SMの女王様から孝行娘、不倫妻まで豹変する女優、菜葉菜。顔の映らない、脚だけ出演の役を熱望した理由
SMの女王様に毒母、孝行娘に脱獄囚、特殊詐欺犯の青年を手玉にとる盲目の女性に不倫妻などなど。
「いろいろな人物を演じ分けるのが俳優」といってしまえばそれまでだが、にしても一作ごとに違った顔を見せて、常に驚かせてくれる。
いま、いやデビュー時から、そのような独自の活躍を見せてくれているのが、菜 葉 菜だ。
バイプレイヤーとしてしっかりと作品にアクセントを加えることもできれば、主演も堂々と張れる。
映画を中心に独自の輝きを放つ彼女のこれまでの歩みをひとつ振り返る特集上映が、この度組まれることになった。
横浜のシネマノヴェチェントにて開催される「女優 菜 葉 菜 特集」は、彼女の主演作、出演作、そして顔の映っていない作品(?)まで12作品を一挙上映。これまでのキャリアをたどる。
本特集については、菜 葉 菜本人に訊く全三回インタビューを届けた。ここからはそれに続くインタビュー。
これまでの役者人生を振り返りながら上映作品について彼女に話を訊く。全十二回。
保育士としても新米で、俳優としても駆け出しでなんの実績もない。
そんな状態がけっこう長く続いていました
前回(第一回はこちら)、デビューまでの経緯を明かしてくれた菜 葉 菜。
そこで語ってくれたように、デビューからしばらくは俳優として活動しながら保育士の仕事を続けていた。
「はじめはオーディションに受かることはほとんどなくて。当然ですけど、常時、仕事があるわけではない。
でもオーディションを受けなければなにもはじまらないのでオーディションの話があれば受けにいくわけです。
でも、そのオーディションを受けるのも一苦労といいますか。
学生時代はまだ時間があるので融通がききましたけど、保育士になると普通に働いていますからそう簡単に休みがとれない。
保育士としても新米で、俳優としても駆け出しでなんの実績もないので、『役者をやっていてオーディションがあるので休ませてください』なんて、とてもじゃないですけど切り出せない。
なんとか理由をみつけて有休をいただいて、どうにかオーディションを受けることができる。でも、現実は厳しくて受からない(苦笑)。そんな状態がけっこう長く続いていましたね」
オーディションに受からない日々もめげることはなかった
それでもめげることなくオーディションを受け続けた。
「そうですね。前回お話したように撮影現場の面白さに魅せられて、もっとあの場所に立ちたい、あの場所で時間を過ごしたいという気持ちがありましたから。その意欲の方が強かったので、めげることはなかったです。
それで何がきっかけかわたし自身は知る由もないですけど、ありがたいことに少しずつオーディションに受かるようになっていったんです。
となると、何日間が連続で現場に入らないといけないということが出てくる。そうなると、さすがに有休では対応できなくなる。
そこでさすがに、親にも周囲にも言われました。『そろそろどっちかに決めたら』と。
で、わたしとしてはもう完全に俳優のお仕事の方にスイッチが入っていて、『やっていきたい』と心に火がついちゃっている(笑)。
ここで『こっちの道だ』と役者の道を選びました」
顔が一切映らない、ズタ袋をかぶって脚しか映らない役を熱望!
