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迂回路として電化されるも一部区間が廃止危機 全通100周年を迎える加古川線とはどのような路線なのか

清水要鉄道・旅行ライター
谷川駅で発車を待つ125系

 今日12月27日、兵庫県を走るローカル線「加古川線」が全通から100周年の節目を迎える。大正13(1924)年12月27日、野村(現:西脇市)~谷川間が開業してから今日でちょうど100年だ。

 そんな節目を迎えた加古川線だが、西脇市~谷川間は利用者が少なく、令和5(2023)年度の一日平均通過人員(輸送密度)は275人/日だった。これは近畿地方のJRでは最も低い数字で、JR西日本は関西万博終了後の令和7(2025)年秋を目途に地元自治体と路線のあり方について協議を始めたいとの方針を示している。

 この記事では、存廃の瀬戸際にある区間も含め、加古川線とはどのような路線なのか紹介していこう。

加古川線で活躍する103系
加古川線で活躍する103系

 加古川線は、兵庫県東播磨の中心都市である加古川市の山陽本線加古川駅を起点に、小野市、加東市(旧:加東郡滝野町)、西脇市を経て丹波市山南町の福知山線谷川駅に至る48.5キロの路線だ。全線に渡って加古川に沿って走り、北播磨の足として機能している。沿線の小野市、加東市(旧:加東郡社町)、西脇市では市の中心が駅から離れているが、それなりに沿線人口があるためか、寂れたローカル線ではなく都市近郊路線と言った趣だ。加古川寄りでは朝夕ラッシュ時にそれなりに混雑を見せる。

 その前身は加古川の舟運を鉄道に代替する目的で建設された播州鉄道と、その路線網を譲り受けた播丹鉄道で、その経緯ゆえ加古川に沿って線路が敷かれた。同じく播州鉄道の手によって建設された高砂線・三木線・北条線・鍛冶屋線を支線に持ついわば本線であったが、このうち鍛冶屋線の野村(現:西脇市)~西脇間は実質的には本線の一部として機能しており、逆に野村~谷川間は支線のような扱いだった。

電化前の加古川線で活躍していたキハ40
電化前の加古川線で活躍していたキハ40

 国鉄末期、これらの支線は特定地方交通線に指定され、高砂線と鍛冶屋線が廃止、三木線(三木鉄道を経て廃止)と北条線(現:北条鉄道)が第三セクターに転換されている。

 一方、野村~谷川間は、鍛冶屋線よりも利用者が少なかったにも関わらず、利用者の多い加古川~野村間と一体の路線として扱われたため、存続することとなった。

 生き残った加古川線に転機が訪れたのは平成7(1995)年のことだった。この年の1月17日に発生した阪神大震災は神戸市や阪神間、淡路島に甚大な被害をもたらし、東海道本線と山陽本線も不通となったのだが、この時に迂回路として活躍したのが加古川線である。この経験から存在意義を見直された加古川線は、平成16(2004)年12月19日に全線が電化され、気動車が走るローカル線から電車が走る都市近郊線へと生まれ変わった。

黒田庄駅に到着した125系
黒田庄駅に到着した125系

 こうして面目を一新した加古川線だったが、元々利用者の少なかった脇市~谷川間は厳しい状況が続いた。分割民営化の昭和62(1987)年度当時ですら輸送密度が1,311人程度と国鉄の廃止基準(4,000人)を大きく下回る数字であったのが、コロナ直前の令和元(2019)年度には321人にまで減少。この間には列車の減便も行われているとはいえ、乗客が減ったから列車の本数を減らされたというのが実情に近いだろう。

 ではなぜ、この区間の利用者はこれほどまでに少ないのか。まず挙げられるのは沿線人口の少なさであろう。加古川~西脇市間では沿線に加古川市、小野市、加東市、西脇市とそれなりに大きな街があるのに対し、西脇市~谷川間では西脇市に合併された旧:多可郡黒田庄町くらいしかない。黒田庄町の人口は令和6(2024)年4月1日時点で、6,115人で、西脇市側と山南町側の沿線住民を加えてもこの区間の沿線人口はお世辞にも多いとは言えまい。ここに車社会化の進行や過疎化、少子高齢化と言った要因も加わってくる。

利用促進の看板が立つ西脇市駅(旧:野村駅)
利用促進の看板が立つ西脇市駅(旧:野村駅)

 では通過需要はどうであろう。西脇市駅から加古川線で谷川駅に出て福知山線に乗れば、大阪方面あるいは福知山方面に行くことができる。しかしながらこうした利用は多くない。西脇市駅から大阪駅へ行くなら、遠回りでも加古川駅で新快速に乗り換えた方が早く着く上に、大阪~西脇間では高速バスが高頻度で運転されているのだ。

加古川線の終点 谷川駅
加古川線の終点 谷川駅

 しかしながらこうした状況にJRも手をこまねいていたわけではない。谷川駅で行き違いのために運転停車している特急「こうのとり」を臨時停車させることで加古川線と乗り継げるようにしたのだ。この実証実験は7月1日より開始され、来年2月28日まで期間を延長して実施される。西脇市もまた、加古川線で通学する市内の高校生に駅から学校まで乗れる自転車を貸し出すなど、市民に加古川線を利用してもらうための取り組みを行っており、利用促進に積極的だ。

 存廃を巡り、本格的に話し合いが行われるのは来年秋からだが、やはりカギとなるのは地元がどれだけ鉄道を必要としているかであろう。マイレール意識を醸成し、普段から鉄道を利用する、そして必要であれば上下分離方式の導入などで自治体が税金から費用負担をすることに覚悟を持つ。JR任せにするのではなく、住民や自治体が当事者意識を持って、地域の足について考えることが肝要であろう。

 沿線には播州織で栄えたレトロな街並みが残る西脇市街や、日本へそ公園、岡稲荷神社、聖徳太子ゆかりの石龕寺などの見所があり、播州ラーメンや黒田庄和牛などのグルメも充実している。大阪や神戸から日帰りで気軽に行くことができるところなので、ぜひ加古川線の列車を使って訪れてみてほしい。

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鉄道・旅行ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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