安足間、瀬戸瀬、緋牛内…一日平均乗車人員3人以下、石北本線の廃止危惧駅
沿線人口の減少や厳しい経営環境ゆえに、毎春ダイヤ改正の度に利用僅少駅の廃止が繰り返されるJR北海道。来春・令和7(2025)年3月ダイヤ改正では、宗谷本線の雄信内駅、南幌延駅、抜海駅と根室本線の東滝川駅の廃止方針が報じられているが、廃止が危惧される駅は旭川と北見地方を結ぶ石北本線にもある。
旭川市の新旭川駅を起点に、上川、遠軽、北見、美幌を経て網走に至る石北本線は、道央と道東を結ぶ主要路線だが、近年多くの駅が廃止・信号場化されてきた「廃駅街道」とも言うべき路線でもある。新旭川方から廃駅・信号場化された駅を並べてみると、北日ノ出、将軍山、愛山、東雲、天幕、中越(信)、上越(信)、奥白滝(信)、上白滝、旧白滝、下白滝(信)、伊奈牛、新栄野、生野、金華(信)、下相ノ内(仮)、美野(仮)、鳥ノ沢(仮)と18駅もある。特に廃駅が多いのが、上川~白滝間の石北峠越えの区間で、間にあった5駅が廃止された現在は、駅間距離が定期旅客列車のある在来線では最長の37.3キロとなっている。
※(信)=信号場、(仮)=仮乗降場
では、そんな石北本線の廃止危惧駅を見ていこう。JR北海道が廃止の目安としている一日平均乗車人員3人以下の駅は、石北本線には3駅。愛別町の安足間(あんたろま)駅、遠軽町の瀬戸瀬(せとせ)駅、北見市の緋牛内(ひうしない)駅だ。いずれも列車の行き違いが可能な駅なので、もし廃止になる場合でも信号場として残る可能性は高い。
安足間駅は愛別町東部・愛山地区の集落にある駅で、駅周辺には公民館、郵便局、レストランなどもある。駅名はアイヌ語の「アンタル・オマ・プ(淵・ある・もの)」に漢字をあてたもので、駅近くを流れる石狩川の淵がその由来であろう。昭和63(1988)年11月3日改築の駅舎は地元住民によって清掃され、筆者が訪問した際には駅前に住む女性が花の世話をしていた。開業は大正12(1923)年11月15日で、昨年百周年を迎えている。一日平均乗車人員は令和3(2021)年度が2.8人、令和4(2022)年度が3.2人で、昨年に廃止検討駅として報じられた42駅のリストにはなかったが、最新の駅別平均乗車人員では「1人以上3人以下」となっている。
瀬戸瀬駅は遠軽町の瀬戸瀬地区にある駅で、駅前には郵便局もある。線路と並行する国道333号沿いに農家・牧場が数軒あって、決して秘境ではないものの廃屋も目立つ。国道333号には遠軽町営バス遠軽丸瀬布線が走っており、本数は一日4往復。対して列車の本数は3往復で、朝昼晩にそれぞれ1往復ずつと言った時刻表だ。一日平均乗車人員は令和3(2021)年度が1.2人、令和4(2022)年度が1.0人。令和3(2021)年3月ダイヤ改正での廃止が検討されたこともあったが、同年4月から遠軽町による維持管理に移行して存続している。とはいえ、利用する学生の卒業に合わせて廃止というのも考えられないことではないだろう。
緋牛内駅は北見市端野町の農村地帯の集落にある駅で、駅周辺には郵便局やコンビニもある。道路建設に囚人が従事させられた歴史を伝える「鎖塚」は駅から1.8キロ。停車する列車は下り10本、上り9本。一日平均乗車人員は令和3(2021)年度は3.0人、令和4(2022)年度は2.6人だった。
これら3駅のうち、一番廃止になる可能性が高いのは乗車人員が1.0人の瀬戸瀬駅だが、市街地にある東滝川駅ですら廃止が検討されるという状況を鑑みるに、安足間駅や緋牛内駅も安泰とは言えない。廃止を免れたとしても自治体管理へ移行する可能性もある。近年の廃止ラッシュで、秘境駅ファンから注目を集めていた駅がごっそり消えた印象のある石北本線だが、今後も目が離せそうにない。
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