来年度の防衛費概算要求、日英伊の次期戦闘機開発に726億円 搭載ミサイルは国産へ #GCAP
防衛省は8月31日、過去最大の7兆7385億円に及ぶ2024年度防衛予算の概算要求を決定した。このうち、航空自衛隊のF2戦闘機の後継となる次期戦闘機開発の関連費用として726億円を予算要求した。
内訳は以下のようになっている。
①機体の基本設計やエンジンの詳細設計など「次期戦闘機の開発」に637億円
②次期戦闘機など有人機と連携する戦闘支援無人機を実現するために必要なAI技術の研究など「次期戦闘機と連携する無人機の研究等」に49億円
③日英伊共同開発を推進するために運営資金を拠出する「次期戦闘機の共同開発機関への拠出金」に40億円
次期戦闘機の開発状況について、防衛省担当者は「今年度に実施している機体の構想設計の結果を踏まえて、機体の形状や構造を確定させる活動や主要な搭載部品の設計を引き続き行っていく状況にある。日英伊の間で引き続き進めていく」と述べた。
日英伊で共同設立する国際機関については、防衛当局間の意思決定を円滑に履行し、開発を効率化するために設ける。
防衛省担当者は「現在は各国政府が個別にプライム企業と契約を結んでいるものを、国際機関とこれに対応するような企業体の契約に一元的にして効率的な協業体制ができないものかと考えている。これ以上の詳細は3カ国で検討中である」と述べた。日英伊3カ国で開発や製造の主体となる三菱重工業と英航空・防衛大手のBAEシステムズ、イタリアの防衛大手レオナルドの3社が参加する共同企業体(JV)を設立する方針だ。
次期戦闘機の計画は「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP=ジーキャップ)」と呼ばれる。日英伊3カ国政府が昨年12月に発表した。三菱重工業とBAEシステムズ、レオナルドの3社が機体の開発を進めている。エンジン部分は日本のIHIと英国の航空機エンジン製造大手ロールスロイスが中心で、イタリアで航空機エンジンを手がけるアビオも加わる。電子システムは、三菱電機とレオナルドUK、イタリアのレオナルドとエレットロニカの4社が担当する。欧州の軍事大手MBDAもミサイル開発で参画する。
防衛省はF2戦闘機の退役が見込まれる2035年度までの開発完了を目指している。現在保有するF2と同数の少なくとも約90機の導入を想定している。一方、英国も現行の戦闘機ユーロファイター・タイフーンの後継機として「テンペスト」の2035年までの配備を目指している。
●次期戦闘機搭載の新たな国産ミサイル開発
来年度概算要求では、次期戦闘機に搭載する「次期中距離空対空誘導弾の開発」に向けて184億円も計上された。日英はF35戦闘機搭載の新型空対空ミサイル(JNAAM)の共同研究を推進してきた。しかし、次期戦闘機搭載のミサイルは国産で、防衛省担当者は次期戦闘機用の新たなミサイルは「JNAAMとは全く別」と言い切った。
防衛装備庁は今年度いっぱいでJNAAMのプロジェクトへの予算計上を終えた。
(参考記事:2023年度の防衛費、F35戦闘機搭載の新型ミサイルの日英共同研究費用を予算計上)
英国とのこれまでの共同研究成果に基づき、国産ミサイルの開発の方が費用対効果や技術面でメリットが大きいと判断したとみられる。
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