「就職」売りはインフレ状態に~教育広報担当者が知ると得する話・11
◆「就職」はインフレ・売り手市場で無意味にも
就職を売りにする大学は多い。
というか、私立大学で就職を売りにしない大学はほぼないだろう。
もっと言えば、大学以外でも短大、専門学校、いずれも「うちに来れば就職できる」と宣伝しないわけがない。
「うちは就職できない」「うちに来ても学費の払い損になる」と宣伝する大学や短大・専門学校があればお目にかかりたいものだ。
ところが、大学の宣伝を見ていくといまだに就職をアピールポイントにするところが多い。
さすがにやめるべき、とまでは言わない。
就職状況を気にする受験生や保護者が多いのは事実だ。
ただし、他大学も似た状況である以上、インフレ気味であることは事実として受け止めるべきである。
それと、2010年代前半から就職状況は学生有利の売り手市場が10年以上も継続している。
この点も、就職がアピールポイントとしての効果を薄れさせる一因になっている。
◆自信のない大学ほどまとめたがる
それでも、就職を売りにすることは大学からすれば(短大・専門学校もだが)やめられない。なんだか、チキンレースの様相もあるが。
もしも、就職を売りにする、ということであれば3点、お伝えしたい。
1点目は、年度別の就職先・業界を丁寧に伝えることだ。
これは1990年代からほぼパターン化している。
すなわち、情報公開をきちんとしようとする大学、就職実績がすぐれている大学(ほとんどはこの2点は重複する大学が多い)は、単年度別の就職先・業界をきちんと公開している。
就職実績に自信のない大学ほど、複数年でまとめたがる。
さらに、ひどい大学だと「主な就職先」でひとまとめにしてしまう。
こうした手口はいまや、広く知られるようになった。
仮に、気付かない高校生や保護者であっても、入学後に気付くと、失望することになる。当然ながら、対後輩あるいは地域での評価は大きく下げることになる。
仮に最新年度での就職状況がかんばしくない、としても、きちんと公開するべきだ。
◆無名企業でも優良企業の存在のアピールを
2点目は就職先について、だ。
就職事情を知らないまま広報担当となった職員(または教員)だと、「有名企業への就職=アピール材料」「無名企業への就職=宣伝にならない」と簡単に考えてしまう。
以前、某大学の広報担当教員が「うちは知名度が低い企業にしか就職できなくて」と嘆いていた。
その知名度の低い企業とは、単に一般消費者には知名度が低い、というだけで、BtoBでは優良企業が就職先として並んでいる。
学生が頑張って優良企業を見つけて就職できているのに、その努力を広報担当者が否定してしまうのは不幸以外の何物でもない。
もちろん、就職のパンフレットでない以上、企業の細かい説明を加える必要はないだろう。
とは言え、一般に知名度がなくても業界内で有名な企業であれば就職先一覧には掲載した方がいい。
見る人が見ればその大学の就職実績の高さを評価するからだ。
どの企業を就職先一覧に掲載するかは就職担当の部署や『日経業界地図』『会社四季報業界地図』などを参考にしながら検討していくといいだろう。
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