Yahoo!ニュース

キャンパスの都心移転か、それ以外か~教育広報担当者が知ると得する話・17

石渡嶺司大学ジャーナリスト
(写真:イメージマート)

◆大学の都心回帰は学生集めで有効

7月26日公開のビジネスジャーナル記事「東洋大学、都心回帰で志願者10万人超え、私大4位…日東駒専の中で一人勝ち」で取材協力・コメントを出した。

この都心回帰ネタ、新聞でもネットメディアでもよく出るネタである。

大学関連で分かりやすいネタと言えば志願者動向だ。ただ、単に増えた、減った、というだけでは面白くない。

そこで都心回帰ネタを絡めると、経済関連の記事にもなるので読者が付きやすい。

それで、大学ジャーナリストの小生に取材協力やコメント依頼が来る。

それはいいのだが、この都心回帰ネタ、若干、やりづらい。

というのも、ビジネスジャーナル記事の見出しにあるように、都心回帰ネタで勝ち組として必ず登場するのが東洋大学である。

この東洋大学は小生の出身校であり、下手なコメントを出せば「身びいきか」と言われかねない。

とは言え、客観的に言っても、東洋大学は都心回帰で志願者数を大幅に伸ばしたことは事実である。

さて、このように新聞やネットメディアでよく取り上げられるくらい、大学の都心回帰は注目されている。

そして、東洋大学以外でも都心回帰が進んでおり、志願者増加につながっている。

◆跡見学園女子大学は2024年に激減

ただ、都心回帰が全部うまく行っているか、と言えばそうではない。

跡見学園女子大学は2008年に文京区大塚に文京キャンパスを開設。以降、1・2年生は埼玉の新座キャンパス、3・4年生は文京キャンパスで学ぶようになった。

2011年には大学本部を文京キャンパスに移転し、受験情報誌などでは埼玉県ではなく東京都の大学、という扱いになっている。

2020年には志願者数が5031人まで伸びた。しかし、コロナ禍で低迷し、2024年は1081人と激減している。

女子大の不人気や学部構成なども影響した、と思われる。

それと、2024年は学習院女子大学の人気上昇(2023年・1425人→2024年・2486人)で割を食った、とも言える。なお、これは学習院女子大学が学習院大学と統合することを発表したからに他ならない(2026年には自動的に学習院大学に転籍)。

跡見学園女子大学の場合、1・2年生が埼玉県、3・4年生が東京都、と分かれていることが一番の敗因であろう。

4年間が文京キャンパスならまだしも、2年間は埼玉県と言われるとどうか。神奈川県や千葉県の志願者からすれば「2年間は埼玉か」とネガティブに考えてしまう。

いくら都心回帰が有効、と言っても中途半端だと意味がないことを示している。

◆高騰する建築費に耐えられるか

それに、都心回帰が大学の志願者増加の切り札であるにしても、問題はそのコストだ。

キャリアセンターを置く程度のサテライトオフィスなら、適当なビルを1フロア抑えれば済む。

しかし、都心キャンパスとなると、相応の土地が必要だし、建設費用もかかる。特に建築費が高騰している昨今では、100億円単位か、それ以上の大プロジェクトとなる。

小生は大学経営に全く責任のない外部の人間(というか、単なるフリーランス)なので、気楽な発言はいくらでもできる。

しかし、大学の経営幹部やそれに近い広報担当者からすれば「そんな、簡単に都心キャンパスと言われても困る」と考えるはず。

◆以下、有料公開部分となります。

◆OCで散々やっている策を日常でも
◆路線乗り継ぎの手間が省ける


※無料公開部分1200字・有料公開部分の文字数1600字/合計2800字

学校・教育機関広報担当者向けシリーズ・バックナンバー

鶴見大学VS週刊文春のプレスリリースを勝手に添削~教育広報担当者が知ると得する話・1(2023年3月12日公開)

侮辱・不適切動画が出た学校はどうする?~教育広報担当者が知ると得する話・2(2023年3月16日公開)

「近大ばかりえこひいきして」に反論したい~教育広報担当者が知ると得する話・3(2023年3月31日公開)

「プレスリリースで送るほどのものがない」と嘆く前にできること~教育広報担当者が知ると得する話・4(2023年4月25日公開)

前提を揃えないと専門学校並みに信頼性が落ちる/美作大学が微妙な件~教育広報担当者が知ると得する話・5(2023年5月4日公開)

記者が異動したら/「教育担当部署には送りました」~教育広報担当者が知ると得する話・6(2023年6月24日公開)

食べ物・グッズネタは小ネタだから記事にならない、というウソ~教育広報担当者が知ると得する話・7(2023年7月19日公開)

オープンキャンパスではオシャレスポットに日常を~教育広報担当者が知ると得する話・8(2023年8月28日公開)

石渡が高校講演で長崎国際を出して東北主要私大を紹介しなかった理由~教育広報担当者が知ると得する話・9(2023年9月26日公開)

分野別ガイダンスをパスする余裕などないはずなのに~教育広報担当者が知ると得する話・10(2023年10月31日公開)

「就職」売りはインフレ状態に~教育広報担当者が知ると得する話・11(2023年11月30日公開)

女子大のIT系学部はなぜ低迷してしまうのか~教育広報担当者が知ると得する話・12(2023年12月31日公開)

SNS投稿は受験生集めにつながるのか~教育広報担当者が知ると得する話・13(2024年1月31日公開)

園田学園女子大学の共学化プレス対応が外している理由~教育広報担当者が知ると得する話・14(2024年3月30日公開)

「女子」を残したままの共学化は意味がない~教育広報担当者が知ると得する話・15(2024年4月30日公開)

新設大学・学部の定員充足率が言葉足らずで微妙に損する件~教育広報担当者が知ると得する話・16(2024年5月31日公開)

※以下、有料公開部分です

この記事は有料です。
教育・人事関係者が知っておきたい関連記事スクラップ帳のバックナンバーをお申し込みください。

教育・人事関係者が知っておきたい関連記事スクラップ帳のバックナンバー 2024年7月

税込550(記事1本)

※すでに購入済みの方はログインしてください。

購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。
大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計33冊・66万部。 2024年7月に『夢も金もない高校生が知ると得する進路ガイド』を刊行予定。

石渡嶺司の最近の記事