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ここ3年に95本塁打の一塁手を3年6000万ドルで迎え、生え抜き三塁手との再契約は消滅か

宇根夏樹ベースボール・ライター
クリスチャン・ウォーカー Apr 23, 2024(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今オフ、クリスチャン・ウォーカーは、アリゾナ・ダイヤモンドバックスからFAになった。来シーズンからは、ヒューストン・アストロズの選手としてプレーするようだ。ESPNのオールデン・ゴンザレスらが、3年6000万ドル(2025~27年)の契約で合意、と報じている。

 ウォーカーは、ここ3シーズンに95本のホームランを打っている。2022年が36本、2023年が33本、2024年は26本だ。直近の2024年も、30試合以上の欠場がなければ、30本塁打に届いていたのではないだろうか。出塁率は、3シーズンとも.330前後。一塁を守り、3シーズン続けてゴールドグラブを受賞している。年齢は、来年3月に34歳の誕生日を迎える。

 アストロズは、一塁手を必要としていた。2年前のオフに3年5850万ドル(2023~25年)の契約で迎え入れたホゼ・アブレイユは、契約1年目の不振に続き、2年目の2024年はさらに打てず、アストロズは6月中旬にアブレイユを解雇した(「3000万ドルの支払いが残るスラッガーを解雇する。30本塁打以上が5度、打点王2度、4年前にMVP」)。代わって一塁を守ったジョン・シングルトンも、シーズン全体の119試合で打率.234と出塁率.321、13本塁打、OPS.707。レギュラーには物足りない。

 ウォーカーの加入により、アストロズが三塁手のアレックス・ブレグマンを呼び戻す可能性は、完全に消滅したと見ていいだろう。ブレグマンは、2015年のドラフトで全体2位指名を受け、今オフにFAとなるまで、アストロズ一筋にプレーしてきた。

 MLB.comのブライアン・マクタガートは、今月初旬に「情報によると、今週、アストロズはブレグマンに約1億5600万ドルの6年契約を申し出た」「けれども、ブレグマンが望んでいるのは2億ドル近い契約だと思われる」と報じた。

 その後、アストロズは、1対3のトレードにより、外野手のカイル・タッカーをシカゴ・カブスへ放出した。タッカーも、それまでは生え抜きの外野手としてプレーしてきた。ブレグマンと同じ2015年のドラフトで、アストロズから全体5位指名を受けた。タッカーは、来オフにFAとなる。

 タッカーと交換にアストロズが獲得した3人のなかには、三塁手のイサック・パレイデスが含まれているが、この時点では、ブレグマンと再契約を交わし、パレイデスを一塁に回すこともできなくはなかった。だが、ウォーカーが加わり、内野に空きはなくなる。一塁がウォーカー、三塁がパレイデス、二塁と遊撃の併殺デュオは、ホゼ・アルトゥーベジェレミー・ペーニャだ。DHには、ヨーダン・アルバレスがいる。

 アストロズは、三塁手のノーラン・アレナード(セントルイス・カーディナルス)をトレードで獲得することもないはずだ。こちらについては、アレナードがトレードを拒むつもり、と報じられていた(「341本塁打の三塁手がトレード拒否権を行使!? 8年連続ポストシーズン進出の球団に行きたくない理由は」)。アレナードの意向がウォーカーとの契約を後押しした、という見方もできる。

 一方、ウォーカーがFA市場から姿を消すことで、ピート・アロンゾの人気は高まるかもしれない。彼らは、どちらも一塁を守る右打者だ。パワーに関しては、アロンゾがウォーカーを凌ぎ、ここ3シーズンに打ったホームランは、ウォーカーより25本も多い。

 アロンゾとウォーカーについては、こちらで比較した。

「FAの一塁手トップ2は、ここ3年に平均40.0本塁打と平均31.7本塁打。契約を交わすなら…」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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