SMの女王様に毒母、孝行娘に脱獄囚、特殊詐欺犯の青年を手玉にとる盲目の女性に不倫妻などなど。

　「いろいろな人物を演じ分けるのが俳優」といってしまえばそれまでだが、にしても一作ごとに違った顔を見せて、常に驚かせてくれる。

　いま、いやデビュー時から、そのような独自の活躍を見せてくれているのが、菜 葉 菜だ。

　バイプレイヤーとしてしっかりと作品にスパイスを加えることもできれば、主演も堂々と張れる。

　映画を中心に独自の輝きを放つ彼女のこれまでの歩みをひとつ振り返る特集上映が組まれることになった。

　横浜のシネマノヴェチェントにて開催される「女優 菜 葉 菜 特集」は、彼女の主演作、出演作、そして顔の映っていない作品（？）まで12作品を一挙上映。これまでのキャリアをたどる。

　開催を前に、本人に話を訊いた。全三回。

わたしを支えてくれたすべての人に感謝したい

　前回（第二回はこちら）、今回の特集で上映される全12作品について「自分でも『こんな役から、こんな役まで演じてきたんだ』と実感するラインナップになりました」と語った菜 葉 菜。

　続けて今回のラインナップをこう評する。

「いっぱい主演作がある俳優ではないですけど……

　それでもこれだけ映画で主演を務めさせていただいてきたんだなと思うと、感慨深いところがあって。改めて、わたしを支えてくれたすべての人に感謝したいです。

　あと改めて責任を感じるといいますか。

　これまで同様に、これからもきちんとひとつひとつの役を大切に演じ続けていかなくてはいけないと、身が引き締まる思いもあります」

一番、異色で異端で目を引くのは、やはり『鋼－はがね－』

　自身ではなかなか選べないだろうが12作品で注目してほしい作品などはあるだろうか？

「いやぁ、それはなかなか、どの作品も思い入れがありますし、自分にとっては大事な作品で。どれもみていただきたいというのが正直な気持ちです。

　ただ、一番、異色で異端で目を引くのは、やはり『鋼－はがね－』じゃないですかね（苦笑）。

　当時もそうですけど、いまみても、おそらくぶっ飛んでいる。鈴木卓爾監督の個性がさく裂している。

　カルト作として、いまだに人気があって、わたしもたまに『鋼－はがね－』のファンという方に出会います。

　これはなかなかお目にかかれない作品だと思います。わたしの顔は出てこないんですけど（笑）」

ファンの方もそうでない方も、目いっぱい楽しんでいただける場に！

　前回伝えたように、今回の特集では、浜野佐知監督、廣木隆一監督、瀬々敬久監督ら上映される作品すべての監督たちが会場に駆けつけることが決定。

　さらに永瀬正敏、村上淳、菅田俊、長谷川朝晴、寉岡萌希、草野康太、足立智充、脚本家の黒沢久子、同じく脚本家の山崎邦紀のゲスト登壇も決まった。

　今後もゲストが続々と決まりそうだとい。

　これだけ所縁のある人が集まる特集上映というのもなかなかないと思うが、本人はどんな場にしたいと思っているだろうか？

「ほんとうにみなさんお忙しいと思うんですけど、当日いらっしゃってくださるということで、感謝の気持ちでいっぱいです。

　当日は、もうゲストの方のお力を借りて、ファンの方もそうでない方も、目いっぱい楽しんでいただける場にできればなと思っています。

　たとえば勝新太郎さんや高倉健さんの特集上映と、今回のわたしの特集上映はまったく別モノ（笑）。

　常に主役を張れる役者じゃないし、誰かが憧れるスターというわけでもない。

　今回の特集のラインナップが物語っているように、主演作がずらりと並ぶわけではなくて、主役もあればちょっとした役もある。いろいろな映画に出演させていただいて、いろいろな役を演じてきたのが、わたしであり、役者の菜 葉 菜だと思うんです。

　ですから、おそらく『菜 葉 菜が好き』というマニアックなファンの方も来てくださると思うんですけど、いまなかなかスクリーンでみることのできないインディーズ映画も今回のラインナップには多い。

　たとえば坪川拓史監督の『モルエラニの霧の中』や、瀬々敬久監督の『ヘヴンズストーリー』といった大長編を上映できるのも、今回のような特集ならではのこと。なので、監督や作品、出演している役者さんに興味をもってくださる方も多いのではないかなと推察しています。

　なので、わたしのファンの方はもとより、作品や監督、キャストに興味をもってきてくれた人もごっちゃになって、みんなで盛り上がって楽しんじゃうみたいな上映になればいいなと思っています。

　ほんとうにこれだけのゲストの方が来てくださって、トークショーやサイン会、撮影会＆懇親会も実施しますので、ぜひ足を運んでいただければと思います」

（※本インタビューは終了。次回から今回上映される12作品とともに、これまでのキャリアを振り返るインタビューを続けます）

【＜女優 菜 葉 菜 特集＞菜葉菜インタビュー第一回はこちら】

【＜女優 菜 葉 菜 特集＞菜葉菜インタビュー第二回はこちら】

＜女優 菜 葉 菜 特集＞

「ハッピーエンド」（2008 年／山田篤宏監督）

「どんづまり便器」（2011 年／小栗はるひ監督）

「百合子、ダスヴィダーニヤ」（2011 年／浜野佐知監督）

「雪子さんの足音」（2019 年／浜野佐知監督）

「モルエラニの霧の中」（2020 年／坪川拓史監督）

「赤い雪」（2019 年／甲斐さやか監督）

「夕方のおともだち」（2021 年／廣木隆一監督）

「夜を走る」（2021 年／佐向大監督）

「TOCKA［タスカー］」（2022 年／鎌田義孝監督）

「鋼－はがね－」※オムニバス『コワイ女』より（2006 年／鈴木卓爾監督）

「ワタシの中の彼女」（2022 年／中村真夕監督）

「ヘヴンズストーリー」（2010 年／瀬々敬久監督）

以上、主演作、出演作あわせて12作品を一挙上映！

開催期間：9月16日(土)～10月1日(日）

横浜・シネマノヴェチェント

詳細は劇場公式サイトへ　→　https://cinema1900.wixsite.com/home