SMの女王様から、孝行娘、不倫妻まで豹変する女優、菜葉菜。キャリアのスタートは保育士と二刀流?
SMの女王様に毒母、孝行娘に脱獄囚、特殊詐欺犯の青年を手玉にとる盲目の女性に不倫妻などなど。
「いろいろな人物を演じ分けるのが俳優」といってしまえばそれまでだが、にしても一作ごとに違った顔を見せて、常に驚かせてくれる。
いま、いやデビュー時から、そのような独自の活躍を見せてくれているのが、菜 葉 菜だ。
バイプレイヤーとしてしっかりと作品にアクセントを加えることもできれば、主演も堂々と張れる。
映画を中心に独自の輝きを放つ彼女のこれまでの歩みをひとつ振り返る特集上映が、この度組まれることになった。
横浜のシネマノヴェチェントにて開催される「女優 菜 葉 菜 特集」は、彼女の主演作、出演作、そして顔の映っていない作品(?)まで12作品を一挙上映。これまでのキャリアをたどる。
本特集については、菜 葉 菜本人に訊く全三回インタビューを届けた。ここからはそれに続くインタビュー。
これまでの役者人生を振り返りながら上映作品について彼女に話を訊く。全十二回。
学生時代は部活三昧!映画やドラマを見たことがほとんどなかった
はじめにデビューする前の話を少し。ほかでも書かれていることではあるが、彼女が俳優の世界へ足を踏み入れることになったきっかけはスカウト。もともとは保育士になる予定で、芸能の世界へ進むとは本人も思っていなかったという。
「子どものころ、芸能人やアイドルに憧れたり、といったことが1度ぐらい普通はあると思うんですけど、わたしはまったくなかったんですよ。
ほんとうに興味がなくて、威張れることではないんですけど、テレビドラマや映画を見たこともほとんどありませんでした。
それには理由があって、学生時代は部活女子で。
部としてはずっとバスケ部で、小学生から中学、そして高校はいわゆるバスケの強豪校に進んで練習に明け暮れていました。
で、バスケ部でのスパルタ練習のおかげか(苦笑)、足も速かった。
わたしは中距離が得意で、中学のときには陸上部に助っ人で入って、区の大会で1位をとったこともあります(笑)。
そんな感じでスポーツ三昧でしたから、当時のわたしの憧れはテレビや映画の世界ではなくて、オリンピック。
オリンピックに出場できるようなアスリートになりたいと思っていました。
といいながらある時点で、限界を知るわけです。そこで別の道となったときに、子どもが好きだったので、『じゃあ保育士かな』と。
それで保育士を目指すことにしました。
だから、スカウトで声かけられて事務所に入るまでの人生ではテレビの中や映画の中の人になりたいと思ったことは1度もないですね。ほんとうに縁遠い世界でした。
だから、自分でもいまこうして役者としているのが意外なんですよね。
たぶんわたしもですけど、親も知り合いもみんな意外だったと思います。
良く知る友だちにも言われます。『まさか役者になるとは』と」
役者と保育士の仕事を3年ぐらい並行してやっていました
それならばスカウトされたときに断っても不思議ではないように思うが、なぜやってみようと思ったのだろう?
「こういうと語弊を生むかもなのですが、『やってみよう』みたいな意気込んだ感じはなかったといいますか。
芸能界に変に憧れがなかったから、スカウトされることも事務所に在籍することもあんまり深く考えていなかったんです。
いまもう事務所にはいらっしゃらないんですけど、当時、わたしに声をかけてくださったスカウトマンの方に『きみはうちの事務所に合うと思う』みたいなことを言われてスカウトされたんです。
聞くと、当時、あとにも先にもないぐらい俳優の卵を大募集していたときだそうで、何人かのスカウトマンがいろいろなところに出向いて新人俳優を探していた。そこにたまたまわたしが引っ掛かった(笑)。
それで、その方が所属タレントの方を教えてくださって、その中にたまたま知っているモデルの子がいたんです。
で、『ちゃんとした事務所なのかな』と思っていたら、渋谷でスカウトされたんですけど、事務所がちょうど渋谷だと。
そのまま流れで『いま社長がいるから会わせたい』となって、わたしもいわれるがままひょいひょいついていって、当時も今もですけど現事務所の社長に会ってお話をしたんですよね。いま考えると怪しいスカウトじゃなくてよかったと思うんですけど(笑)。
それでまあ話がまとまって、とりあえず事務所に在籍することになりました。
でも、当然ですけど、はじめは仕事なんてあるわけがない。たまにオーディションがあるときに電話がかかってくるぐらい。
芸能事務所に籍はあるものの、日常生活にはなんの支障もなくて、環境もなんら変わらない。
