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女子大のIT系学部はなぜ低迷してしまうのか~教育広報担当者が知ると得する話・12

石渡嶺司大学ジャーナリスト
(写真:イメージマート)

◆IT系学部の新設、相次ぐ

2020年代以降、各大学でIT系学部の新設が相次いだ。

2024年も富山県立大学情報工学部、下関市立データサイエンス学部、周南公立大学情報科学部、高知工科大学データ&イノベーション学部、千葉工業大学情報変革科学部、同・未来変革科学部、明治学院大学情報数理学部、椙山女学園大学情報社会学部、ノートルダム清心女子大学情報デザイン学部、西九州大学デジタル社会共創学部などが新設予定だ。

下関市立大学と周南公立大学は同じ山口県で同系統学部を新設。しかも、前年の2023年には山陽小野田市立山口東京理科大学が工学部数理情報科学科というIT関連の学科を開設しており、乱立状態となってしまった。

もっとも、IT業界の人材不足はコロナ禍前からであり、コロナ禍でさらに加速することとなった。IT系学部が増えても、就職難になる可能性は今のところ、極めて低い。

そもそも、IT業界でなかったとしても、IT人材を欲しがる業界・企業は多数ある。

その点で、IT系学部・学科の急増について、私は楽観的だ。

◆女子大のIT系学部・学科、なぜか苦戦

一方、IT系学部がどこも順調か、と言えばそんなことはない。

特に、女子大ではなぜか苦戦が目立つ。2023年の一般入試倍率では、十文字学園女子大学社会情報デザイン学部1.2倍、日本女子大学理学部数理情報科学科1.8倍、椙山女学園大学文化情報学部1.4倍、京都女子大学データサイエンス学部1.9倍など。

倍率2.0倍以上だと、大妻女子大学社会情報学部2.4倍、同志社女子大学学芸学部メディア創造学科3.0倍、武庫川女子大学社会情報学部2.2倍の3校のみだった。

十文字学園女子大学は2021年までは入学定員充足率が80%を超えていたものの(2019年・2020年は100%超)、2022年が47.7%、2023年が38.5%と大幅な定員割れを起こしてしまった。その結果、定員減を予定している。

就職の需要があって共学校では人気学部となるケースが多いにもかかわらず、女子大ではなぜ不人気となってしまうのだろうか。

◆オープンキャンパスで見える不人気の理由

その理由について、2023年のオープンキャンパス見学で明らかになった。

2023年には対面のオープンキャンパスが解禁したこともあり、私も複数校のオープンキャンパスを見学した。

なお、コロナ禍以前は自由参加だったので、好き勝手に回っていたが、2023年は対面復活と言っても、事前申し込み制のところがほとんど。そのため、わざわざ広報に断ったことは付言しておく。

さて、女子大もいくつか回ったのだが、IT系学部・学科の展示を見ていたときだ。

就職先一覧を見ていると、別の親子連れが来た。その女子大のIT系学科からは優良企業への就職が多かったが、その企業名を見ても全く理解できなかったらしい。

「どういうところに就職できるか、よく分からないよね」

母親がそう言って、娘の受験生も同意して、すぐ立ち去った。

いやいや、あなた、この企業の平均年収、知ってます?就職できたらある意味、人生勝ち組ですよ。

などと、長広舌を振るいたくなったが、急に話しかけたところで単なる不審者でしかない。「自称・大学ジャーナリスト、女子大で逮捕」

などと、ネットニュースになることを想像するだけでも恐ろしく、自重するしかなかった。

が、この「よく分からないよね」こそが女子大のIT系学部不人気の理由である。

すなわち、看護・医療系学部や薬学部、建築系学部、デザイン系学部などであれば、受験生でも親でも、就職先が想像できる。

経営系学部や法学部などであれば、「文系なんだな」で就職先が広く、総合職就職も十分、ということは、受験生・親、ともに理解できる。

ところが、IT系学部・学科はどうか。

まず、ITや情報、というキーワードの時点で「なんか難しそう」とハードルが上がってしまう。

しかも、就職先がIT業界と言われても、どんな仕事なのか、受験生・親、ともに想像できない。

下手すれば、過去の都市伝説とも化した「IT=ブラック」を思い出し、より敬遠してしまうことになる。

IT系学部の勉強内容が「なんか難しそう」は、薬学部にしろ、看護・医療系学部にしろ、建築系学部にしろ、どこもそう大きくは変わらない。

しかし、勉強内容や就職先の分かりにくさが女子大の場合、災いして、不人気学部となってしまうのだ。

◆分かりにくさをどう変える?

では、このIT系学部の「なんか難しそう」をどう変えるか。

ほとんどの女子大では学部ガイダンスを実施しているだろうし、その際に勉強内容や就職先についても触れているはず。

それでは「なんか難しそう」が覆らないからこそ、不人気なのだ。

では、この石渡を招聘して「IT系学部を大学ジャーナリストが解説」ガイダンスを実施すればどうか。

いや、オファーをいただければ、もちろんお受けする。

ただし、先にお断りしておくと、IT系学部単独であれば、9割の確率で集客に失敗する。ただでさえ分かりにくい学部であるところに「大学ジャーナリストが解説」と打ち出しても、さらに引かれて不人気コンテンツとなることは火を見るより明らかだ。

大学全体の就職解説講座や保護者向け講座などであれば、まだ集客できるはずだ。こちらについてはオファーをお待ちしたいが本稿テーマとは無関係なので措くとしたい。

では、女子大のIT系学部はどうすればいいか。

キーワードは理工系大学のオープンキャンパス、そして、読者モデルの起用である。

◆以下、有料公開部分となります。

◆理工系大学のオープンキャンパス
◆知られざる読者モデルの変化
◆企業側も好意的



※無料公開部分2100字・有料公開部分の文字数1600字/合計3700字

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大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計33冊・66万部。 2024年7月に『夢も金もない高校生が知ると得する進路ガイド』を刊行予定。

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