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不倫妻から孝行娘まで豹変する女優、菜葉菜。いくら望んでもオファーが途切れたら続けられないことを胸に

水上賢治映画ライター
「女優 菜 葉 菜 特集」の開催が無事終了した菜 葉 菜   筆者撮影

 SMの女王様に毒母、孝行娘に脱獄囚、特殊詐欺犯の青年を手玉にとる盲目の女性に不倫妻などなど。

 「いろいろな人物を演じ分けるのが俳優」といってしまえばそれまでだが、にしても一作ごとに違った顔を見せて、常に驚かせてくれる。

 いま、いやデビュー時から、そのような独自の活躍を見せてくれているのが、菜 葉 菜だ。

 バイプレイヤーとしてしっかりと作品にアクセントを加えることもできれば、主演も堂々と張れる。

 映画を中心に独自の輝きを放つ彼女のこれまでの歩みをひとつ振り返る特集上映が組まれた。

 横浜のシネマノヴェチェントにて開催される「女優 菜 葉 菜 特集」は、彼女の主演作、出演作、そして顔の映っていない作品(?)まで12作品を一挙上映。これまでのキャリアをたどる。

 その「女優 菜 葉 菜 特集」は盛況の中、10月1日(日)に無事千秋楽を迎えたが、菜 葉 菜本人に訊く本インタビューはこのまま継続。

 ここからは番外編として改めて上映作品とともにこれまでのキャリア、そして今後について彼女に話を訊く。番外編全十回。

「女優 菜 葉 菜 特集」の開催が無事終了した菜 葉 菜   筆者撮影
「女優 菜 葉 菜 特集」の開催が無事終了した菜 葉 菜   筆者撮影

鎌田義孝監督の「TOCKA [タスカー]」の現場は、

ホームグラウンドに戻ってきたような感覚がありました

 前回(番外編第八回はこちら)に続き、「TOCKA [タスカー]」の話から。

 鎌田義孝監督と17年ぶりの顔合わせとなったが、久々にタッグを組んでの現場はどうだったろうか?

「少しお話ししましたけど、はじめは『YUMENO ユメノ』での悔いもあったのですごくプレッシャーを感じていました。

 そして、鎌田監督に17年を経て、役者として『成長したな』と思わせたい気持ちもありました。

 ただ、実際に現場に入ったら、そういう気持ちは自然と消えて、あまり気負わないでいれたんですよね。不思議と。

 初主演映画の『YUMENO ユメノ』の経験があったから、いまの自分がある。『YUMENO ユメノ』は、自分の役者としての礎を築いてくれた作品のひとつ。

 そういう思いがあったからか、すごくホームグラウンドに戻ってきたような感覚があったんです。

 自分の大切なルーツに戻ってきたような気がしました。

 周りのスタッフさんもキャストのみなさんも変わっているんですけど、現場の雰囲気はなぜか17年前の同じで、自分を迎い入れてくれている感じがある。

 だから、17年前の記憶が甦ってきて、なんか懐かしい気持ちになって、すごくうれしかった。

 安心して現場の輪に入っている自分がいました」

「TOCKA[タスカー]」より (c)2022KAMADA FILM
「TOCKA[タスカー]」より (c)2022KAMADA FILM

17年の時を経て、鎌田監督との距離がようやく縮まりました(苦笑)

 17年ぶりの顔合わせとなった鎌田監督の印象は?

「鎌田監督は口数の多い方ではなくて、『役者とコミュニケーションを密にとって』というタイプではないんですよ。

 それは『YUMENO ユメノ』ときとほぼ変わっていなかったですね(苦笑)。

 基本的にはわたしが自分で考えたものをまずは出して、それを鎌田監督が判断して、ダメだったら『こういう感じで』といったやりとりになる。

 今回も基本は一緒でした。

 ただ、『YUMENO ユメノ』のときは駆け出しでしたから、演じることに精一杯で、鎌田監督に『こうお願いします』といわれたら、もう二つ返事で『はい』といってその通りやるみたいな感じでした。とにかく演じ切ることに必死でしたから。

 でも、今回は、自分なりの考えや監督の意図のすり合わせをしていくことができました。

 実は、鎌田監督ともっとコミュニケーションをとりたいと思って、事前にいっぱい質問をしようと心に決めていました。監督は嫌だったかもしれませんが(笑)。

 そのおかげで鎌田監督といい形に信頼関係が築けたかなと。17年かかりました(笑)。

 これまで監督と役者として信頼関係がなかったわけではないのですが、お互い口下手なので……。

 ちょっと距離を感じていたんですけど、今回でかなり縮まったと思います」

『YUMENO ユメノ』のときの撮影の記憶が呼び覚まされました(笑)

 こんなことも変わらなかったという。

「『YUMENO ユメノ』と同様に『TOCKA [タスカー]』も北海道が舞台。しかも、また厳冬期の撮影だったんですよ。

 ほんとうに今回も寒かったです。

 この寒さでも『YUMENO ユメノ』のときの撮影の記憶が呼び覚まされました(笑)」

次はもう少し短いスパンで再会できたらうれしいですね

 また鎌田監督とはタッグを組んでみたいという。

「そうですね。

 さきほど話しましたけど、わたしにとって鎌田監督の作品はホームのようなところがある。

 だから、また戻ってきたい。

 ただ、また17年後となると、『どうでしょう』といった感じなので。

 できれば次はもう少し短いスパンで、オリンピック三回分ではなくて、二回分、できれば一回分ぐらいで再会できたらうれしいですね」

 ここまで今年9月~10月に横浜のシネマノヴェチェントにて開催された「女優 菜 葉 菜 特集」での上映作とともにキャリアを振り返ってもらった。

自分がいくら続けたいと思っていても、

オファーが来なくなってしまったら続けることが困難なのがこの仕事

 ここからは今後について話を訊く。役者として20年選手を超えてきたが、このことはどう受け止めているだろうか?

「気づけばといった感じで、あっと言う間だったような気もするし、いやそれなりの月日が経ったなという気もします。

 ただ、自分がいくら続けたいと思っていても、オファーが来なくなってしまったら続けることが困難なのがこの仕事。

 求められ続けないと継続は困難になる。

 それをどうにかこうにかでも、続けてこられたのは、やはり周囲に恵まれたことが大きい。

 振り返ると、幸運なことに『こういう役をやりたい』と思っているときに、そういう役のチャンスがめぐってきていて、その都度、大きな出会いがある。

 これまで出会ってきた方々に支えられての20年だと思います。

 ただ、ここまでコツコツと続けてきたことに関しては、少し誇ってもいいのかなと思っています」

(※番外編第十回に続く)

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)第一回はこちら】

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)第二回はこちら】

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)第三回はこちら】

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)第四回はこちら】

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)第五回はこちら】

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)第六回はこちら】

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)第七回はこちら】

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)第八回はこちら】

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)第九回はこちら】

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)第十回はこちら】

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)第十一回はこちら】

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)第十二回はこちら】

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)番外編第一回はこちら】

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)番外編第二回はこちら】

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)番外編第三回はこちら】

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)番外編第四回はこちら】

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)番外編第五回はこちら】

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)番外編第六回はこちら】

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)番外編第七回はこちら】

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)番外編第八回はこちら】

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー第一回はこちら】

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー第二回はこちら】

【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー第三回はこちら】

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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