特になにも困ることがないから、そのまま在籍し続けていたら、気づけばこの仕事を始めていた、みたいな感じがあります。
実際、スカウトされたのは学生時代だったんですけど、卒業して、しばらくは保育士として働いていました。
たぶん役者と保育士の仕事を3年ぐらい並行してやっていたんじゃないかなぁ。
最初は乳児院に勤務して、その後、学童保育クラブの非常勤職員になって。保育士として働きながら、役者の仕事をしていました」
初めての現場を経験して、映画の現場にもっともっとかかわりたいと思った
ただ、俳優への憧れはなかったものの、2001年に女優デビューを果たした時点で、役者の道に大きな魅力を感じてはいたという。
「最初の映画の現場でのことですけど、当然ですけど、すべてがわたしにとっては初めての体験で。
ちょっとした役だったので、出演者兼見学者みたいな感じで、待ち時間とかずっと撮影現場を見ていたんです。
で、よく言われることですけど、撮影現場というのは、大人が大真面目に遊んでいるようなところがある。
いろいろとトラブルがありながら、最後はみんなが一致団結して、ひとつのモノを作り上げていく。
こんな場所をほかにはしらなくて、『ここはなんなんだ!』と思って、すごく興味がわきました。
同時に、もっとこの場所を体験したいというか。そのときのわたしのセリフは二言ぐらいでしたけど、もっといっぱいセリフのある役でこの場所に立ちたいと思ったんです。
つまり映画の現場にもっともっとかかわりたいと思った。
それから、事務所の社長から『映画女優を育てたい。君はそうなってほしい』みたいなことをちらっと言っていただいたことがあって。
『そのためにはいろいろな本を読んでいろいろな映画を見なさい』と言われ、そこから映画をすごく見るようになったんですね。
そして、映画の現場を知って、映画を見るとさらに映画に興味がわいて、好きになって、映画の世界に映画の現場に自分も立ちたいと思う。
そうやっていくうちに気づけば、役者の道を歩み始めていました」
(※第二回に続く)
【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー第一回はこちら】
【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー第二回はこちら】
【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー第三回はこちら】
<女優 菜 葉 菜 特集>
「ハッピーエンド」(2008 年/山田篤宏監督)
「どんづまり便器」(2011 年/小栗はるひ監督)
「百合子、ダスヴィダーニヤ」(2011 年/浜野佐知監督)
「雪子さんの足音」(2019 年/浜野佐知監督)
「モルエラニの霧の中」(2020 年/坪川拓史監督)
「赤い雪」(2019 年/甲斐さやか監督)
「夕方のおともだち」(2021 年/廣木隆一監督)
「夜を走る」(2021 年/佐向大監督)
「TOCKA[タスカー]」(2022 年/鎌田義孝監督)
「鋼-はがね-」※オムニバス『コワイ女』より(2006 年/鈴木卓爾監督)
「ワタシの中の彼女」(2022 年/中村真夕監督)
「ヘヴンズストーリー」(2010 年/瀬々敬久監督)
以上、主演作、出演作あわせて12作品を一挙上映!
開催期間:9月16日(土)~10月1日(日)
横浜・シネマノヴェチェント
<トークイベント決定>
9月16日(土)14:00~「赤い雪」
ゲスト予定/菜葉菜、永瀬正敏、甲斐さやか監督
9月17日(日)12:30~「モルエラニの霧の中」
ゲスト予定/菜葉菜、菅田俊(「夏の章」出演)、坪川拓史監督
9月18日(月・祝)14:00~「夕方のおともだち」
ゲスト予定/菜葉菜、村上淳、廣木隆一監督
9月23日(土・祝)11:30~「夜を走る」
ゲスト予定/菜葉菜、足立智充、佐向大監督
14:30~「どんづまり便器」
ゲスト予定/菜葉菜、小栗はるひ監督
9月24日(日)11:30~「百合子、ダスヴィダーニヤ」
ゲスト予定/菜葉菜、浜野佐知監督、山崎邦紀(脚本)
14:00~「雪子さんの足音」
ゲスト予定/菜葉菜、浜野佐知監督、山崎邦紀(脚本)
9月30日(土)11:00~「ヘヴンズストーリー」
ゲスト予定/菜葉菜、寉岡萌希、瀬々敬久監督
10月1日(日)12:00~「鋼-はがね-」オムニバス『コワイ女』より」
『ワタシの中の彼女』
ゲスト予定/菜葉菜、鈴木卓爾監督、中村真夕監督
14:30~「ハッピーエンド」
ゲスト予定/菜葉菜、長谷川朝晴、山田篤宏監督
詳細は劇場公式サイトへ → https://cinema1900.wixsite.com/home