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2023年度の防衛費、次期戦闘機開発に1054億円 日英伊共同開発で378億円のコスト削減効果

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
富士山を背にして飛行する航空自衛隊の次期戦闘機のイメージ図(防衛省提供)

政府は12月23日、過去最大の6兆8219億円に及ぶ2023年度防衛予算案を閣議決定した。このうち、航空自衛隊のF2戦闘機の後継となる次期戦闘機(FX)の研究開発費として1054億円を予算計上した。内訳は、日英伊の共同開発を推進するための機体の基本設計やエンジン製造など「次期戦闘機の開発」に1023億円、戦闘機用エンジンの効率性向上など「次期戦闘機関連研究」に31億円となっている。

防衛省は、今夏の概算要求では「次期戦闘機の開発」1401億円、「次期戦闘機関連研究」31億円の計1432億円の予算獲得を目指していた。しかし、前者の「次期戦闘機の開発」については、1401億円から1023億円へと、概算要求と比べて一気に378億円も減額されたことになる。なぜか。

防衛省の説明によると、次期戦闘機の開発費の1401億円は概算要求時点では、もともと国内単独開発案を前提に予算を組んできた。しかし、その後、日英伊の共同開発が決まり、コストが分担できるようになったことから、その部分を差っ引いて378億円の減額が可能になると判断したという。共同開発によるコスト削減効果が発揮された格好だ。

気になる日英伊3カ国間のワークシェア(作業分担比率)や費用負担割合については、それぞれの国がどれほどの戦闘機数を調達するのか、あるいは、各国の技術的な強みや弱みを踏まえて生産ラインをどこにどう置くのかなど、様々な要素によって、今後決まっていくとみられる。

各国の調達機数については、日本の場合、次期戦闘機がF2の後継機となるため、F2の生産機数94機と同程度になる見通しだ。一方、英国とイタリアは現行の戦闘機ユーロファイター・タイフーンの後継として、テンペストの2035年までの配備を目指している。英国とイタリアの両国空軍はユーロファイターをそれぞれ160機、96機を発注しており、その程度の数になるとみられる。しかし、日英伊が効率的な共同開発で生産機数を増やして量産単価を引き下げ、海外市場へ売り込むことを視野に入れているとすれば、調達機数は増える可能性がある。

航空自衛隊のF2後継機となる次期戦闘機のイメージ図(防衛省提供)
航空自衛隊のF2後継機となる次期戦闘機のイメージ図(防衛省提供)

今後の具体的な日英伊の共同開発スケジュールについては、防衛省は以下のように説明した。

現状は構想設計を進めている段階で様々な議論をしている。(ワークシェアや負担割合については)設計スケジュールの詳細に基づいて決まっていく話となる。その詳細設計は2年後の2024年ごろから本格的に行う。その辺りが1つのメルクマーク(指標)になっていくかなと考えている。

2035年ごろに次期戦闘機の初号機の配備を目指し、スケジュールを調整しているが、一例として申し上げるのであれば、2029年(令和11年)に地上試験や飛行試験を開始するスケジュールが考えられる。戦闘機開発では、逆算するとだいたいそれぐらいになる。あくまで1つの試算として持っている。我々としては日英伊で協議を進めている中で、2035年に配備するというスケジュールの中でしっかりと開発を進めていきたい。

つまり、防衛省は2024年をめどに開発にあたっての3か国のワークシェアや費用、生産拠点の場所などを固めていきたい意向だ。

イタリアのクロゼット国防相はロイターとのインタビューで、日英との戦闘機共同開発について、イタリアは平等な扱いを受けなければならないと強調。「イタリアは技術や研究、その後は結果についても日本や英国と同じウエートを持つ場合にのみ、この道を進み続けることができる」と述べ、3カ国がそれぞれ33%の比率になることを望んだ。

一方で、日本は我が国主導で開発していくことを打ち出している。英国もかねて戦闘機開発では自国の雇用確保を重視している。主導権確保が大きなテーマとなりそうだ。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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