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2023年度の防衛費、F35戦闘機搭載の新型ミサイルの日英共同研究費用を予算計上

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
日英が共同研究を進めるF35戦闘機用の新型ミサイルのイメージ図(防衛省資料)

防衛省は12月23日、2023年度予算に、米国製ステルス戦闘機F35搭載用の新たな中距離空対空ミサイル(JNAAM)にかかわる日英共同研究費用3億円を計上した。内容については、この新型ミサイルの国内でのシーカー(目標捜索装置)性能確認試験の準備費用と説明した。防衛省の今夏の概算要求の3億円が満額認められた格好だ。

この日英共同研究のJNAAMは、欧州のミサイル大手MBDAが開発したアクティブレーダー誘導の視界外射程空対空ミサイル(BVRAAM)「ミーティア」に、三菱電機のシーカーを組み合わせるもの。この小型で高性能の電波シーカー技術は、三菱電機が「AAM-4B」空対空ミサイル向けに開発したものだ。

戦闘機用空対空ミサイルの日英共同研究のイメージ図(防衛省資料を筆者がキャプチャー)
戦闘機用空対空ミサイルの日英共同研究のイメージ図(防衛省資料を筆者がキャプチャー)

ミーティアは欧州のミサイル大手MBDAが主契約企業となり、イギリスを中心に仏、独、伊、スペイン、スウェーデンの6カ国によって共同開発された。

欧州のミサイル大手MBDAが主契約企業となって国際共同開発されたミーティア(防衛省資料を筆者がキャプチャー)
欧州のミサイル大手MBDAが主契約企業となって国際共同開発されたミーティア(防衛省資料を筆者がキャプチャー)

JNAAMは、日本政府が2014年4月に防衛装備品の輸出や国際共同開発に関する新たな原則「防衛装備移転三原則」を策定してから、ぐっと動き出した。政府は同年7月、国家安全保障会議(NSC)の閣僚会合を開き、迎撃ミサイル「パトリオット2(PAC2)」の部品のアメリカへの輸出とともに、F35搭載のミサイル技術をめぐるこの日英共同研究を認めた。これらは日本の武器と関連技術の海外移転を原則として禁じてきた長年の禁輸政策を転換し、「防衛装備移転三原則」の下で初めてとなる2事例だった。つまり、JNAAMは日本がアメリカ以外の国と手掛ける初の防衛装備プロジェクトとなった。

日英は2018年12月にはJNAAMの実証にかかわる共同研究を開始し、既に研究試作の段階に移行した。2022年度にプロトタイプの試作を終了する見込みだ。所内試験を踏まえ、現行のJNAAMをめぐる日英共同研究プロジェクトは2023年度に完了する予定だ。日英両国はその後、ミサイルの性能や価格面などを評価し、量産の可否を判断するとみられる。JNAAMは、2035年に配備予定の次期戦闘機にも搭載される可能性がある。

日英は、この他にも2021年7月に新たな「化学・生物防護技術にかかわる日英共同研究」を開始。2022年2月には次期戦闘機向けの高性能センサーシステムを共同開発すると発表した。こうしたサブシステムで着実に積み上げてきた技術協力の実績が次期戦闘機の日英共同開発を加速させてきたと考えられる。

●元統幕長「次期戦闘機、初の日英共同開発にあらず」

岩崎茂・元統合幕僚長は12月21日に出演したBS日テレの「深層NEWS」の中で、「次期戦闘機が初めての日英の共同開発とは思っていない。私が現役の最後の頃の2013年からだったと思うが、日英協力で新しいミサイルを作っている。私たちが持っているAAM-4の能力と、非常に性能の良いミーティアのロケットエンジンを組み合わせたものを今、開発中だ。たぶんあと1、2年で完成するのではないかと思っている。これは非常にうまく進捗している。このような経験もあるので、日英伊の戦闘機も努力すれば成功するのではないかと思っている」と述べた。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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