JR北海道発足後、廃止になった駅はいくつある? 整理が進む利用者僅少駅
JR北海道では近年、利用者の少ない駅の整理が一気に進んだ。ダイヤ改正の度にいくつかの駅が廃止となっており、今年3月のダイヤ改正では日高本線の浜田浦駅が廃止となった。来年3月ダイヤ改正でも函館本線の中ノ沢駅の廃止が検討されている。
では、JR北海道発足以降、いくつの駅が廃止となったのだろうか。路線廃止によるものと、期間限定で営業していた駅を除くと以下のようになる。合計75駅だ。
平成2(1990)年3月10日 4駅
雨煙別駅、政和温泉駅、蕗ノ台駅、白樺駅(深名線)
平成2(1990)年9月1日 3駅
琴平駅(宗谷本線)、伊奈牛駅(石北本線)、新富駅(深名線)
平成2(1990)年10月1日 1駅
桜庭駅(留萌本線)
平成3(1991)年10月22日 1駅
滝里駅(根室本線)
平成13(2001)年7月1日 6駅
芦川駅、上雄信内駅、下中川駅(宗谷本線)、天幕駅、中越駅、奥白滝駅(石北本線)
平成16(2004)年3月13日 1駅
楓駅(石勝線)
平成18(2006)年3月18日 7駅
南下沼駅、智東駅(宗谷本線)、新栄野駅(石北本線)、東幌糠駅(留萌本線)、中徳富駅(札沼線)、張碓駅(函館本線)、旭浜駅(室蘭本線)
平成26(2014)年3月15日 3駅
知内駅、吉岡海底駅、竜飛海底駅(海峡線)
平成28(2016)年3月26日 6駅
上白滝駅、旧白滝駅、下白滝駅、金華駅(石北本線)、花咲駅(根室本線)、鷲ノ巣駅(函館本線)
平成29(2017)年3月4日 12駅
五十石駅(釧網本線)、島ノ下駅、稲士別駅、上厚内駅(根室本線)、美々駅(千歳線)、東追分駅、十三里駅(石勝線)、蕨岱駅、北豊津駅、桂川駅、姫川駅、東山駅(函館本線)
平成30(2018)年3月17日 1駅
羽帯駅(根室本線)
平成31(2019)年3月16日 3駅
令和2(2020)年3月14日 2駅
南弟子屈駅(釧網本線)、古瀬駅(根室本線)
令和3(2021)年3月13日 17駅
徳満駅、上幌延駅、安牛駅、豊清水駅、紋穂内駅、南美深駅、北星駅、下士別駅、東六線駅、北比布駅、南比布駅(宗谷本線)、北日ノ出駅、将軍山駅、東雲駅、生野駅(石北本線)、南斜里駅(釧網本線)、伊納駅(函館本線)
令和4(2022)年3月12日 7駅
歌内駅(宗谷本線)、糸魚沢駅(根室本線)、本石倉駅、石谷駅、銚子口駅、流山温泉駅、池田園駅(函館本線)
令和5(2023)年3月18日 1駅
浜田浦駅(日高本線)
駅の廃止自体は平成2(1990)年以降、不定期に行われてきた。深名線の4駅が廃止になったのが最初だが、これは5年後に控えたバス転換を前に利用者の少ない駅を整理することで、深名線を引き継いだバスが不必要な回り道をしないで済むようにという意図があったと言われている。実際、国道から大きく離れた位置にあった蕗ノ台駅と白樺駅が事前に廃止されたことで、深名線転換バスは最短ルートの国道上を走ることができるようになった。両駅とも廃止時点で駅周辺は無人地帯となっており、廃止しても問題ない状況だったそうだ。しかし、半年後に廃止された新富駅の場合は事情が違った。JRから廃止を打診された幌加内町が駅周辺の住民に確認をせずに廃止に同意したことで、列車で通院していた老夫婦が困るという事態が生じたのだ。この件については町が通院時に車で送り迎えをするという対応で解決したという。
はじめてまとまった数の駅廃止があったのが平成13(2001)年7月1日で、宗谷本線の3駅と石北本線の3駅が廃止となった。この時廃止となった6駅はいずれも鉄道ファンには秘境駅として知られていた駅で、上雄信内駅は牧場の敷地内にあって、駅に公道が通じていないという珍しい駅だった。廃止後、芦川駅の駅舎と上雄信内駅の待合室は移設保存されている。
石北本線の3駅はいずれも上川~白滝間の石北峠越えの区間にあった駅で、廃止前は上下列車が一本ずつという状況であった。廃止後、天幕駅は解体されたものの、中越駅と奥白滝駅は信号場となっており、駅舎は今も残っている。
平成16(2004)年3月13日には石勝線の楓駅が信号場化された。特急が行き交う本線から分かれた行き止まりの線路の先にあった駅で、追分と新得を結ぶ石勝線の途中駅でありながら列車は追分方面に折り返すだけという珍しい方式の駅だった。廃止時点では列車は早朝の一往復のみで、日曜日は運休していた。
