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「泣き叫ぶ16歳少女」が放り込まれた、北朝鮮の虐待施設

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
北朝鮮の公開裁判(デイリーNK)

今年、米韓の報道機関やNGOの発表により、北朝鮮が未成年に対しても、違法行為を厳しく取り締まり、厳罰を下していることがわかった。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は8月、北朝鮮当局が、凶悪犯罪が続発していると警告する映像を国民らに公開し、治安改善を図っていると伝えている。

映像を見た住民はRFAに対し、「映像には15歳未満の学生が殺人、強盗、強姦行為に加担した事件の内容もあった」と伝えた。さらに、「青少年や学生らの間で発生した犯罪は全て両親が共に法的処罰を受けたという点が強調された」と付け加えた。

わざわざ映像を作って公開するとは、北朝鮮当局が未成年による違法行為に、いかに手を焼いているかがうかがえる。

(参考記事:「見てはいけない」ボロボロにされた女子大生に北朝鮮国民も衝撃

しかし、北朝鮮当局が警戒しているのは、上記のような凶悪犯罪だけではない。むしろ「韓流ドラマを見た」といったような、他国では罪にもならないような罪に対し、より苛烈な取り締まりを行っている。

韓国KBSは9月4日、韓国ドラマを見たという理由で10代の少女らが公開裁判にかけられて泣き叫ぶ、北朝鮮当局制作の映像を公開した。北朝鮮当局はこの映像で、少女の素顔と名前、学校、年齢まで公開して「傀儡(韓国)テレビ劇(ドラマ)をはじめとする不純出版宣伝物を視聴・流布させた学生数人を法的に厳しく処罰した」と説明している。

映像に登場した女子高生のひとりは、無期の労働教化刑(無期懲役)を言い渡された。食糧事情と衛生環境が劣悪で、虐待と性暴力がはびこる北朝鮮の刑務所で、10代の少女が生き延びることは極めて難しい。

(参考記事:北朝鮮女性を追いつめる「太さ7センチ」の残虐行為

北朝鮮がこうまでする理由は、いくら取り締まっても国内から韓流を一掃できないからだろう。韓流など外部情報の流入を食い止めるための「反動思想文化排撃法」が制定されてから4年が経つが、状況に大きな変化が起きたとは言い難い。

その原因も検討がつく。実のところ、最高幹部クラスから庶民まで、韓流をまったく見ていない人の方がむしろ少数になっているのだ。上層部が決めたルールであるため取り締まりに当たる司法機関の要員たちも、隠れて見ている。

彼らの多くは、もはや外部からの流入情報を取り締まるなど「バカバカしい」と感じているのではないか。金正恩体制に終焉をもたらすのは、こうした「シラケ」や「あきらめ」であるかもしれない。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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