日英伊の次期戦闘機開発、レオナルドが実験機として2機目のボーイング757を取得 #GCAP
イタリアの航空・防衛大手レオナルドは、日英伊3カ国が共同開発する次期戦闘機の実験機として2機目の米ボーイング社製757旅客機を取得した。実験機は、英国のアーサー王伝説で魔法の力を持つとされる聖剣の名称にちなみ、「エクスカリバー」と名付けられている。
レオナルドは、日英伊が2035年までに次世代戦闘機を共同開発する「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」に参加している。GCAPは、航空自衛隊のF2戦闘機の後継機となる「FX」と、英伊両空軍の主力戦闘機ユーロファイター・タイフーンの後継機となる「テンペスト」を合体させた第6世代戦闘機の国際共同開発計画だ。
ボーイング757型機は、テンペスト用に開発されている機器を搭載するために必要な性能や大きさ、所要電力を備えているためにエクスカリバーの機体として選ばれた。
●統合センサーシステムと統合通信システム搭載
レオナルドの14日の発表によると、このボーイング757型機は次期戦闘機の実験機となるためにオーバーホール(点検、修理、部品交換)され、レオナルドが開発した先進統合センサーシステム「ISANKE」と統合通信システム「ICS」が搭載される。
ISANKEはIntegrated Sensing and Non-Kinetic Effects(統合センシングと非物理的効果)の頭文字を取った略語だ。個々の空中センサーに頼る従来の戦闘機と違い、機体全体に張り巡らされた「蜘蛛の巣」のような統合ネットワーク能力を持つ。レーダーや赤外線探知・追跡装置(IRST)、防御支援機器(DAS)を含む多数のセンサーから得られたデータを統合、融合、処理することを目的としている。これによって、パイロットはこれまでよりも迅速かつ長距離で戦闘空間を認識できるようになる。情報の優位性と高度な自己防衛能力を確保し、戦闘機の生存性が向上する。
一方、ICSはIntegrated Communications Systems(統合コミュニケーションシステム)の略語で、僚機や無人機などとの情報を共有する統合データリンクとなっている。
レオナルドは発表文で「エクスカリバー航空機は、レオナルドとその国際パートナーがGCAPの一部として開発しているISANKEとICSを搭載するように適応されている。この航空機は今後3年以内に新技術を搭載して飛行する予定だ。科学者やエンジニアが搭乗し、飛行中にセンサーや通信システムをテストする予定だ」と述べた。
レオナルドは14日、エクスカリバー飛行試験機(FTA)プロジェクトの第2段階を開始する約1億3400万ユーロ(209億円)相当の契約を英国防省と結んだとも発表した。そして、FTAが英国の将来戦闘航空システム(FCAS)の中心となる日英伊共同開発の次期戦闘機の導入をサポートすると強調した。
レオナルドは2021年9月、1機目のボーイング757をテンペスト開発向けの飛行試験機に改造する作業を正式に開始したと発表した。
また、レオナルドUKと三菱電機は2022年7月、ロンドン近郊で開催中のファンボロー航空ショーで、次期戦闘機用のレーダー技術実証機「JAGUAR」(ジャガー)のコンセプトに合意したと発表した。JAGUARとはJapan and Great Britain Universal Advanced RF systemの略語で、次世代RF(電波)センサーシステムを指す。そして、JAGUARの開発で得た技術や知見は、テンペストのISANKEとICSの開発にも生かす方針を明らかにした。
さらに三菱電機とレオナルドUK、イタリアのレオナルドとエレットロニカの4社は今年3月、千葉・幕張メッセで開催された日本最大の防衛装備品見本市「DSEI JAPAN」で、日英伊3カ国が共同開発する次期戦闘機プロジェクトの中のミッションアビオニクスシステム開発担当企業として協業契約を結んだと発表。第6世代戦闘機のミッション電子システムとなるISANKEとICSについての共同開発を本格化させた。
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