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ワイルドナイツ無敗止まった「教訓」とは?&リーグワン終盤戦ベストフィフティーン【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
ブルーレヴズの献身に屈したワイルドナイツ。写真中のボール保持者はデアレンデ。

 ジャパンラグビーリーグワンはレギュラーシーズン全日程が終了。1部の上位4チームは、プレーオフで日本一を争う。

 本稿では終盤戦5試合における上位4チームの振り返り、第12~16節の私的なべすとフィフティーンを紹介する。

ワイルドナイツ無敗ストップの背景

 最終順位は下記の通り。

 首位のワイルドナイツは、教訓を得た。

 第13節でプレーオフ行きを決めて迎えた第15節で、入替戦脱出を目指していたブルーレヴズに25―44と敗れた。開幕からの連勝が止まった。

 ホストゲーム最終戦でもあったその日は、ブルーレヴズが看板たる強固なスクラムを押しまくった。

 ワイルドナイツでフッカーの坂手淳史主将は言う。

「セットプレーがうまくいかないと、フォワードはそっちの頭になってしまう」

 

 次の攻防の際に気持ちを切り替えられず、向こう接点での推進力、スペースへのキックを引き出したのだという。

 さらにワイルドナイツ側にもやや不用意な反則、ミスがあったことで、2018年12月以来の公式戦黒星を喫したのだった。

 坂手と同じフッカーの堀江翔太は、試合前の状況について反省する。

「なぁなぁになっていたというか、ミスであったり、自分の役目がわからないままでやったりした感じはありましたね」

 翌週のセッションでは、原点に立ち返った。

 緊張感のあるセッションを通し、チームの看板たる防御のポジショニングと立ち位置、接点での動き、スクラムにおける自分たちの形を確認した。

 プレーオフ行きの可能性があったブレイブルーパストの最終節に向け、堀江は戦前から手応えを掴んだ。

「これはいけるなと。ただただ強度が上がるだけではなく、プレーひとつひとつの質、コミュニケーション、取り組む姿勢が見えた」

 果たして当日は、ワイルドナイツらしいゲームを披露した。

 ブルーレヴズ戦で押されたスクラムでは右プロップの平野翔平、ブルーレヴズ戦で欠場したロックのルード・デヤハーが奮闘。球が動き出せば、スタンドオフの山沢拓也がキックバトルを優勢に進めた。

 その流れで敵陣での攻防から反則を誘ったり、選手がアメーバのようにわき上がるカウンターアタックでトライを決めたりし、34―22と快勝。山沢は、正鵠を得る談話を残した。

「皆が、自分の役割を自分のためにやるというより、自分の役割をチームのためにやれていた。そこは、いい結果に繋がった理由のひとつかなと。やっぱり、チームスポーツなので、『自分がよければいい』となり過ぎてしまうのは、よくないかなと」

反省、自信、一体感。

 緊張の糸を断ってはいけない。そう実感したのは、最終節のサンゴリアスも然りだろう。

 スピアーズとプレーオフ行きを決めた者同士の一戦。相手の強さ、重さに苦しんだ前半を5―10で耐え、スタミナで上回りつつあったと見るや徐々に加点。スピアーズが2人の一時退場者を出すなか、後半21分に24―15とリードした。

 しかし、ここで「ソフトになった」とフルバックの松島幸太朗。25分。ふたり少ない相手に簡潔なボールキープから失点した。

 結局、スピアーズが39―24で勝利。サンゴリアス陣営は展開力と持久力にこそ手応えを掴むも、スピアーズ側も自信をつけた。インサイドセンターの立川理道主将は言う。

「苦しい時間帯で、かなり追い込まれるというか、相手ペースになりかけた部分もありましたけど、13人でスコアできたのが大きい。皆、ひとつになって何をするかがわかっていた。FWがハードワークしてくれたことをうまくリードできたことは、これから先のプレーオフへもいい収穫になりました」

 両軍は14日、プレーオフ準決勝でぶつかる。その前日の13日には、ワイルドナイツに4位のイーグルスが挑む。

 最終節の直前にその切符を勝ち取ったイーグルスは、シーズンを重ねるごとに進歩を実感。雨天下でおこなわれたスピアーズとの第12節を5―15で落とすも、サンゴリアスとの第15節では接点で奮闘して9―11と接近。勝ち点1を奪った。

