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来年度防衛予算、日英伊の次期戦闘機開発に730億円 搭載する次期空対空ミサイルは国産へ

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
今年3月開催の「DSEI JAPAN」で初公開された次期戦闘機の模型(筆者撮影)

政府は12月22日、7兆9496億円に及ぶ2024年度防衛予算案を閣議決定した。このうち、航空自衛隊のF2戦闘機の後継となる次期戦闘機開発の関連費用として730億円を予算計上した。8月末の概算要求時の726億円から4億円上積みされた。

内訳は以下のようになっている。

①機体の基本設計やエンジンの詳細設計など「次期戦闘機の開発」に640億円(概算要求額637億円)

②次期戦闘機など有人機と連携する戦闘支援無人機を実現するために必要なAI技術の研究など「次期戦闘機と連携する無人機の研究等」に48億円(同49億円)

③日英伊共同開発を推進するために運営資金を拠出する「次期戦闘機の共同開発機関への拠出金」に42億円(同40億円)

防衛省は今年度に実施している機体の構想設計の結果を踏まえて、機体の形状や構造を確定させる活動や主要な搭載部品の設計を引き続き行っていく方針だ。

今年3月開催の「DSEI JAPAN」で初公開された次期戦闘機の模型(筆者撮影)
今年3月開催の「DSEI JAPAN」で初公開された次期戦闘機の模型(筆者撮影)

次期戦闘機の計画は「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP=ジーキャップ)」と呼ばれる。日英伊3カ国政府が昨年12月に発表した。

日本と英国、イタリアの防衛相は今月14日、3カ国による次期戦闘機の開発計画を合同で管理する機関「GIGO」を設けると合意した。本部は英国に置き、初代トップは日本人が就くと決めた。

日英伊による次期戦闘機共同開発にかかわる「GCAP政府間機関(GIGO)」の位置づけや任務、そして、国際共同開発の体制についてのイメージ図(防衛省資料)
日英伊による次期戦闘機共同開発にかかわる「GCAP政府間機関(GIGO)」の位置づけや任務、そして、国際共同開発の体制についてのイメージ図(防衛省資料)

日英伊3カ国で開発や製造の主体となる三菱重工業と英航空・防衛大手のBAEシステムズ、イタリアの防衛大手レオナルドの3社が参加する共同企業体(JV)も設立される。JVの本部も英国に置き、初代トップはイタリアから出す。

これにより、防衛省は「3カ国の政府と民間企業との協業を一元的に管理・運営する体制が構築され、GCAPの円滑な実施に資する」と説明する。

日英伊が共同開発する次期戦闘機のイメージCG(画像:BAEシステムズ)
日英伊が共同開発する次期戦闘機のイメージCG(画像:BAEシステムズ)

三菱重工業とBAEシステムズ、レオナルドの3社が機体の開発を進めている。エンジン部分は日本のIHIと英国の航空機エンジン製造大手ロールスロイスが中心で、イタリアで航空機エンジンを手がけるアビオも加わる。電子システムは、三菱電機とレオナルドUK、イタリアのレオナルドとエレットロニカの4社が担当する。欧州の軍事大手MBDAもミサイル開発で参画する。

防衛省はF2戦闘機の退役が見込まれる2035年度までの初号機の配備を目指している。現在保有するF2と同数の少なくとも約90機の導入を想定している。一方、英国も現行の戦闘機ユーロファイター・タイフーンの後継機として「テンペスト」の2035年までの配備を目指している。

●日英伊のGCAP VS 仏独スペインのFCAS

仏独スペインは、日英伊が共同開発する次期戦闘機と同じ第6世代戦闘機の開発計画「フューチャー・コンバット・エア・システム(FCAS)」を推し進めてきた。日英伊のGCAPのライバルと目される。

ところが、英タイムズ紙は11月1日、ドイツがこの1000億ユーロ(約15兆6000億円)規模に及ぶFCASの戦闘機プロジェクトをフランスとともに続行することを断念し、日英伊のGCAPに参加する可能性があると報じた。ドイツ政府はすぐさまGCAPへの参加検討報道を否定したが、サウジアラビアのGCAP参加も取り沙汰されてきたこともあり、大きな話題となった。

その一方で、ベルギーのルディビン・デドンデル国防相は11月下旬、2025年6月までに同国が仏独スペインのFCASに参加すると明言した。

次期戦闘機開発をめぐる欧州各国の思惑と駆け引き、さらには利害がうごめいている。

●次期戦闘機搭載の新たな国産ミサイル開発

来年度予算では、次期戦闘機に搭載する「次期中距離空対空誘導弾の開発」に向けて184億円も計上された。概算要求額がそのまま満額認められた。日英はF35戦闘機搭載の新型空対空ミサイル(JNAAM)の共同研究を推進してきた。しかし、次期戦闘機搭載のミサイルは国産で、防衛省担当者は次期戦闘機用の新たなミサイルは「JNAAMとは全く別」と言い切った。

防衛装備庁は今年度いっぱいでJNAAMのプロジェクトへの予算計上を終えた。

(関連記事:2023年度の防衛費、F35戦闘機搭載の新型ミサイルの日英共同研究費用を予算計上

防衛省は、英国とのこれまでの共同研究成果に基づき、国産ミサイルの開発の方が費用対効果や技術面でメリットが大きいと判断した。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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