平成18(2006)年3月18日には7駅が廃止された。これらの駅も秘境駅として知られていた駅で、いずれの駅も利用者は極めて少なかったようである。このうち、智東駅は周辺に人家がなく除雪がなされないゆえの冬季休止という事情を抱えていた。廃止後、貨車駅舎はトロッコ王国美深で再利用されている。張碓駅は海水浴場と崖に挟まれた立地の駅で、かつては海水浴客で賑わっていたが、線路を渡ろうとした海水浴客が列車に撥ねられる事故が多発して危険なことから、海水浴場の廃止と共に列車も停まらなくなった。列車が止まらなくなってからも駅だけは残っていたが、このダイヤ改正で廃止されている。
その後は、北海道新幹線建設工事に伴って平成26(2014)年3月15日に海峡線の3駅が廃止された他はしばらく動きが無かった。しかし、この間にJR北海道の経営状況は急速に悪化。利用者が少ない駅を維持していくだけの余裕もなくなり、平成28(2016)年3月26日には一気に6駅が廃止された。この際、JRは「1日平均の乗車人員が1人以下の51か所について、地元との協議が整い次第、順次廃止する」との方針を打ち出しており、翌年以降も駅の廃止が続くことになった。まさに「廃止ラッシュ」とでも言うべき状況で、筆者のような「降り鉄」は毎年発表される駅廃止の情報を元に予定を組んで渡道するのが常になった。しかし、北海道は広く限られた費用と日数で廃止予定駅をすべて巡るのは大変で、筆者も泣く泣く訪問を諦めた駅がいくつかある。また、この時のダイヤ改正で大規模な減便も行われ、列車だけで北海道各地の駅を巡るのはさらに難しくなった。
平成29(2017)年3月4日には前年の倍となる12駅が廃止。特に函館本線の道南エリアでは一気に5駅が廃止と利用者0人駅を全廃する勢いだった。この時廃止された釧網本線の五十石駅は前年ダイヤ改正で廃止対象に上がっていたものの、通学利用があったために廃止が一年先送りされたそうだ。千歳線の美々駅は新千歳空港から至近の駅ながら周辺に人家や施設等もなく、利用者は一人以下だった。IC乗車券利用可能駅としては全国初の廃駅という珍しい例である。
平成30(2018)年3月17日に廃止になったのは羽帯駅のみだった。羽帯駅は十勝平野の農地の中にポツンとあった駅で、周辺を鉄道林に囲まれていた。平成24(2012)年度以降、一日の平均乗車人員が0人という状況が続いていたとのことである。
平成31(2019)年3月16日には根室本線の3駅が廃止。いずれも道東エリアの駅である。このうち尺別駅はかつて炭鉱で栄えた駅で、最盛期には一日に2000人以上が利用したそうだが、廃止時点では一日の平均乗車人員が1.0人という状況であった。ちなみに新垣結衣さん主演の映画『ハナミズキ』のロケ地で、駅近くには主人公の家として撮影に使われた建物が残っている。
令和2(2020)年3月14日には釧網本線と根室本線でそれぞれ1駅が廃止。このうち南弟子屈駅は低気圧によって線路の冠水や路盤流出などが発生した影響で、3月11日より運休しており、そのまま廃止の日を迎えた。廃止後、駅舎は摩周観光文化センターに移設保存されている。
令和3(2021)年3月13日にはこれまでで最多の17駅が廃止。特に廃止駅が多かったのが宗谷本線で、11駅が廃止となった。石北本線では上川エリアを中心に4駅が廃止。オホーツクエリアでも生野駅(表題写真)と釧網本線の南斜里駅が廃止となっている。多くの駅が廃止された分、上川エリアとオホーツクエリアからは利用者0人駅が消滅するなど、一部地域では駅の廃止がひと段落したという印象を受けるダイヤ改正だった。
令和4(2022)年3月12日には7駅が廃止。このうち5駅が函館本線の道南エリアの駅である。このうち流山温泉駅は平成14(2002)年4月27日に開業したJR北海道の在来線で最も新しい駅であった。JR北海道が運営する流山温泉へのアクセス駅として開業したものの、利用の低迷により温泉施設が閉鎖されると存在意義を失い、20年足らずの短い歴史に幕を閉じることになった。
一転して令和5(2023)年3月18日に廃止となった日高本線の浜田浦駅だけだった。7年間で49駅が廃止されたのに加え、留萌本線、石勝線夕張支線、札沼線、日高本線など路線単位での廃止が進んだことで、廃止もやむを得ないような駅自体が減ってしまったこともあるだろう。結果残ったのは、費用を出してまでも存続させる価値があると自治体が判断した駅や少数ながらも定期利用者がある駅のみだ。とはいえ、これらの駅の将来も決して安泰とは言えない。路線単位で廃止となる可能性に加え、通学利用者の卒業や過疎化のさらなる進行によって利用者がさらに減少することもありえるからだ。気になる駅があるなら行ける時に行っておくのが一番だろう。
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