 それ以外の試合でも勝ち点を5ずつ、もぎ取っており、組織的な連続攻撃、試合ごとに織りなすスペシャルプレーは注目の的となる。インサイドセンターの梶村祐介主将は、自分に言い聞かせる。

「何をするにしても、チームとして動く。そこに集中したい」

参考資料

 リーグワン終盤戦における選手たちの肉声は、こちらでもお読みいただけます。

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<リーグワン1部・第12~16節私的ベストフィフティーン>

1,稲垣啓太(ワイルドナイツ)

写真:西村尚己/アフロスポーツ

 タックルのインパクトと本数。勝負どころでのスクラム。

2,マルコム・マークス(スピアーズ)

写真:つのだよしお/アフロ

 スクラムで軸をなし突進でも際立つ。自陣ゴール前で好ジャッカル。

3,伊藤平一郎(ブルーレヴズ)

(写真提供=JRLO)
(写真提供=JRLO)

 低い一枚岩のスクラムを作り、相手の塊を壊す。ワイルドナイツ戦勝利。

4,ルアン・ボタ(スピアーズ)

写真:つのだよしお/アフロ

 怪我から復帰し、得意技のチョークタックルを連発。モールでも軸となった。

5,ルード・デヤハー(ワイルドナイツ)

写真:つのだよしお/アフロ

 突進、ロ―タックルで攻防のシステムを円滑化。敗れたブルーレヴズ戦は欠場していたとあり、存在感がかえって際立った。

6,姫野和樹(ヴェルブリッツ)

(写真提供=JRLO)
(写真提供=JRLO)

 チームの復調を先導。カバー防御、ジャッカル、突進を重ねた。

7,ラクラン・ボーシェ(ワイルドナイツ)

写真:つのだよしお/アフロ

 ブルーレヴズ戦は不完全燃焼も、前後のゲームで好守連発。ターンオーバーを決める力。

8, リーチ マイケル(ブレイブルーパス)

(写真提供=JRLO)
(写真提供=JRLO)

 突進、タックル、ジャッカル。八面六臂の活躍。

9,ウィル・ゲニア(ライナーズ)

写真:つのだよしお/アフロ

 劣勢局面においても相手の隙を突くキックで魅する。初勝利を挙げた第15節ではスクラムサイドからの鋭いラン、敵陣ゴール前での好配球で光った。

10,ウィリー・ルルー(ヴェルブリッツ)

(写真提供=JRLO)
(写真提供=JRLO)

 要所での50・22キック。ゲインライン付近でのゲームメイク。

11,木田晴斗(スピアーズ)

写真:つのだよしお/アフロ

 ボディバランス、加速力、決定力。

12,ダミアン・デアレンデ(ワイルドナイツ)

(写真提供=JRLO)

(写真提供=JRLO)
(写真提供=JRLO)

 突進力、オフロードパス、防御。

13,ジェシー・クリエル(イーグルス)

写真:YUTAKA/アフロスポーツ

 カバー防御、強さと速さを活化したチャンスメイク。

14,髙橋汰地(ヴェルブリッツ)

(写真提供=JRLO)
(写真提供=JRLO)

 ハイボールキャッチ、ラン、自陣から駆け上がってのキック。

15,松島幸太朗(サンゴリアス)

写真:つのだよしお/アフロ

 蹴り合いの際のロングキック、勝負どころでのカウンターアタック。

参考資料

 各節の私的ベストフィフティーンは、有料版にて掲載しています。詳しくは下記をご参照ください。上記に挙げられなかった選手も数多く掲載させていただいています。また、上記選手が必ずしも毎回「ベスト」に挙がるとは限らないこともわかります。

 裏を返せば上記15名は、5試合を通して安定したパフォーマンスを披露していたと言えます。

リーグワン1部・第12節私的ベストフィフティーン

リーグワン1部・第13節私的ベストフィフティーン

リーグワン1部・第14節私的ベストフィフティーン

リーグワン1部・第15節私的ベストフィフティーン

リーグワン1部・第16節私的ベストフィフティーン

 第1~5節の振り返りはこちらをご確認ください。

リーグワン1部第1~5節に見られた傾向は?&全5節私的ベストフィフティーン【ラグビー雑記帳】

 第6~11節(交流戦)の振り返りはこちらをご確認ください。

リーグワン混戦の裏側&交流戦ベストフィフティーン【ラグビー雑記帳】

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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