SMの女王様から孝行娘まで豹変する女優、菜葉菜。脚のみ出演なのに課せられたハードトレーニングとは?
SMの女王様に毒母、孝行娘に脱獄囚、特殊詐欺犯の青年を手玉にとる盲目の女性に不倫妻などなど。
「いろいろな人物を演じ分けるのが俳優」といってしまえばそれまでだが、にしても一作ごとに違った顔を見せて、常に驚かせてくれる。
いま、いやデビュー時から、そのような独自の活躍を見せてくれているのが、菜 葉 菜だ。
バイプレイヤーとしてしっかりと作品にアクセントを加えることもできれば、主演も堂々と張れる。
映画を中心に独自の輝きを放つ彼女のこれまでの歩みをひとつ振り返る特集上映が、この度組まれることになった。
横浜のシネマノヴェチェントにて開催される「女優 菜 葉 菜 特集」は、彼女の主演作、出演作、そして顔の映っていない作品(?)まで12作品を一挙上映。これまでのキャリアをたどる。
本特集については、菜 葉 菜本人に訊く全三回インタビューを届けた。ここからはそれに続くインタビュー。
これまでの役者人生を振り返りながら上映作品について彼女に話を訊く。全十二回。
これまでのキャリアで、間違いなく1番ハードな撮影現場だった!
前回(第二回はこちら)に続きカルト作「鋼ーはがねー」の話から入る。
脚だけしか出ない役柄ながら、出演を熱望したことを明かしてくれた、菜 葉 菜。
実は、この「鋼ーはがねー」の撮影現場の経験は、自身の中でひとつの指針になっているという。
「いろいろな撮影現場を経験してきましたけど、いまだに『鋼ーはがねー』以上に過酷な撮影を体験したことがない(苦笑)。
わたしの中で、いまのところ間違いなく1番ハードな撮影現場は『鋼ーはがねー』です。
これがわたしだけじゃなくて、当時のスタッフのみなさんもそうだったみたい。
別の現場でお会いして、お話しするといまだにこうおっしゃる方がいます。『あれ以上にハードな現場はなかったよね』と(笑)。
なにがハードだったかというとまず撮影スケジュールで。ほんとうに短期間で撮りきらなければならなくて、ほとんど寝る時間がない。
撮影を終えるとスタッフの方がわたしと共演者の(柄本)佑さんを家に送ってくださるんですけど、そのあと、わたしの感覚としてはシャワーを浴びて着替えたら、もうすでに迎えの車が来ている感じ(苦笑)。
だから、車で再び佑さんと一緒になると、二人とも『あれ、さっき別れたばっかりだよね』みたいなことになっていて。
もう寝不足でわたしも佑さんもフラフラなんですよ。お互いに完全に睡眠不足で。
で、わたしは現場に入るとズタ袋をかぶることになる。
ただでさえ眠いのに袋をかぶされて暗闇の中に入るようなことになるので、さらに睡魔が襲ってくる(笑)。
なので、劇中で、足踏みミシンをわたしが演じたはがねがずっと踏んで作業しているシーンがありますよね?
あのシーンは、完全に寝ていました(苦笑)。
寝てたというか意識を失って、『カット』がかかってもしばらくミシンを踏み続けていたみたいで、スタッフに肩をたたかれて『あっ』と気がつきました。『危ない、危ない、顔が映ってなくてよかった』と思いました(笑)。
で、顔が出ているのでいくら眠くても眠ることのできない佑さんに『寝てたよね』と言われて、『ごめん』と謝ったことをよく覚えています。
それから、ものすごく寒かったんですよ。とにかく撮影する場所すべてが寒い。
寒さと睡魔との闘いで、佑さんとお互い励まし合いながら、どうにか乗り越えていくといった感じでした」
脚だけの出演ながら、アスリート並みに鍛える??
