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ロシア外相が米に警告「ペンタゴンの高官がプーチンを斬首すると脅した。どんな結果になるか考えるべき」

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 ロシアのラブロフ外相が、27日、国営タス通信によるインタビューで、アメリカにはプーチン大統領に対する暗殺計画があると警告し、さらには、アメリカとNATOの戦略的目標に関する見方を示している。

「アメリカ政府は極端に踏み込んだ。一部のペンタゴン(米国防省総省)の匿名の高官が、クレムリンに対して“斬首の一撃”を与えると脅していた。ロシア政府のヘッド(プーチン大統領のこと)を物理的に排除すると脅しているのだ。もし、そんな考えが、何者かによって実際に検討されているのなら、その人物は、そのような計画でどんな結果が起こりうるか慎重に考えるべきだ」

 この発言は、9月に、米ニューズウィーク誌に対して、匿名の米国防総省の高官が、プーチンによる核の威嚇に対応する核を使わない軍事オプションとして、クレムリンのプーチン暗殺作戦を検討していると話したことに対して触れたものだと考えられている。

 ちなみに、プーチン大統領が暗殺される可能性については、超タカ派のジョン・ボルトン元国家安全保障問題担当大統領補佐官も、10月、英ラジオ局LBCで「もし、プーチンが戦術核兵器を使用するよう指令を出したら、彼は遺書に署名することになる」との考えを述べていた。

 また、ラブロフ外相は、アメリカとNATOが、戦争開始後、ウクライナに莫大な軍事支援をしてきたことも批判し、バイデン政権とノーマルなコミュニケーションを維持することは客観的に不可能という見方も示した。

「アメリカとNATOの同盟国の戦略的目標が、我が国を非常に弱体化させるか破壊させるメカニズムとして、戦場でロシアに勝つことなのはもはや誰もが知るところだ。この目標を達成するために、敵は多くの準備をしている」

「熾烈な争いで主に利益を得るのは、経済的にも軍事戦略的にも最大の利益を引き出そうとしているアメリカだ。同時に、アメリカ政府は、ロシアとヨーロッパの旧来のつながりを壊し、ヨーロッパの衛星国をより支配するという、重要な地政学的仕事も解決するつもりだ」

 ラブロフ外相はさらに、ウクライナがロシアの提案を飲まなければロシア軍が白黒をつけるとも述べている。

「ウクライナ政府により支配されている領土の非軍事化と非ナチ化、我々の新たな領土を含むロシアの安全保障に対する脅威を排除すると我々が提案していることは敵もよく知っている。単純なことだ。“あなた方(ウクライナ)はあなた方の利益のために我々の提案を受け入れて下さい、さもなくば、ロシア軍が白黒をつける”ということだ」

 また、ウクライナでの争いが11ヶ月間にも及んでいることに対して、ラブロフ外相は、「ボールはウクライナとワシントンの支援者たちの側にある。彼らはいつでも無意味な抵抗をやめることができるのではないか」と、今後、争いがどれだけ続くかは“ウクライナと西側同盟国次第”という見方も示した。

 米紙ウォール・ストリートジャーナルは、ウクライナが10項目の和平案の具体化を進めていると伝えたが、その内容は、ウクライナの領土回復やロシア軍の撤退など、ロシア側の和平案とは相反するものばかり。そんな中、年始を前に、ロシアは再び、ウクライナへの大規模攻撃を開始した。2023年、ウクライナ戦争は果たして終わりを見ることができるのだろうか?

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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