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「まずは戦車、その後は核兵器だ」トランプ氏 プーチン氏寄りの発言も ウクライナ侵攻

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 「まずは戦車、その後は核だ。今、このクレイジーな戦争を終わらせよ。(終わらせるのは)とても簡単なことだ」

 トランプ氏が、米国やドイツがウクライナに主力戦車の供与を決めたことを問題視し、1月26日、自身が運営するSNSトゥルース・ソーシャルでこう発言した。つまり、主力戦車の供与は核兵器の使用へと繋がる可能性があるというのである。

戦争を24時間以内に終わらせられる

 さらに、トランプ氏はこう続けている。

「私が大統領なら、ロシア/ウクライナ戦争は絶対に起きなかっただろう。しかし、今でも私が大統領なら、この恐ろしく、エスカレートしている戦争を24時間以内に交渉で終わらせることができるだろう。人の命がなんと悲劇的に無駄にされていることか!!!」

 また、トランプ氏は、ロシアによるウクライナ侵攻が起きた背景について、フォックスニュースでこう言及。

「こうなったのは、彼ら(ロシア側)が、米軍のアフガニスタン撤退を目撃したからだ。彼らは、おそらく、軍隊史上最も無能な撤退を目撃した。私たちだけではなく、習氏やプーチン氏もそれを目撃した。中国が近いうちに台湾をどうするか注視したいが、彼らはこう言ったんだろう。「何が起きているんだ? 彼ら(米国側)はやっていることがわかっていない」と。そして、突然、彼ら(プーチン氏や習氏)はたくさんの野心を抱いたのだと思う」

 もっとも、戦争を24時間以内で簡単に終わらせられると豪語したトランプ氏は、具体的にどう終わらせるのかについては言及していない。

 そもそも、ウクライナもロシアも停戦交渉に入る気配がなく、あくまで戦い続ける姿勢を示していることを考えると、簡単とは全然言い難い状況だ。共和党内での支持が衰えるなか、トランプ氏は、バイデン政権がウクライナに対して27ビリオンドルを超える莫大な軍事支援を行ってきたことに反対している、トランプ氏支持の共和党右派の結束を強化する狙いがあるのだろう。

米情報機関よりプーチン氏を信じる

 トランプ氏はまた、1月30日、こんなプーチン氏寄りのコメントもしている。

「ヘルシンキで、3流レポーターが、私に、ロシアのプーチンと我々の情報機関のならず者たちのどちらを信じているかときいたことを憶えているか? 当時の私は、ジェームズ・コミー(元FBI長官)やマッカビー(元FBI副長官)、ブレナン(元CIA長官)、ピーター・ストローク(元FBI捜査官)とその愛人のリサ・ページ(元FBI弁護士)というとても悪い人々がいると直感していた。今は、マクゴニガル(元FBI捜査官)と他のいやなやつもそのリストに加える。誰を選ぶ? プーチン、それとも、これらの不適応者?」

 大統領だった2018年7月、トランプ氏は、ヘルシンキでプーチン氏と首脳会談を行った際、ロシアの米大統領選介入についてプーチン氏を非難するかときかれて「プーチン氏は介入していないと言っている。ロシアである理由が見当たらない」と米情報機関がロシアのサイバー攻撃による選挙介入があったと断定していたにもかかわらず、それを否定する発言をして、批判を浴びた。

 そして、今回も、トランプ氏は上記の発言により、米国の情報機関の元高官をならず者呼ばわりし、彼らよりもプーチン氏を信じていると示唆したのである。

 ロシア疑惑をかけられて特別検察官に調査されたり、機密文書持ち出しによりフロリダ州の別荘を家宅捜査されたりしたトランプ氏は、以前同様、FBIや米司法省批判を繰り返すことで求心力を高めようとしている。

上院トップの中国人の妻に対する差別発言も

 人種差別発言も、変わらず、続けている。トランプ氏は昨年10月、ミッチ・マコネル上院院内総裁の妻で、トランプ政権下で運輸長官を務めた台湾出身のイレーン・チャオ氏を「中国びいきの妻、ココ・チョウ」と呼んで非難されたが、1月24日にも、バイデン氏の機密文書取り扱い問題をマコネル氏やチャオ氏と結びつけるSNSへの投稿の中で、同様の差別発言を行った。

「ココ・チョウは、チャイナタウンに送られて保管されたバイデンの機密文書と関係があるのか? 彼女の夫は、非常にバイデン、民主党寄りだ、そしてもちろん中国にも」

 一方、チャオ氏は、そんなトランプ氏の差別発言を繰り返し報じるメディアも問題視し、自身は何を言われても応じないという毅然な姿勢を示している。

「もし、それがn-word(黒人に対する差別表現)、または他の言葉なら、メディアはそれを繰り返し報じないでしょう。メディアは絶えず、彼(トランプ氏)の差別発言を繰り返す。そうやって彼は、我々を怒らせようとしている。彼はいろいろなとんでもないことを言うが、私はどんな発言にも応酬しないことにしている」

 ノース・スター・リサーチが1月16日〜21日に行った最新の世論調査では、トランプ氏と出馬すればトランプ氏の強力なライバルになると見られているフロリダ州知事のデサンティス氏のどちらを選ぶか?と問われた共和党支持者のうち、52%がデサンティス氏を、30%がトランプ氏を選ぶ結果となった。ニューハンプシャー大学調査センターが1月26日に発表した最新の世論調査でも、デサンティス氏の支持率は42%と、トランプ氏の30%を上回っている。

 ニューハンプシャー州やサウスカロライナ州で演説を行い、2024年の米大統領選に向けて本格的に選挙活動に入ったトランプ氏。

 しかし、デサンティス氏に2桁リードを許している状況は、プーチン氏寄り発言にエスタブリッシュメント批判、人種差別発言といった、これまでと変わらぬトランプ氏の舌鋒がもはや通用しないことを証明しているのかもしれない。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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