こうして俳優としてのキャリアが本格的にスタートする。
そういった中で、デビューから約4年後の2005年には、今回の特集で上映される「TOCKA[タスカー]」の鎌田義孝監督による「YUMENO」で映画初主演を果たす。
その翌年となる2006年に公開されたのが、今回の「女優 菜 葉 菜特集」でも異色中の異色作にして、いまだカルト的人気のあるオムニバス映画「コワイ女」に収められた一編「鋼ーはがねー」(※今回の特集上映では中村真夕監督の「ワタシの中の彼女」と併映)だ。
すでに本インタビューの導入文でも触れているが、本作で、菜 葉 菜の顔は一度も映らない(※厳密に言うと写真では顔が出てくる)。
頭からズタ袋をかぶって脚しかみえない女の子「はがね」として登場する。
まだ、俳優として駆け出しのころ、映画に出演するにもかかわらず自分の顔が出ないというのは抵抗があった気がするが、本人曰く「まったく抵抗はなかった」とのこと。むしろ「出演を熱望していた」という。
「若気の至りでよく言ったもんだなのですが(苦笑)、デビューしてしばらく、よくオーディションで言っていたんです。『エロスを表現できる女優になりたい。エロスを追求していきたい』と言った主旨のことを。
でも、それぐらいエロティックな役柄にチャレンジしてみたい気持ちがあった。
で、この『鋼-はがねー』のオーディションの話がきて、脚本を読んだら、もう脚だけでエロスを表現することが求められている。
『これこそわたしが求めていた役だ!』と思って。
さらに、当時、わたし胸はあんまりでしたけど(苦笑)、脚にはちょっと自信があったんです。
それで『この役を演じるのはわたししかいない』ぐらいの気持ちで、オーディションを受けました」
絶対に演じる気でいました
こうしてオーディションを受けて、熱望した鋼役を射止めることになる。
「オーディションも簡易的な袋をかぶらされて脚だけでいろいろとさせられたんですよ。
『音楽かけるから踊ってみて』とか言われて(笑)。
よく考えると、かなりシュールなオーディションですよね。
で、確か三次ぐらいまでオーディションは続いたんですけど、『これは絶対にわたしでしょう』という何の根拠もない変な自信がありました。
絶対に演じる気でいましたから、受かったとの報せが入ったときは、めちゃくちゃうれしかったですね」
(※第三回に続く)
【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)第一回はこちら】
【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー第一回はこちら】
【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー第二回はこちら】
【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー第三回はこちら】
<女優 菜 葉 菜 特集>
「ハッピーエンド」(2008 年/山田篤宏監督)
「どんづまり便器」(2011 年/小栗はるひ監督)
「百合子、ダスヴィダーニヤ」(2011 年/浜野佐知監督)
「雪子さんの足音」(2019 年/浜野佐知監督)
「モルエラニの霧の中」(2020 年/坪川拓史監督)
「赤い雪」(2019 年/甲斐さやか監督)
「夕方のおともだち」(2021 年/廣木隆一監督)
「夜を走る」(2021 年/佐向大監督)
「TOCKA[タスカー]」(2022 年/鎌田義孝監督)
「鋼-はがね-」※オムニバス『コワイ女』より(2006 年/鈴木卓爾監督)
「ワタシの中の彼女」(2022 年/中村真夕監督)
「ヘヴンズストーリー」(2010 年/瀬々敬久監督)
以上、主演作、出演作あわせて12作品を一挙上映!
開催期間:9月16日(土)~10月1日(日)
横浜・シネマノヴェチェント
<トークイベント決定>
9月16日(土)14:00~「赤い雪」
ゲスト予定/菜葉菜、永瀬正敏、甲斐さやか監督
9月17日(日)12:30~「モルエラニの霧の中」
ゲスト予定/菜葉菜、菅田俊(「夏の章」出演)、坪川拓史監督
9月18日(月・祝)14:00~「夕方のおともだち」
ゲスト予定/菜葉菜、村上淳、廣木隆一監督
9月23日(土・祝)11:30~「夜を走る」
ゲスト予定/菜葉菜、足立智充、佐向大監督
14:30~「どんづまり便器」
ゲスト予定/菜葉菜、小栗はるひ監督
9月24日(日)11:30~「百合子、ダスヴィダーニヤ」
ゲスト予定/菜葉菜、浜野佐知監督、山崎邦紀(脚本)
14:00~「雪子さんの足音」
ゲスト予定/菜葉菜、浜野佐知監督、山崎邦紀(脚本)
9月30日(土)11:00~「ヘヴンズストーリー」
ゲスト予定/菜葉菜、寉岡萌希、瀬々敬久監督
10月1日(日)12:00~「鋼-はがね-」オムニバス『コワイ女』より」
『ワタシの中の彼女』
ゲスト予定/菜葉菜、鈴木卓爾監督、中村真夕監督
14:30~「ハッピーエンド」
ゲスト予定/菜葉菜、長谷川朝晴、山田篤宏監督
詳細は劇場公式サイトへ → https://cinema1900.wixsite.com/home