Yahoo!ニュース

分別ルール違反のごみ袋を開封調査→氏名公表へ 条例に賛否両論、法的問題は? #専門家のまとめ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:イメージマート)

分別ルール違反のごみ袋に対する福島市の条例改正案が話題となっています。これまでは違反シールを貼って回収しないだけでしたが、効果が乏しかったため、1週間程度たっても是正されなければ開封調査で誰のごみか特定して改善指導や勧告を行い、これに従わない悪質な違反者がいれば氏名や事業者名の公表まで行うというものです。賛否両論あるようです。こうした措置を巡る法的問題について、理解の参考となる記事をまとめました。

ココがポイント

「新たな規定の導入で市民や事業者に排出ルールの徹底を促し、ごみの減量やリサイクルの推進を図りたい考え」「罰則は設けない」
出典:福島民友 2024/11/21(木)

「ごみの中身の調査はプライバシーの侵害との指摘も」「市は個人情報の保護に努めると強調するが、市民から『やりすぎでは』との声も」
出典:福島民報 2024/11/21(木)

「『ごみは、捨てた時点で所有権を放棄しているものだから勝手に見たっていいじゃないか』という理屈は通用しない」
出典:PRESIDENT Online 2014/12/15(月)

「現時点ではこの自治体によるゴミ袋の開封調査が、憲法違反であるとの判断はされていない状況です」
出典:よくわかる日常問題!法律情報局 2020/9/14(月)

エキスパートの補足・見解

ごみの種類ごとに収集日や時間、分別方法などが決まっているのにルールを守らずに好き勝手に捨てたり、マンションや地域住民専用のごみ集積所にそれ以外の者が無断でごみを捨てたりした場合、不法投棄として廃棄物処理法違反にあたります。

しかし、最高で懲役5年、罰金でも1千万円以下と刑罰が重いので、立件例はもっぱら悪質業者による山林などでの大量の投棄事件であり、今回のようなルール違反に適用されることはまずありません。

一方で、どの自治体もそうしたごみへの対応に苦慮していますし、放置すれば真面目に分別している人が不公平感を抱くことにもなります。そこで、一部自治体ではすでに開封調査が導入されており、福島市も福島県で初となる来年3月の施行を目指しているわけです。実現した場合、開封調査や氏名公表の手続を職員らが厳守するなど、プライバシー保護に十分配慮した運用が求められます。

それとともに、改めて地域で分別ルールの周知徹底をはかった上で、住民以外の者が勝手に捨てるケースなどにも対応できるように、違反が多いごみ集積所への監視カメラの設置なども検討されてしかるべきでしょう。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

前田恒彦の最近の記事