下り線を撤去し棒線化予定 築94年の木造駅舎が残る駅 水郡線 東館駅(福島県東白川郡矢祭町)
茨城県と福島県を結ぶローカル線・水郡線の駅について、下小川駅と東館駅が交換設備を撤去されて棒線化されることがわかった。この2駅のうちこの記事では福島県にある東館(ひがしだて)駅を紹介しよう。
東館駅は昭和5(1930)年4月16日、常陸大子から伸びてきた水郡南線の終点として開業。駅舎は開業時に建てられたもので、築94年。柱や車寄せが淡いピンク色に塗られている。水郡線では近年木造駅舎の改築が相次いでおり、福島県内だけでも、磐城浅川駅・泉郷駅・川東駅がこの10年で改築された。東館駅についても地元の矢祭町が駅前再開発と建替えを計画していたものの、近年は続報を聞かない。
駅舎の入口に掲げられている駅名標には「東舘驛」と筆書きされている。「舘」の字は常用漢字ではないことから、戦後の国鉄およびJRの駅名では替わりに「館」の字が使われているが、地名の方は往々にして「舘」のままということが多い。東舘の場合も地名の標記は「舘」だ。個人的には「ひがしかん」と誤読されないので「東舘」表記の方がよいように思う。
東舘の地名の由来は、その昔、久慈川の東にあったという舘(屋敷)で、明治の町村制までは東白川郡東舘村だった。町村制では東白川郡豊里村となり、昭和30(1955)年3月31日の合併で東白川郡矢祭町となっている。矢祭の地名は、永承6(1051)年、奥州十二年合戦で勝利して平安京に凱旋する途中の八幡太郎義家が、当地で弓矢を岩窟に祀って武運長久を祈願したという伝説に由来するものだ。
駅舎内には簡易委託の窓口が設置されている。簡易委託の場合、駅事務室のスペースを必要としないことから、その空きスペースを改修して、令和4(2022)年3月24日より地域交流施設「ヒガシダテ待合室」として無料開放している。駅を人が集まる場所として活用しようという取り組みで、誰でも利用することができる。
ホームは相対式2面2線で、ホーム間は屋根なし跨線橋で結ばれている。駅舎側が上り常陸大子・水戸方面、反対側が下り郡山方面だ。棒線化に際しては下りホームが撤去されて駅舎側の上りホームに集約される。棒線化で使われなくなる跨線橋やホームはおそらく使用停止されて立入禁止となることだろう。
駅前には時代が止まったかのような駅前食堂が建てられており、木造駅舎ともよくマッチしている。食堂としては既に廃業しており、現在は「wakudoki矢祭」として出張販売などやイベントの場として活用されているそうだ。
築95年の木造駅舎が残り、交流施設として活用されている東館駅。水郡線で途中下車して矢祭町を散策してみるのもいいだろう。交換駅としての姿を見たいならお早めに。