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園田学園女子大学の共学化プレス対応が外している理由~教育広報担当者が知ると得する話・14

石渡嶺司大学ジャーナリスト
(写真:イメージマート)

◆女子大の共学化、相次ぐ

昨年、恵泉女学園大学が募集停止を発表した後に、「女子大氷河期サバイバル~私立女子大67校の未来像をデータから検証」(2023年3月25日公開)という記事を出した。

タイトル通り、67校の女子大の2022年データをまとめたものである。Yahoo!トピックス入りはしなかったものの、関連記事が他媒体で出たほか、女子大関連のイベント・研修会などにやたらと呼ばれることになった。

さて、この記事で恵泉女学園大学と同じ水準(2022年時点で一般入試倍率が1.5倍以下、入学定員充足率が70%以下)だったのが13校であり、危険水域にある、と指摘。

さらに、安全水域にある23校を除いた中間層31校も含めて、「学部新設を含む規模の拡大か、それとも共学化か、あるいは廃校・他校との統合か」いずれかを選択、とも指摘した。

その後、どうなったか。

まず、危険水域にある、とした神戸海星女子学院大学が4月に募集停止を発表。

東京家政学院、名古屋女子、神戸松蔭女子学院の3校は2024年に入り、相次いで共学化を発表した。

さらに、中間層の園田学園女子大学も共学化を発表している。

今、改めて読み返すと、園田学園女子大学は2022年の入学定員充足率が63.0%。倍率が2.1倍だったので危険水域には入っていないが、限りなく近かった。

記事、というよりもデータの通りになったわけで、今後も危険水域の残り9校含め、女子大は共学化か、募集停止か、厳しい選択を迫られることになる。

◆すぐ記事になった3校に離された園田女子

さて、共学化を発表した4校だが、明らかな差が付いてしまった。

名古屋女子:2024年2月16日に公表→同日、共同通信/2月17日・中日新聞/3月13日・中日新聞(学長インタビュー)

神戸松蔭女子学院:2024年3月1日に公表→同日、神戸新聞など

東京家政学院:2024年3月8日に公表→同日、読売新聞→3月11日に15日記者会見をプレスリリース→15日の会見後にNHK

3校とも、共学化を公表後、すぐ記事になっている。

一番の当たりは名古屋女子大学で公表から1か月後、地元の中日新聞で学長インタビューが掲載された。

共学化の意義についてきちんと答えているわけで、名古屋女子大学からすれば、格好の宣伝となった形だ。

では、残る園田学園女子大学は、と言えば、実はまだどこも記事にしていない。

理由は簡単だ。

園田学園女子大学側が取材を断っているからである。

◆3月1日に公表も記者会見は4月下旬

園田学園女子大学は3月1日に「共学化の決定について」で共学化を公表した。

このリリースの下に「報道各位」と、報道関係者向けのコメントがある。

現在、文部科学省への届出準備を進めている段階のため、大学名称および大学3学部5学科の名称変更等を含む今回の改革構想についての詳細は、4月下旬に開催予定の記者会見にてお伝えさせていただきます。
本日の発表は、在学生および保証人、入学予定者、受験生、教育関係者への事前周知を目的としたものであり、現時点でお伝えできる情報が限られますため、共学化に関する現時点での報道各社への取材対応は記者会見にて対応させていただきます。何卒、ご理解いただけますようお願い申し上げます。
※園田学園女子大学サイトより

要するに、4月下旬に記者会見をやるので、それまでは取材対応は市内、という事実上の取材拒否宣言である。

新聞やテレビメディアは情報の裏取りをすることが大前提となる。大学の共学化であれば当然ながらその大学に取材をかける。

その際に取材を断ると、メディアとしては報道することができない。

園田学園女子大学とメディアのやり取りは知る由もないが、おそらくは「プレスリリースにだした通り」「詳細は4月の記者会見で」を繰り返したに違いない。

大規模校であれば、これでも記事にしたかもしれないが、小規模校だと、メディアも構ってはいられない。

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◆タイムラグがもったいない
◆きちんと人員配置をできない幹部も責任
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大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計33冊・66万部。 2024年7月に『夢も金もない高校生が知ると得する進路ガイド』を刊行予定。

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