「最東端」をPRして観光客を呼ぶには都合がいいだろう。こういったことを勘案すると、「最東端」であることを理由に根室市が維持費用を出してまで存続させるというのは考えにくいように思う。

 筆者としては大きな駅である根室駅よりも東根室駅のような小さな駅の方が最果て風情があって「最東端」にふさわしいと思うが、風情だけで駅を残すのは難しいというのもまた事実だ。

 来年3月ダイヤ改正では東根室駅以外に、根室本線の東滝川駅、宗谷本線の雄信内駅、南幌延駅、抜海駅の廃止方針が報じられている。

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鉄道ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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