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筧利夫、熱海での暮らしは14時夕食、18時就寝!ボイトレは「YouTubeで」

島田薫フリーアナウンサー/リポーター
熱海での暮らし、新しい舞台、今後について語る筧利夫さん(撮影:すべて島田薫)

 筧利夫さんは、大阪芸術大学で旗揚げされた「劇団☆新感線」に在学中から参加。卒業後は、鴻上尚史氏主宰の劇団「第三舞台」で、解散公演(2011年)まで活躍されました。人気劇団を渡り歩いた筧さんは、舞台にとどまらず映画・ドラマといった映像作品、バラエティ番組の司会など多種多彩な才能を発揮。ミュージカル『Miss Saigon』ではエンジニア役で存在感を放ちました。現在、自身4度目となるミュージカル作品『クラスアクト』において、名作『コーラスライン』の作詞家役に挑んでいます。そしてなんと、YouTubeの動画をお手本にボイストレーニング中だとか。お話すべてが個性にあふれています。

―今、静岡・熱海市に住んでいらっしゃるんですね

 2年前に引っ越しました。東京に住む意味をあまり感じなくなったんです。部屋は古くなっていくから家賃が下がるなら分かるけど、土地の値段が上がると共に家賃も上がると「この扉壊れているのに何で家賃が上がるんだ」と腹が立ちますね。

 地方に行こうかと思って、物件サイトで北海道から沖縄まで調べて、たまたま気に入ったのが熱海でした。ずっと賃貸でしたが、初めて中古の一軒家を買いました。

―熱海といえば芸能界の方が多いですが、どこが魅力ですか?

 お年寄りが多いですけど(笑)。別荘をお持ちの方もいらっしゃいますし、泉ピン子さんも有名です。人によってはピンと来るものがあったり、使命感を持って住んでいる方もいらっしゃいます。僕はたまたま物件がそこだったというだけですが、妻はご近所付き合いも楽しそうです。

 周りからは「熱海に移住したんですか!?」と驚かれますが、実際住んでみると、熱海~品川は新幹線で39分ですし、温泉もあっていいところです。仕事がある時に東京に行けばいいので、住む場所はどこでもいいんだと思えるようになりました。

―次作は、ブロードウェイミュージカル『クラスアクト』の主演ですね

 『コーラスライン』の作詞家、エド・クレバンを描いた作品です。『コーラスライン』は有名ですが、作詞家の人生はあまり知られてないので、素直に面白いと思いました。

 ただ、僕にとってはミュージカルをやることは常ではないので、「随分歌っているな、喋っているな、大丈夫かな」という思いが先に来ました。まぁどんな芝居でも、いつも「セリフいっぱいあるな、大丈夫かな」から始まるんですけど(笑)。でも、やると決めたらコツコツやっていくしかないので。

―ボイストレーニングは?

 作曲家・マーヴィン役の吉田要士さんがボイストレーナーでもあるのでトレーニングをお願いしていましたが、吉田さんがすごすぎて、一緒にやると僕の声が枯れちゃうんです。彼はミュージカル歴も長いし、本当にものすごい声が出るんですよ。4回くらい頑張りましたが、僕の体がまだそこに至っていないので、まずはYouTubeのボイストレーニング動画を見て練習しています。

 目的は歌を歌うことなので、歌の練習とボイストレーニングを並行してやろうと思って、いろいろなトレーナーの方の動画を見ました。「ロングトーンの伸ばし方のコツ」とか、1つずつ試して納得しながら進めています。

―大作ミュージカルの舞台に立たれてきた筧さんでも、やはり苦労されるんですね

 毎回苦労していますが、今回みたいなことを考えたことはなかったです。『Miss Saigon』のエンジニア役はセリフ全部に音符がついていましたけど、今回は芝居で喋っているところからバーッと歌に入るスタイル。共演者の方々がものすごいプロなので、自分だけ素人みたいな感覚で、常に頭を垂れています。

エドはどんな人物ですか?

 爆発力がありますよね。その力を作詞に向けていた人だと思います。自分が好きな作業を続けることが一番大事なことであり、「有名になる」「売れる」といったことに固執しないところには共感します。

―共通点はありますか?

 僕はこの人を演じるので、ここは合っているけどここは違う、はありえないです。全部合ってなくてはいけない、と思っています。

 この方はすごくモテたようで、音楽・歌を作る人独特の魅力があるんでしょうね。“好かれる”というべきかな。“モテる”と“好かれる”は別で、モテる人は相手をホールディングできる人です。言葉どおり、持つことができなければモテない。僕は相手を持つことができないからモテないんです(笑)。エドも持つことができないタイプだと思うけど、すごくイノセントに作品に向き合うのでほっとけないんですね。自分勝手に見えるかもしれないけど、芸術家にこういう人は多いと思います。

―筧さんにも、そういう芸術家肌の部分はありますか?

