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日英伊共同開発の次期戦闘機の模型が初公開(動画付き)#DSEI2023

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
初公開された日英伊共同開発の次期戦闘機の模型(高橋浩祐撮影)

日英伊3カ国が共同開発を進めている次期戦闘機の模型が、15日に開幕した日本最大の防衛装備品の見本市「DSEI JAPAN」で初公開された。2019年11月以来2度目の開催となる今回の「DSEI JAPAN」の目玉の展示となっている。

次期戦闘機は、第5世代戦闘機の代表であるアメリカのステルス戦闘機F22やF35を上回る「第6世代戦闘機」(ベン・ウォレス英国防相)と位置づけられている。

次期戦闘機の計画は「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP=ジーキャップ)」と呼ばれる。三菱重工業と英航空・防衛大手のBAEシステムズ、イタリアの防衛大手レオナルドの3社が機体の開発を進めている。エンジン部分は日本のIHIと英国の航空機エンジン製造大手ロールスロイスが中心で、イタリアで航空機エンジンを手がけるアビオも加わる。電子システムは三菱電機、伊レオナルド、レオナルド英国法人が担当する。欧州の軍事大手MBDAもミサイル開発で参画する。

次期戦闘機の模型を紹介した筆者のツイートには、「無尾翼のラプターって感じ」「行き着く先はF-22か・・・」「やっぱラプターチックになっちゃうんですね」といったように、米軍のF22ラプターと形状を比較する反応が目立っている。

次期戦闘機について、防衛省はF2戦闘機の退役が見込まれる2035年ごろからの配備開始を目指している。現在保有するF2と同数の少なくとも約90機の導入を想定している。一方、英国も現行の戦闘機ユーロファイター・タイフーンの後継機として「テンペスト」の2035年までの実戦配備を目指している。

英政府関係者は14日、筆者の取材に対し、GCAPで注目している点として日本が次期戦闘機を海外に輸出するのかどうかを挙げた。日本が東南アジア諸国などを念頭に将来の輸出を考えれば、一機当たりの量産単価が下がるメリットがある。その一方、日本国内には殺傷力のある武器輸出への根強い反対意見があるのも事実。この場合、英国とイタリアが次期戦闘機を第三国に輸出しようとする際に妨げにならないような制度の整備などが課題になる。

正面から見た日英伊共同開発の次期戦闘機の模型(高橋浩祐撮影)
正面から見た日英伊共同開発の次期戦闘機の模型(高橋浩祐撮影)

また、海外の関係者からは最新技術をめぐる日本の情報保全体制は大丈夫なのかといった懸念の声も上がっている。残念ながら、日本はメディアなど外部に重要情報が漏れやすいリーキーな国との評判が海外にある。こうした懸念を一つひとつ払拭して日英伊の次期戦闘機共同開発は進んでいくべきだろう。

浜田防衛相は16日に英国のウォレス国防相、イタリアのクロゼット国防相との日英伊防衛相会談を東京で初めて実施する予定だ。

初公開された日英伊共同開発の次期戦闘機のポスター(高橋浩祐撮影)
初公開された日英伊共同開発の次期戦闘機のポスター(高橋浩祐撮影)

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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