さらに役作りも実はハードだったという。
「脚だけの出演なんですけど、ものすごく身体的なトレーニングを積んだんですよ。
撮影に入る前の1カ月ぐらい前から、プロのトレーナーさんがきちんとついてくれてアスリート並みのトレーニングをしたんです。
なぜかというと、みていただくとわかるのですが、ズタ袋をかぶり手も固定されて自由がきかない。上半身がほぼ身動きできない状態で、ヒールの靴を履いて急にダッシュしたり、いろいろと動き回ったりしないといけない。だから、きちんと鍛えておかないと危なくてケガをするということで、トレーニングをすることになったんです。
前にお話しした通り、わたしはもともと学生時代、バスケをずっとやっていて、けっこうハードなトレーニングも経験していたし、体力にも自信がありました。
ということで、演じる上でのトレーニングだから、いくらなんでもそこまでハードではないだろうと高をくくっていたんです。
で、トレーニングが始まったら、これがもうスパルタなんですよ。
トレーナーの方が本気で、本物のアスリートに課すようなトレーニングメニューが用意されていた。
トレーナーさんに『そんなんじゃだめだ』とダメ出しされながら、数えきれないぐらいダッシュを繰り返したり、1時間ぐらい走り続けたり、階段を上り続けたりと、とにかくアスリート並みのトレーニングを1カ月みっちりと積みました。
『わたしアスリートになるわけじゃないんですけど』と思いながら(苦笑)」
いまは『鋼-はがね-』の過酷だった撮影現場にすごく感謝
それも含めて、『鋼-はがね-』現場がこれまでで一番過酷な撮影だったと断言する。
「でも、『鋼-はがね-』現場を乗り越えることができたことは、ひとつの大きな自信になっていて。
『あの撮影をくぐりぬけたから、もうなにがきても大丈夫、怖くない』という変な自信になっています。だから、まだ駆け出しだったころに経験できてよかったなと思っていて、いまは『鋼-はがね-』の現場にすごく感謝しています(苦笑)」
(※第四回に続く)
【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)第一回はこちら】
【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)第二回はこちら】
【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー第一回はこちら】
【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー第二回はこちら】
【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー第三回はこちら】
<女優 菜 葉 菜 特集>
「ハッピーエンド」(2008 年/山田篤宏監督)
「どんづまり便器」(2011 年/小栗はるひ監督)
「百合子、ダスヴィダーニヤ」(2011 年/浜野佐知監督)
「雪子さんの足音」(2019 年/浜野佐知監督)
「モルエラニの霧の中」(2020 年/坪川拓史監督)
「赤い雪」(2019 年/甲斐さやか監督)
「夕方のおともだち」(2021 年/廣木隆一監督)
「夜を走る」(2021 年/佐向大監督)
「TOCKA[タスカー]」(2022 年/鎌田義孝監督)
「鋼-はがね-」※オムニバス『コワイ女』より(2006 年/鈴木卓爾監督)
「ワタシの中の彼女」(2022 年/中村真夕監督)
「ヘヴンズストーリー」(2010 年/瀬々敬久監督)
以上、主演作、出演作あわせて12作品を一挙上映!
開催期間:9月16日(土)~10月1日(日)
横浜・シネマノヴェチェント
<トークイベント決定>
9月16日(土)14:00~「赤い雪」
ゲスト予定/菜葉菜、永瀬正敏、甲斐さやか監督
9月17日(日)12:30~「モルエラニの霧の中」
ゲスト予定/菜葉菜、菅田俊(「夏の章」出演)、坪川拓史監督
9月18日(月・祝)14:00~「夕方のおともだち」
ゲスト予定/菜葉菜、村上淳、廣木隆一監督
9月23日(土・祝)11:30~「夜を走る」
ゲスト予定/菜葉菜、足立智充、佐向大監督
14:30~「どんづまり便器」
ゲスト予定/菜葉菜、小栗はるひ監督
9月24日(日)11:30~「百合子、ダスヴィダーニヤ」
ゲスト予定/菜葉菜、浜野佐知監督、山崎邦紀(脚本)
14:00~「雪子さんの足音」
ゲスト予定/菜葉菜、浜野佐知監督、山崎邦紀(脚本)
9月30日(土)11:00~「ヘヴンズストーリー」
ゲスト予定/菜葉菜、寉岡萌希、瀬々敬久監督
10月1日(日)12:00~「鋼-はがね-」オムニバス『コワイ女』より」
『ワタシの中の彼女』
ゲスト予定/菜葉菜、鈴木卓爾監督、中村真夕監督
14:30~「ハッピーエンド」
ゲスト予定/菜葉菜、長谷川朝晴、山田篤宏監督
詳細は劇場公式サイトへ → https://cinema1900.wixsite.com/home