「国産トマホーク」島嶼防衛用新対艦誘導弾(新SSM)装備化の計画なし 防衛装備庁担当者が明言
川崎重工業が現在研究試作を進めている島嶼防衛用新対艦誘導弾(新SSM)は将来、装備化されないことが分かった。防衛装備庁担当者が11月12、13両日に都内で開かれた「防衛装備庁技術シンポジウム2024」で筆者の取材に対して明言した。
この誘導弾は長射程巡航ミサイルで、相手の脅威圏外から発射できるスタンドオフミサイル。燃費に優れる小型のターボファンエンジンを推進装置とし、飛行機のように翼を有して水平飛行する。射程、形状、性能の面で米国の巡航ミサイル「トマホーク」と共通点が多いことから、「国産トマホーク」「日本版トマホーク」と位置づけられてきた。
防衛省は2023年6月、この新SSMの技術研究として2023年度から2027年度までの5年間で川崎重工業と約339億円に及ぶ契約を交わした。新SSM自体は将来装備化されない代わりに、その要素技術が他の多種多様な機能を持った誘導弾(機能弾)のベースとして生かされる計画だ。具体的には、下図のように①対艦誘導弾(デュアル・シーカ搭載)、➁対地誘導弾(赤外線シーカ搭載)、③ジャマー・デコイ弾、④目標情報収集弾、⑤高貫徹弾頭弾ーーを短期間に低コストで開発できるよう、これまで取得した要素技術が活用される。
川崎重工業が防衛装備庁から受注した正式案件名は「島嶼防衛用新対艦誘導弾の要素技術(その3)の研究試作」。研究試作とは銘打っているものの、事実上の開発だ。その5年契約の最終年度となる2027年度に、上記の機能弾5つのうち、対地誘導弾と目標情報収集弾の2つのミサイルの試作品の発射試験が実施される予定だ。
●新スタンドオフミサイル「新地対艦・地対地精密誘導弾」
防衛省は2024年度防衛予算に、三菱重工製の12式地対艦誘導弾能力向上型の地上装置を活用した「新地対艦・地対地精密誘導弾」の開発費として323億円を新規計上した。
防衛装備庁は10月、筆者の取材に対し、「島嶼防衛用新対艦誘導弾事業と新地対艦・地対地精密誘導弾事業は、異なる事業です。他方で、新地対艦・地対地精密誘導弾は、他の研究開発成果等を活用して研究開発を行う予定です。この際、島嶼防衛用新対艦誘導弾の要素技術の研究で得られた成果も反映する予定です」と回答した。
防衛省の「令和5年度政策評価書(事前の事業評価)」では、新地対艦・地対地精密誘導弾の開発事業は、島嶼防衛用新対艦誘導弾の要素技術の研究、12式地対艦誘導弾能力向上型、さらに目標観測弾の設計成果を活用して、開発経費の抑制を図ると説明されている。
防衛装備庁は近々、新地対艦・地対地精密誘導弾の契約企業や契約内容を発表する予定だ。
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