 おそらく…あるでしょうね。変に思わないでほしいけど、僕は自分のことを芸術家だと思っているし、才能を信じています。俳優として僕より面白い奴はいない、誰にも負けない、と思っているところがありますね(笑)。

 自信をもって言えるのは、ものすごく練習します。考えても仕方がないので、毎日練習するしかないと信じてやり続けています。ただ、今回最後に1人で歌う曲がまだ全然歌えなくて、自分に「大丈夫」と言い聞かせながら頑張っています。

―振り返ると大変なこと、辛かったことはありますか?

 大変なことはいっぱいあったけど、辛いと思ったことはないです。昔から劇団でやってきたのでオーディション経験はあまりないけど、リップクリームのCMオーディションは落とされました。『Miss Saigon』にしても、入るまでより入ってから苦労するパターンでした。でも、できないのはしょうがないだろうと、割と落ち込まない方ですね。「鉄棒で大車輪をやれ」と言われてもできなければ断りますし、太るのも難しいかもしれないな。

―スタイルが変わらないですね。秘訣は?

 夜遅い時間に食べない。仕事で外出していない限り、最近夕食は14時です(笑)。朝は5時に起きて、稽古したりいろいろしたりしていると14時くらいに終わるので、お風呂に入って酒を飲みながら食事です。18時には寝ます。22時半頃に1回起きて、水を飲んでまた寝ます。

―作品に対する意気込みは?

 意気込みは「必ず面白いものをお見せする」ですが、実は約束はできないんです。作品の感想は人それぞれなので、観た人全員にとって面白いものになるかどうかは分からないですから。でも、「飽きさせないものを作ること」は約束できます。これは能動的にできることなので。

 地域によっても違います。東京は「どうなのよ~」という“お手並み拝見”なスタンスで来る人が少なくないですね。北海道では、「僕がメインで歌わせてもらえるなんて、(地元出身の)玉置浩二さんじゃなくて大丈夫?」とか思っちゃいますしね(笑)。

 大阪は、大阪特有の“間”があります。他の地域よりちょっと間を空けなきゃいけない。大阪は笑うので、「ワーッ(笑)」となったその終わり七割くらいのところで次のセリフを始めなきゃいけない。笑いにセリフがかぶると聞こえないので、“笑い待ち”をしてセリフを再開します。

 なので、大阪から東京公演に戻る場合は大変です。東京でのセリフは間が詰まっているので、大阪の時のように“笑い待ち”をすると変な間になっちゃうんです。

―今後考えていることはありますか?

 “いいお父さん”のイメージを狙っています。今“いいお父さん”役は全部、光石研さんに集まっているので、シェアを奪うためにね(笑)。これまでやった父親役は、奥さんと離婚して娘がいて…とかのパターンなので、いわゆる“いいお父さん”をできるように。そのイメージでCMも来たらいいなと(笑)。また、バラエティの仕事もするかもしれないです。

【編集後記】

エネルギッシュな方です。エネルギーの塊です。音楽で言うとフォルテ、スタッカートという感じでしょうか。大きな声、ハッキリした口調でお話になるので、つられてこちらも元気な話し方になっていきます。夕方18時就寝は正直驚きましたが、ご自分が信じること、やるべきことが決まっていて、迷いがないのでできるのだと思います。ほんの少し、真似してみたくなりました。

■筧利夫(かけい・としお)

1962年8月10日生まれ、静岡県出身。大阪芸術大学舞台芸術学科卒業。在学中、いのうえひでのり主宰「劇団☆新感線」に所属。卒業後、鴻上尚史主宰劇団「第三舞台」に所属。舞台代表作につかこうへい演出『飛龍伝』シリーズ、野田秀樹演出『贋作・罪と罰』、蜷川幸雄演出『じゃじゃ馬馴らし』、東宝ミュージカル『Miss Saigon』ではエンジニアを演じる。ドラマ代表作は『やまとなでしこ』、『踊る大捜査線』、『Dr.コトー診療所』など。映画主演作に大林宣彦監督作品『22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語』、押井守監督作品『THE NEXT GENERATIONパトレイバー首都決戦』。柿崎ゆうじ監督作品『第二警備隊』ではロンドン・フィルムメーカー国際映画祭、ニース国際映画祭で最優秀主演男優賞にノミネートされる。

ブロードウェイミュージカル『クラスアクト』は5/30~8/3、東京・サンシャイン劇場を皮切りに北海道から沖縄まで全国公演予定。詳細はhttps://aclassact.jp/

フリーアナウンサー/リポーター

東京都出身。渋谷でエンタメに囲まれて育つ。大学卒業後、舞台芸術学院でミュージカルを学び、ジャズバレエ団、声優事務所の研究生などを経て情報番組のリポーターを始める。事件から芸能まで、走り続けて四半世紀以上。国内だけでなく、NYのブロードウェイや北朝鮮の芸能学校まで幅広く取材。TBS「モーニングEye」、テレビ朝日「スーパーモーニング」「ワイド!スクランブル」で専属リポーターを務めた後、現在はABC「newsおかえり」、中京テレビ「キャッチ!」などの番組で芸能情報を伝えている。

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