2024年度防衛予算は10年連続で過去最高、護衛艦「いずも」と「かが」の軽空母化改修費はいくらに?
政府は12月22日、7兆9496億円に及ぶ2024年度防衛予算案を閣議決定した。前年比では16.5%も増えた。10年連続で過去最高となった。
●いずも型護衛艦の改修に424億円
このうち、海上自衛隊史上最大の艦艇であるいずも型ヘリコプター搭載護衛艦1番艦「いずも」と2番艦「かが」に、短距離離陸と垂直着陸が可能なステルス戦闘機F35Bを搭載できるよう、改修費全体として424億円が計上された。8月末の概算要求額は423億円であり、満額以上が認められた。
F35B搭載に向けたいずも型護衛艦改修費としては、これまでに2020年度に31億円、2021年度に203億円、2022年度に61億円、2023年度に52億円がそれぞれ計上されてきた。
戦闘機搭載を可能にする「いずも」と「かが」の軽空母化は、太平洋への進出がめざましい中国軍を念頭に抑止力を強化する狙いがある。軽空母化改修は、5年に一度実施される「いずも」と「かが」の大規模な定期検査を利用して、それぞれ2回にわたって行われている。
なお、いずも型護衛艦は今でもその全通甲板をもって多数のヘリコプターの運用が可能で、ジェーン海軍年鑑(Jane's Fighting Ships)ではかねて空母の一種の「ヘリ空母」に分類されてきた。このため、筆者は「空母化」というよりも「軽空母化」と書いてきた。
また、いずも型護衛艦は、艦艇や航空機などの軍事アセットを使って他国との関係強化や地域の安定を図る日本の「防衛外交」の主役でもある。インド太平洋地域に派遣される際には各国海軍などと共同訓練を実施してきたほか、東南アジア諸国連合(ASEAN)の海軍士官らに同乗してもらい交流を積み重ねてきている。
●「いずも」もいよいよ艦首改造へ
海上幕僚監部によると、「いずも」改修については、2回目の改修が始まる来年度は約421億円を計上した。今夏の概算要求額は420億円だった。
内訳は艦首を矩形(くけい)に変更するための本体改造費に409億円、着艦誘導装置に6億円などとなっている。
いずも型護衛艦のもともとの艦首は台形。海幕によると、細い先端部分での乱気流を抑えてF35Bを安全に運用するために、甲板を横に付け足して矩形にすることが必要となっている。
海自横須賀基地を母港とする「いずも」は2019年度末からジャパンマリンユナイテッド(JMU)横浜事業所磯子工場で1回目の改修工事が実施され、2021年6月末に終了した。具体的には、特殊な塗装などによる飛行甲板の耐熱処理工事や誘導灯の設置などが行われた。飛行甲板には艦首から艦尾まで1本の黄色い標示線(トラムライン)も引かれた。
●かが改修費は3億円
「かが」改修については、来年度は3億円を計上した。概算要求額も3億円で全額が認められた。内訳は各種試験費に1億円、衛星通信装置など関連装置の改造費用に2億円。「いずも」の421億円という来年度予算額と比べて少額な理由は、「かが」は既に艦首形状を矩形に変更する大掛かりな工事を終了したためだ。
海自呉基地を母港とする「かが」は2021年度末から広島県呉市のJMU呉事業所で1回目の改修が始まった。そして、「いずも」に先駆けて艦首が矩形に改修され、前甲板部分が以前と大きく変わった姿で今年4月20日に初めてドックを出た。
「かが」の1回目の改修は今年度に終わる予定だ。2回目の改修は2026年度から実施される。
海幕の最新情報によると、「いずも」と「かが」の軽空母化改修はともに2027年度に完了する予定だ。
●2024年度は7機のF35Bを取得へ
防衛省は来年度予算で、「いずも」と「かが」に搭載するF35Bの7機の取得費1282億円を計上した。今夏の概算要求額は1256億円だった。航空自衛隊はこれまでにF35Bの取得費として2020年度に6機793億円、2021年度に2機259億円、2022年度に4機510億円、2023年度に8機1435億円をそれぞれ計上した。空自は計42機のF35Bを導入する計画で、2020年度に予算計上した6機がいよいよ来年度に日本に配備される。
その配備先として、防衛省は宮崎県新富町にある空自新田原基地を計画している。来年度中に「臨時F35B飛行隊」(仮称)を新設する予定だ。前述したように、「いずも」と「かが」の軽空母改修の完了は2027年度が見込まれており、両艦の飛行甲板に日本のF35Bが実際に発着艦するのはまだ月日がかかる。
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