Yahoo!ニュース

怪我から約9カ月でサム・ケレビ激白。「プレーする限りは100パーセント」で【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
(筆者撮影)

 ラグビーのオーストラリア代表で、2019年から日本の東京サントリーサンゴリアスでプレーするサム・ケレビは、現在、昨夏に7人制オーストラリア代表の活動中に負った怪我からの復帰を目指す。

 母国、日本での懸命なリハビリの末、4月17日以降はチーム練習に戻れるかもしれない。11日、都内での全体練習に部分参加し、取材に応じた。

 身長187センチ、体重110キロの29歳。力と速さを活かした突破、ハンドリングスキルの高さに加え、広い守備範囲でも魅する。15人制のオーストラリア代表としては、2019年のワールドカップ日本大会などに出場した。

 日本でもグラウンド内外で貢献。昨季のリーグワンでベストフィフティーンに輝いたうえ、ともにオフロードパスの練習を重ねた中野将伍は日本代表となった。

 サンゴリアスは現在、レギュラーシーズンを残り2試合として12チーム中3位。15日に神奈川・日産スタジアムで4位の横浜キヤノンイーグルスに勝てば、4強からなるプレーオフへ進める。復帰が待たれるケレビの心境は。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——ご自身はいまどんなコンディションか。

「順調です。日本に戻り1カ月が経ちましたが、練習にうまく戻れています。来週から降るトレーニングに復帰します。少しずつ選手との連携を深めながら…という感じです」

——仲間がボールを追いかけている間、ご自身がプレーできなかませんでした。どういう心境でしたか。

「もちろんプレーしたい気持ちはあります。ただ、自分のリハビリにじっくり、忍耐強く向き合うしかない。(手術から)8カ月が経とうとしていますが、自分の身体を使っていくことに少しずつ自信をつけながら、取り組んでいます。プレーができる時は、全身全霊を込めてプレーできるよう、恐怖心がない形でプレーできるようにしたい。時間がかかってしまうとは思いますが、自分の身体、心、感覚を大事にしながらやっていきたい」

——以前、これほど競技から離れたことはありますか。

「オペから8カ月。離れていた期間はそれよりも長いです。最後にプレーしたのは昨年7月になりますか。なかなか、長いですね。しかしラグビーの感覚を失うことはない。それまで(第一線で)9年間、幼い頃からのことを考えたらそれ以上、プレーしています。私としてはラグビーの楽しさを忘れることなくいれば、他の部分は自然とついてくる」

——雌伏期間に成長した点は。

「最初の2か月ほど、ラグビーから離れる時間を作りました。自分の家族との時間に集中した。プロの選手はラグビーに費やす時間がかなり多くなる。特に、毎週、毎週、プレーしているとそうです。

 実は、怪我の功名と思うこともある。心を安らげる時間ができる。それがあることで、復帰したらもっと頑張りたいとドライブする気持ち、自分史上最高のラグビーができるような気持ちを抱ける。怪我をした時、怪我をする前のサム・ケレビに戻ろうとは思っていませんでした。以前よりもさらによいバージョンのサム・ケレビになるのが目標です。フィジカル、メンタルともにです」

——サンゴリアスは今季から、攻め方が変わっています。

「前回サンゴリアスでプレーした時からかなり変わっています。フォワードがキャリーする機会が増え、バックスもよりチャンスに絡む。新しいシステムに自分から慣れていくことと、トレーニングに絡んでいく意識で過ごしたいです」

——復帰戦のターゲットは、リーグワンのプレーオフでしょうか。

「クリアなターゲットはなかったのですが、リハビリを進めるなかでスケジュールもクリアになってきた。身体の調子もよく、心も安定してきている。ただ我慢強く、フルで自信がつくまで…と、捉えています。プレーする限りは100パーセントをチームにささげたい。ただプレーするためだけのプレーは、したくない。(復帰戦のタイミングは)まだ決めていない」

——少なくともファンは、シーズン終盤の復帰を期待しています。その状況についてどう思いますか。

「期待値は、サンゴリアスのどの選手にもあると思います。決勝に進むこと、優勝すること。それをプレッシャーと捉えず、そこまで進む特権がある、と捉えています。チーム全員の責任です。選手、スタッフ、食事を作ってくれる食堂の皆さん、栄養士、全員が責任を果たさないといけない。毎日、毎日、チームも、個人も成長するのが大事です」

——今年は15人制のワールドカップがフランスであります。オーストラリア代表のエディー・ジョーンズ新ヘッドコーチと話すことはありますか。

「はい、何度か。ただ現状、フォーカスするのはサンゴリアス。エディーの件は、時が来たらついてくる」

 就任1年目の田中澄憲監督は、ケレビの復帰へは慎重な構えだ。

「(練習に部分参加する)いまはどちらかというと、想定した動きができる。ただ、ラグビーは想定されない動きが一番、大変。相手があってのところです。それも含めてどれくらいやれるかは来週(の動きを)見てから。そして、来週できたからといっていきなり試合に出られるかというと、彼自身もそこまで自信はないと思います」

 本人の実力を踏まえて「メンバーにいてくれたら助かります」としながら、「まだチーム(練習)にすべて入っているわけではない。そこだけを当てにすると(よくない)」。現有戦力で優勝を狙うのを前提とする。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事