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プーチン「ミサイル一発でもロシアに入ったら何百もの弾頭を返す」 米識者「最後は核兵器を使う可能性も」

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 ロシア本土の空軍基地がドローン攻撃されたことを受け、「核戦争の脅威が高まっている」としつつも「ロシアは狂ってはおらず、最初に使うことはない」と発言をしたプーチン大統領が、12月9日、訪問先のキルギスでした発言に、米国防総省の諜報機関である国防情報局の元諜報員が危機感を表明している。

ミサイル一発に何百もの弾頭でお返し

 プーチン大統領はロシア領にミサイル一つでも入ってきたら、抑止のため、何百もの弾頭で応じると以下のように断言したのだ。Foxニュースが、ロシア通信(RIA)の報道として報じている。

「断言しておくが、早期警告システムが一発でもミサイル攻撃のシグナルを受信したら、何百個ものミサイルが放たれる。それを止めるのは不可能だ。敵のミサイル弾頭がロシア領に達することは避けられないだろう。しかし、敵は跡形も無くなるだろう。100のミサイルを迎撃するのは不可能だからだ。もちろん、これは、抑止ということでだ。重大な抑止だ」

先制攻撃のための兵器も所有

 プーチン大統領はまた、敵を武装解除させるために、米国のように、先制攻撃の採用により核を抑止する軍事ドクトリンへと変更する可能性も示唆した。

「武装解除のための攻撃について言うなら、我々と対抗しているアメリカが安全保障を確保するために考え出したアイデアの採用を検討する価値があるだろう」

「もし、敵が先制攻撃というセオリーを使えると考えており、我々が考えていなかったら、他国の防衛姿勢の考え方により脅威が引き起こされると思う」

 さらには「我々には先制攻撃のための極超音速兵器があるが、アメリカはまだそれらを配備していない」と訴えたり、「ロシアはアメリカを凌ぐ巡航ミサイルを有している」とも主張した。

現存のドクトリンで核攻撃は可能

 プーチン大統領の発言に対して、アメリカの識者は危機感を募らせている。

 ロシア問題のエキスパートで、アメリカ国防情報局でロシアドクトリンと戦略の諜報員を務めていたレベッカ・コフラー氏は、FOXニュースで、「米国は、核攻撃に対する報復のためだけではなく、核ではない脅威にも対応する目的で、核兵器を使う政策を有している。ロシアも同じだ」と、ロシアの軍事ドクトリンにはすでにアメリカ同様の戦略が組み込まれていると指摘し、プーチン大統領の発言は“戦略的メッセージ”という見方を示した。

 さらには「現存のロシアの軍事ドクトリンに基けば、ロシアは核攻撃で対応することが可能だ。なぜなら、エンゲルス空軍基地は戦略的財産と考えられている核攻撃可能な戦闘機の基地であり、核攻撃で防衛する価値があるからだ」と述べている。

 また、同氏はプーチン大統領の発言は「米国とNATOがウクライナに兵器を、特に、ロシア本土を深く攻撃するために使う兵器を供給し続けたら、ロシアがウクライナに対し核兵器を使う可能性がある」と警告する発言だと指摘した。

最後はプーチンが核兵器使用か

 プーチン氏の発言に対し、オースティン米国防長官は「ロシアはウクライナに対し、残酷で不当な戦争を続けており、世界は、プーチンが非常に無責任な核戦力による威嚇をしていると考えている」と批判した。

 コフラー氏は、ウクライナ戦争をめぐる、ロシアとアメリカのレトリックが、意図せずとも、争いへとエスカレートしていくことにも危機感を示している。

「ロシアとアメリカが、ウクライナ戦争をめぐり、エスカレートする階段を登っているのは疑いの余地がなく、最終的にプーチンが核兵器を使用することになる可能性がある。どちらも直接争う結果にはなりたくないと思っているが、両国は、互いの形勢を読み間違えているため、意図せずともエスカレートする階段を登っている。両サイドとも、相手がきっと最初に驚くことになるだろうと思っている」

 計算違いによる偶発的な戦争へのエスカレートが危惧される。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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