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「M-1」当日に第一線の芸人が社会へ投じた一石 メディア、著名人、インフルエンサーはどう考えるか

武井保之ライター, 編集者
Xに対する持論を語ったEXITの兼近大樹さん(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

今年6月に自身のXアカウントを消去した、お笑いコンビ・EXITの兼近大樹さん。10代をはじめZ世代から人気の彼のアカウントのフォロワー数は70万人を超えていた。

(関連記事:EXIT兼近、Xアカウント消去宣言 世の中に問いかけるXの社会的価値と存在意義

芸人としての仕事を考えれば、そこからの発信にメリットがあるのは間違いない。それでも放棄したのは、それが彼の正義であり、社会の一員としての責任の負い方であり、真にファンのことを思う気持ちがあるからだろう。

12月22日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)では、その真意を改めて自ら語った。それは同時に、現状のXをビジネスとして使用するメディア、著名人、インフルエンサー、一般企業などに対しての問いかけでもあった。

「Xのアカウントを削除したのは、誹謗中傷が渦巻くSNSであり、そこを起点にした犯罪さえ横行している現状に対して、プラットフォームが責任を追わないことに対して納得がいかないから」

彼のフォロワーには未成年を含む若い世代が多い。そのフォロワーが、兼近さんの情報を見るために、人の悪意や卑猥な情報に触れたり、誹謗中傷に巻き込まれたり、闇バイトのような犯罪につながるポストを目にしたりする。

そんな社会的害悪となるSNSを、自身のファン(フォロワー)の身近に置きたくないし、接触してほしくない。そこにはファンに対する責任の自覚がある。

「犯罪につながっているSNSなのに、規制がないなかで、みんな楽しんでいる。Xがどんどんおかしくなっているのに、僕ら芸能人がやっていれば、若い子たちが入ってくる。

僕を見るために入っても、ほかの情報も見てしまう。そこから誹謗中傷の加害者になってしまったり、犯罪に巻き込まれることもあるかもしれない。

そんなSNSを大人たちがそのまま使ってていいのか。そこで起きている誹謗中傷や犯罪に手を貸すことになるのではないか。僕はその仲間入りをしたくない」

この11月、イギリスの有力紙ガーディアンは、Xを社会に対する有害なメディアプラットフォームとして、そこからの情報発信を止めることを発表した(ただし、情報収集のツールとしては引き続き使用する)。

また、最近では、作品や商品のX公式アカウントのフォロワー数が、売上に比例しないことも言われるようになっており、mixi2のようなXへのカウンター的な新たなSNSも登場している。

Xに対する社会の視線や意識が大きく変わる転換期に来ているのではないだろうか。

そもそも、ビジネス的なメリットとデメリットとは別に、匿名の悪意の温床であり、犯罪につながったり人が死んだりするような規制なき無法地帯に、公式アカウントを持つこと自体が、その企業の理念や事業の指針に対しての疑問につながる気がする。

兼近さんの言動は正論であり、ひとりの大人としてのまっとうな正義を掲げ、自身の社会的責任を果たしている。彼の投じた一石を社会はどう考えるか。

ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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