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「女子」を残したままの共学化は意味がない~教育広報担当者が知ると得する話・15

石渡嶺司大学ジャーナリスト
(写真:イメージマート)

◆「共学化」でも日本人男子学生はゼロの佐賀女子短大

先月に続いて、女子大ネタを一つ。

今後も女子大の募集停止・廃校や共学化は続くだろう。

その際に、女子大で検討材料として浮上するのが「女子」を冠したままでの共学化だ。

理屈としては、女子教育を今まで続けてきた以上「女子」の看板を下ろすのはしのびない、そこで「女子」を校名に残したままで一部の学部(または全部)を共学化すれば経営にプラスではないか…。

そういう話がどうも、募集停止か共学化か、悩む女子大の理事会などで出ているようだ。

結論から言えば、やめた方がいい。

2024年は武雄アジア大学構想で話題を振りまいている佐賀女子短期大学が地域みらい学科で共学化したものの、結果は日本人の男子学生はゼロ、留学生が7人という結果になった。

そんな中、佐賀女子短大(佐賀市)では今春、初めて男子が入学した。新入生174人のうち男子は7人で、全員留学生だ。2日の入学式には、民族衣装に身を包んだ男子学生も出席した。
「(佐賀女子短大を運営する)旭学園127年の歴史にとって特別な日です」。式典で、今村正治学長は男子入学をこう表現した。今年度から2学科のうち1学科で男子の受け入れを始め、ミャンマーとネパールからの留学生が入った。
男女共学に踏み切ったのは、少子化の中での学生確保に加え、人手不足に悩む介護現場と留学を希望する学生側の双方から「男子学生の育成も」との声が上がったためだという。
※2024年4月3日朝日新聞朝刊(西部地方版)「短大、岐路に立つ春 最後の入学式・127年で初の男子・離島枠設置 /佐賀県」

福祉系学科・コースでは外国人の在留資格に「介護」が加わった(2017年)こともあり、留学生受け入れが進んでいる。

佐賀女子短大の共学化もその一環であろう。

ただ、日本人男子学生がゼロだったことは、「女子」を冠したままの共学化が無理あることを示している。

◆前例の中京女子、清泉女学院はともに惨敗

「女子」を冠したままの共学化は前例があり、2007年の中京女子大学(現・至学館大学)が最初だ。

2006年に2007年から、大学名を変更しないまま、人文学部での男子学生の受け入れを発表した。

同校のある愛知県には中京大学が存在する。つまり、「女子」を外すと同一校名になるので認められない。

それと「中京女子」は女子スポーツでブランド力がある、と大学側は考えていた。

「中京女子」大学、中京女子・大学、中京女子☆大学、中女大学などが候補となる中で、決まった案が女子を冠したままの共学化だった。

結果、入学した男子学生はわずか6人。

その後も低迷し、2010年に共学化、至学館大学と校名を変更している。

長野県の清泉女学院大学は2019年新設の看護学部を共学化した。

結果、初年度は男子学生が1人。その後も数人で推移しこちらも低迷した。

同大は2025年に清泉大学に校名を変更する予定だ。

◆「女子」を履歴書に書きたいか

「女子」のままで共学化しても男子学生が集まらないのは、ある意味で当然である。

高校生からすれば「女子」を冠したままの大学にわざわざ入学したいと思うだろうか。

思うわけがない。

事情を知らない友人などから、「なんで女子大学に通っているの?」と聞かれるし、「女の子に囲まれて羨ましい」云々と冷やかされたりもするだろう。

くだらないと言えばくだらないのだが、こういう反応は容易に想像できる。

それが一過性のものならまだしも、一生付きまとうことになる。履歴書には一々、「女子」と書かなければならない。

それが他に選択肢がないのであれば、そこまで問題にはならない。

しかし、実際には、他の大学に短大・専門学校と選択肢が多いわけで、そうなると男子高校生はマイナスの多い「女子」大学には進学しないだろう。

そのことが中京女子、清泉女学院と佐賀女子短大の3校で証明されたと言っていいだろう。

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◆女子大経営幹部の鈍感さ
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大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計33冊・66万部。 2024年7月に『夢も金もない高校生が知ると得する進路ガイド』を刊行予定。

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