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日本代表・中村亮土、ヌートバーWBC活躍のどこに共感した?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
サンゴリアスの背番号12をつけ八面六臂の活躍(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 話題を独占する。

 野球の世界大会であるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が日本代表の優勝で終わったとあり、新聞、テレビ、インターネットでは野球のトピックスが渦巻く。

 似たようなことが、他競技でもあった。

 2019年秋。ラグビーのワールドカップ日本大会で日本代表が初の8強入り。複数の国の選手が一丸となるさまが注目され、チームスローガンの『ONE TEAM』はその年の流行語となった。

 ウイルス禍前最後の祭典といえるこの舞台に出た選手の多くは、もう次の大会を見据える。

 ワールドカップフランス大会を今秋に控え、それぞれの所属先で国内リーグワンを戦う。

 東京サントリーサンゴリアス所属で日本大会の全5試合に出た中村亮土は、こう話す。

「昨日、練習から帰ると、公園で子どもたちがバットとボールを持っていた。その公園では、初めて見たんですよ、野球している子を。ほほえましく思いました。それを、ラグビーに変えたい。2019年(ワールドカップ日本大会で初の8強入り)もそういう状況だったし、皆が日常のなかでラグビーボールを持って遊んでいる状況を作れるよう、頑張りたいなと思いました」

 日本時間3月22日。WBCの決勝戦で「二刀流」の大谷翔平が三振を取り、3―2でアメリカ代表を破ったその瞬間、サンゴリアスは全体練習をしていた。中村は全てを終え、個人練習に移る合間に、その結果を知った。

 自主的にゴールキックを蹴り込んだ後に、取材陣に対応。まずはサンゴリアスの話題に触れる。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——シーズン終盤戦。プレーオフ進出争いが佳境に入りました。どんな意識でいますか。

「自分たちのスタンダードを持って、いいアタックを仕掛けて、ディフェンスもアグレッシブに…と。また、ゲームのバランス(蹴るか、攻めるかの)を考えながらトレーニングしていく感じです。これから(優勝争いで)戦うチームはディフェンスが強くなる。そこで自分たちのラグビーができるよう、準備している」

——サンゴリアスは新体制でスタートしました。OBの田中澄憲監督が就任。攻めまくるスタイルを涵養しています。

「軸ができた。自分たちはこういうところで戦わなければいけない。それが明確になった。アタック、ディフェンスとも、オフ・ザ・ボール(球を持たない時の動き)はどの選手もハードにおこなわなければいけない」

——それを体現するにはより走り、意識を研ぎ澄ませる必要があるのでしょうか。

「それによって競争が出てきて、刺激し合って、いい感じになってきています」

——勤勉であろうという意識は、前年度にもありました。ただ、今季はそれとも一味違うような。

「いままで出ていなかったメンバーが試合に出て活躍している。出られない選手のモチベーションが、高い状態であります。そこら辺は、(前年度までと)違うのかなと。僕も1回、ノンメンバー(その週の試合に出ない選手)の練習に加わりましたけど、活力がありました」

——選手起用のマネジメントが変わったのでしょうか。

「と、思います。皆が皆、満足のいくようにはならないですが、変なストレスはないのかなと」

——公式ホームページのインタビューでは、前指揮官とは練習試合を組むかどうかでも選手と意見が一致しづらかった旨が記されています。

「はい。そういうことは、いまは、ないですね」

——これからの試合で大事にしたいことは。

「ボールを持っていない時の動きと、ゲームを読むこと。ひとりの選手としても、チームのゲームコントローラーとしても、です」

——読む、ないしは予測する。日本代表のトニー・ブラウンアタックコーチが目下、実施している選手とのミーティングでも重要視されているようです。

「ゲームを予測するところは、一貫して言われています。これは、どの選手も伝えられているんですかね。先を読んで、予測して、プレーしよう…。そこは僕の強みでもあると思うので、違いを見せていきたいです」

——改めて、WBCの話題に触れたいと思います。

「ただただ、楽しませてもらったというか、凄いなと思いました」

——好きな選手は。

「(ラーズ・)ヌートバー選手です。皆さんが思うのと同じで、気迫がこもっていて、がむしゃらにプレーしているのには刺激を受けました」

——WBCに出る日本代表で初の日系人選手です。ラグビー界では国外出身者が代表になるのがより一般的です。

「僕らにとっては普通かもしれないですが、海外から来た選手が日本のために戦って、日本を引っ張って、日本を大事にしているのは嬉しかったです」

——他国の選手とひとつのチームを作る。大切なことは何なのでしょうか。

「お互いのカルチャーを知って、理解し合うことが大事だと思う。今回のヌートバー選手も日本をリスペクトしていて、チームになじもうとして、周りの日本人の選手も受け入れようとしていたみたいです。リスペクトしあう。その、かかわり方が大事なのだと思います」

 中村は日本代表に2013年に初選出され、ワールドカップに初出場する2019年までの間には代表強化を支えたサンウルブズにも参戦。多国籍軍を作り、世界を転戦した。

 様々な概念の異なるメンバーとひとつのチームを作る難しさ、楽しさを知り、現在も年下のリーダーを支える。身長181センチ、体重92キロの31歳はこの秋、持ち前の技巧と献身と「予測」で列島を盛り上げる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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