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築48年 現役最古のカプセル駅舎が残る、近畿屈指の利用僅少駅 加古川線 船町口駅(兵庫県西脇市)

清水要鉄道・旅行ライター
船町口駅

 山陽本線の加古川駅を起点に、加古川に沿って播州北東部へと分け入っていく加古川線。加古川駅から西脇市駅まではローカル線にしては利用者が多いものの、西脇市駅から谷川駅までの区間は令和4(2022)年度の輸送密度が237人/日と利用者が極めて少なく、廃止も囁かれるほどだ。そんな区間でも特に利用者の少ない駅が、終点・谷川駅の二駅手前にある船町口(ふなまちぐち)駅である。

 令和4(2022)年版西脇市統計書によれば、令和3(2021)年度の船町口駅の乗客数は4人。うち定期客は4人と、定期外の乗客はほぼゼロという状況だ。

駅舎
駅舎

 船町口駅は大正13(1924)年12月27日、播丹鉄道が野村(現:西脇市)から谷川まで延伸した際に開業。今年で開業百周年の節目を迎える。駅舎は昭和51(1976)年2月に建て替えられた二代目だ。国鉄末期に全国で建てられた「カプセル駅舎」と呼ばれる簡易駅舎で、最初期のものにあたる。

駅舎内
駅舎内

 カプセル駅舎は荒廃した無人駅を簡素で明るい駅舎に建て替えることで、維持費削減とイメージ向上を図ったもので、昭和51(1976)年1月18日に建て替えられた、同じ播州の三木線(のちの三木鉄道、廃止)国包(くにかね)駅が嚆矢であった。国包駅から一か月後に完成した船町口駅は、国包駅なき今、カプセル駅舎としては現役最古の貴重なものだ。

駅舎内
駅舎内

 扉もなく吹きさらしの室内は極めて狭く、長年の風雨による汚れが目立つ。48年前はさぞ未来的に映ったであろう四隅がRになった窓も、今見てみるとレトロだ。

 木造駅舎を駆逐したがために、鉄道ファンからも目の敵にされ、「公衆便所」に例えられた簡易駅舎も年月を経て近年は数を減らしつつある。似たような境遇にある貨車駅舎のようにそろそろ顧みられてもいい頃ではないだろうか。

ホーム
ホーム

 ホームは単式一面一線。短く狭いホームに小さな駅舎、全体的にこじんまりとした雰囲気はJRというよりはローカル私鉄の駅のようだ。戦時中に国有化されたといえど元は私鉄の加古川線には私鉄らしい雰囲気を持つ駅がいくつかある。

 対岸の船町集落
 対岸の船町集落

 駅名の「船町口」は、加古川対岸にある集落「船町」への入口であることに由来する。駅は天狗山と加古川に挟まれたわずかな平地に造られているため、駅前には人家が少ないものの、対岸は比較的大きな集落で、国道139号沿いには喫茶店や焼き鳥屋、たこ焼き屋もある。駅の少し北には加古川と篠山川の合流地点があり、そこからは北は丹波市山南町、駅のある西脇市黒田庄町(播磨国、播州)とは別の国・丹波国だ。とはいえ、険しい地形もない穏やかな風景はあまり国境を感じさせない。

 明治の町村制まで船町は多可郡船町村で、町村制に際して黒田庄村の一部となっている。

船町口駅に到着した加古川行き
船町口駅に到着した加古川行き

 利用者が少なく廃止も噂される加古川線西脇市~谷川間。本数が少なく列車で巡るのは大変だが、各駅やその周辺は魅力に溢れているので、素通りしてしまうのはあまりにももったいない。開業百周年の節目の年に加古川線で駅巡りはいかがだろうか。

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鉄道・旅行ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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