廃止への布石？ システム切替により宗谷本線抜海駅・佐久駅の2番ホームが9月24日以降使用停止に
4月25日、JR北海道旭川支社は宗谷本線の運行管理システムの切替工事に伴い、8月24日（土）と9月23日（月・祝）の一部列車を運休し、バスによる代行運転を行うと発表した。運休する列車は両日ともに下り普通列車4本と上りの特急「宗谷」1本と普通列車3本で、特急停車駅のみに停車する代行バスを旭川～稚内間で運行する。
宗谷線のシステム切替工事に伴う列車の運休と代行バスの実施について（8/24・9/23）
線路上での工事作業時間を確保するために列車を運休すること自体は珍しいことではなく、JR北海道以外でもよく実施されている。今回のニュースで鉄道ファンの注目を集めたのは、システム切替後の9月24日以降は抜海駅と佐久駅の2番ホームが使用停止となり、全ての列車が1番ホームに発着するようになるという点だった。
抜海駅・佐久駅ともに、列車の行き違いができる「交換可能駅」で、駅舎側の1番ホームに稚内方面、反対側の2番ホームに名寄・旭川方面の列車が発着している。いずれの駅も定期列車の交換は設定されておらず、列車の大幅な遅延が発生した際や臨時列車運転時に列車が行き違うための「予備」の設備といった感じだ。
予備の設備と言えども、当然ながら維持費や固定資産税はかかり、ホームが二つあって駅構内が広いとなると、冬期の除雪の手間も大きい。こうした事情から、国鉄時代の昭和40年代以降、全国各地の駅で不要な交換設備の撤去や駅設備の簡素化といった合理化が行われてきた。宗谷本線名寄～稚内間の場合、昭和50（1975）年時点で交換設備は名寄、智東、智恵文、美深、紋穂内、恩根内、豊清水、咲来、音威子府、筬島、神路、佐久、天塩中川、歌内、問寒別、雄信内、安牛、上幌延、幌延、下沼、豊富、徳満、芦川、兜沼、勇知、抜海、南稚内と27駅にあったが、棒線化や駅の廃止により、名寄、美深、豊清水（信号場）、音威子府、佐久、天塩中川、雄信内、幌延、豊富、兜沼、抜海、南稚内の12駅にまで減ってしまった。そして、今回2駅減って9駅となる。
両隣の交換可能駅との距離は、抜海駅の場合、南稚内駅との間で11.7キロ、兜沼駅との間で14.1キロ。佐久駅の場合は、天塩中川駅との間で8.3キロ、音威子府駅との間で24.3キロだ。いずれも隣駅が交換可能駅なので、廃止しても差し支えないと判断されたのだろう。ちなみに美深駅と豊清水信号場との間は19.6キロ、豊清水信号場と音威子府駅との間は11.4キロだ。
抜海駅、佐久駅ともに利用者減少から廃止候補として名前が挙がっている駅でもある。令和3（2021）年4月に抜海駅は稚内市、佐久駅は中川郡中川町の維持管理に移行しており、現在は自治体が維持管理費を負担している。この費用も財政状況の厳しい自治体にとっては負担となっており、稚内市は抜海駅を令和6（2024）年度末に廃止する方針を示している。佐久駅の方は「当面維持していく」方針とのことだが、令和4（2022）年度の一日平均乗車人員が0.8人という状況を考えれば、近い将来廃止となってもおかしくない。
駅が廃止となる場合、豊清水駅のように交換設備のある駅であれば信号場となって生き延びることが多いが、交換設備が撤去された棒線駅であれば、駅設備も撤去されて完全に消え失せてしまう。早ければ来年3月にも廃止されてしまう抜海駅の場合も信号場とはならず完全に廃止されてしまう公算が高い。今回の交換設備使用停止は、駅廃止へ向けた準備の一つと見なすこともできるだろう。
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