不倫妻から孝行娘まで豹変する女優、菜葉菜。「いまもこのまま役者を続けていけるのか不安があります」
SMの女王様に毒母、孝行娘に脱獄囚、特殊詐欺犯の青年を手玉にとる盲目の女性に不倫妻などなど。
「いろいろな人物を演じ分けるのが俳優」といってしまえばそれまでだが、にしても一作ごとに違った顔を見せて、常に驚かせてくれる。
いま、いやデビュー時から、そのような独自の活躍を見せてくれているのが、菜 葉 菜だ。
バイプレイヤーとしてしっかりと作品にアクセントを加えることもできれば、主演も堂々と張れる。
映画を中心に独自の輝きを放つ彼女のこれまでの歩みをひとつ振り返る特集上映が組まれた。
横浜のシネマノヴェチェントにて開催される「女優 菜 葉 菜 特集」は、彼女の主演作、出演作、そして顔の映っていない作品(?)まで12作品を一挙上映。これまでのキャリアをたどる。
その「女優 菜 葉 菜 特集」は盛況の中、10月1日(日)に無事千秋楽を迎えたが、菜 葉 菜本人に訊く本インタビューはこのまま継続。
ここからは番外編として改めて上映作品とともにこれまでのキャリア、そして今後について彼女に話を訊く。番外編全十回。
いつ役者を続けられなくなってもおかしくないと考える自分がいます
前回(第六回はこちら)は、初主演作「YUMENO ユメノ」で味わった初めての挫折について明かしてくれた菜葉菜。
そこあたりから「役者の仕事、お芝居というものと真剣に向き合い始めた気がします」と語ったが、この時点ではまだこの道でという意思は固まっていなかったという。
「役者の仕事、お芝居というものと真剣に本気で向き合おうとは思いました。
けど、役者の道に骨をうずめるみたいな覚悟まではもっていなかったと思います。
なにか運命的なことがあって、『一生、この仕事を続けていこう』と心を決めたというよりは、小さなことをひとつひとつ積み重ねていった結果、そうなったというか。
もちろん、こんな女優さんになりたいとか、この監督の作品に出てみたいといった気持ちは常にありました。
ありがたいことに、その都度、いい監督、いい俳優さん、いい作品に巡り合うことができました。
そういうことの積み重ねが、この道を続けることにつながった気がします。
『YUMENO ユメノ』のように挫折を味わったことで、二度とこんなことにならないように努力して、次に向かう。
また失敗したら、次、失敗しないよう頑張る。次こそは監督が納得してくれる芝居ができるようになろうとする。
そういうことの積み重ねだったと思います。
以前に少しお話ししましたけど、もともと性格は引っ込み思案で、自分という人間に自信がなかった。
だから、人前で自分の意見を言うようなこともなければ、感情を露わにするようなこともなかった。
どちらかというと爆発するぐらい我慢できないこともぐっと心にとどめてこらえるようなタイプの人間で。
だから、自分の感情を表に出すことがすごい苦手で、演技であっても泣いたり、叫んだりするのがはじめは恥ずかしかった。
お芝居って、演じているとはいっても自分自身という人間を出すところがある。
でも、感情を押し殺すタイプなので、馴れてないから余計に恥ずかしい。
そもそも声を張り上げたり、叫んだことがそれまでの人生でほとんどしたことがないから、どうすれば正解なのかもわからないんですよ。
自分の感情を出すことをしてこなかったので、まずそこから始まったんです。『感情を表に出すにはどうしたらいいか』と。
で、役の上ではあるんですけど、少しずつ感情を表に出すことができるようになる。泣いたり叫んだり、喜んだり悲しんだりできるようになる。
すると、これまで抑えていた感情を表にだすことがこんなに気持ちいいことなのか、自分はこういうときこんな感情になるんだとかわかる。
となると、次はどんなことができるのか楽しみになる。新たなチャレンジをしてみたくなる。
そういう感じでつながっていって、気づけば役者を続けていた。
でも、一方でいまだにこのまま役者を続けていけるか不安があります。
さっき、次はどんなことができるのか、新たなチャレンジをしてみたくなるといいましたけど、これまでは運よくそこにいい出会いが必ず訪れてきてくれている。でも、どこかで途切れるかもしれないという不安がいまだにあります。
だから、いつ役者を続けられなくなってもおかしくないと考える自分がいます。
いまは、作品に恵まれて、作品や監督や共演者のみなさんのおかげで役者として成長させていただいている。
何事も長続きしないタイプのわたしがここまで続けてこれたというのは、この仕事が好きということ。
だから、いつ終わりがくるかわからないですけど、作品に呼んでいただける限りは、わたしは役者を辞めないんだろうなと思っています」
初主演作の監督に再び声をかけていただくということはうれしいものです
では、改めて話を戻して、鎌田義孝監督と17年ぶりに顔を合わすことになった2022年の「TOCKA[タスカー]」について訊く。
鎌田監督との再会はどう受け止めただろうか?
「純粋にうれしかったですね、
初主演作の監督に再び声をかけていただくということはうれしいものです。
特に『YUMENO ユメノ』はお話ししたように、悔いが残ることがあった。
鎌田監督に申し訳ないという気持ちがいまだにある。
また、自分にとって年を経るごとに『YUMENO ユメノ』は、思い入れの強い作品になっていました。
大きな失敗があったんですけど、一方で、あのときにしか出せない自分が一番入っている印象があって。
粗削りで未熟なんですけど、いまのわたしが持ち合わせていないあのとき限りのエネルギーがつまっている。
当初はもっとこうしておけばよかったとか、もっとここはうまくやれただろうとか、反省にばかり目がいっていたんですけど……。
年を追うごとに、見方が変わって。この役に対してのがむしゃさ、一生懸命さ、純粋さがいまの自分にあるだろうかと。それぐらいあのときにしか出せない顔とか、芝居がつまっている。
そう見方が変わって、いまは、いわば自分の原点であり、ひとつの指針をくれるような作品になっている。
だから、鎌田監督にはすごく感謝していて、17年ぶりにお会いできることがすごく楽しみでした。
そして、『YUMENO ユメノ』でご迷惑をおかけしたので、今度は期待に応えたいと思いました」
(※番外編第八回に続く)
【<女優 菜 葉 菜 特集>菜葉菜インタビュー(作品編)第一回はこちら】
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