井上尚弥はなぜ倒れたのか ボクシングの1R目は魔のラウンド
6日、ボクシングスーパーバンタム級4団体統一戦が行われ、同級王者の井上尚弥(31=大橋)とWBC同級1位のルイス・ネリ(29=メキシコ)が対戦し、井上が6回TKO勝利を収めた。
会場の東京ドームには4万人以上の観客が来場し、大歓声に包まれた。
試合の展開
試合開始のゴングが鳴ると、井上が強打を振りかざし、ネリも強打で応戦するというスリリングな展開となった。
しかし、均衡が崩れたのは一瞬。ネリのカウンターがヒットし、井上がダウン。
ネリは追い打ちをかけてくるが、井上は冷静にラウンドをしのいだ。
2R目には、井上も本来の動きに戻り、ジャブをつきながらペースをつくると、ネリに左フックのカウンターを浴びせダウンを奪い返す。
そこからは井上の独壇場となった。5Rにも、ロープ側の攻防でネリに左フックを打ち込みダウンを追加。
そして6R、井上がネリをロープ側に追い込んだところに右のダブルのパンチを浴びせ、3度目のダウンを奪う。
ネリは立ち上がれず、そのまま試合終了。井上が6回TKO勝利で初防衛に成功した。
なぜダウンに繋がったのか
蓋を開けてみれば圧勝だったが、初回のダウンにはヒヤッとした。井上にとってはキャリア初のダウンだったが、冷静にしのぎ切った。
ボクシングでは1R目でのKO決着が多い。
初回は体の膠着があり、互いに手の内を探るラウンドであるため、パンチの予測が難しくカウンターをもらいやすい。
パンチがくるタイミングがわからないので、ダウンに繋がりやすいのだ。
井上も「ダメージはあまりなかったが、パンチの軌道が読めなかった。出だしは少し気負っていたかもしれない」と振り返っていた。
日本はもちろん、世界が注目するこの大舞台。これまで以上にプレッシャーを感じていたことだろう。
「入場したときに舞い上がっていたわけではないけど、ちょっと浮き足だっていた」と語っていた。
対戦したネリは、いつも以上に冷静に戦っていたように感じた。
井上の強打を受けても表情を変えず、的確にパンチを返していた。これまで対戦してきた相手は井上の強打を警戒し手が出せなくなっていたが、ネリは違っていた。
互いにKO勝利を求めたからこそ、中盤のKO決着に繋がったのだろう。
ネリの健闘もあり、好ファイトとなった。
過去の出来事は許されないことではあるが、今回の試合でネリへの印象も変わったのではないだろうか。
次戦について
試合後には、次戦の対戦候補であるWBO・IBF同級1位のサム・グッドマン(26=オーストラリア)がリングに上がった。
試合は9月ごろ開催予定で、しばらくは階級を上げずに戦っていくようだ。
今すぐ階級を上げても王者になれる実力はある。
しかし、今のような圧倒的なパフォーマンスを発揮できるかは分からない。それだけボクシングの一階級の壁は大きいのだ。
願わくは日本人初となる5階級制覇に期待したいが、タイミング次第だろう。
ブレることなく、純粋に強さを追求し、偉業を成し遂げてきた井上。今後さらなる活躍に期待したい。