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トランプが大統領の時の方が良かった 世論調査が示唆 “大統領選のノストラダムス”の最新予測の勝者は?

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 接戦が予測されている2024年米大統領選。CNNの最新世論調査によると、トランプ氏とバイデン氏が今一騎打ちした場合、登録済み有権者のうちでトランプ氏を支持すると答えた人は49%、バイデン氏を支持する人は43%とトランプ氏が6ポイントリードする結果となった。

若年層のバイデン氏離れが進む

 大統領選では通常、経済がもっとも重視されているが、今回の調査でも、登録済み有権者の65%が経済を最重視していると回答。また、米国の経済状況が悪いと答えた人は70%にも上った。世界的に見るとアメリカ経済は一人勝ちしている状況があるが、インフレが続くなか、大多数の米国民はその恩恵を受けているとは感じていないのだ。

 経済状況だけではなく、長引くガザ紛争もバイデン氏にとっては足枷になっている。ガザ紛争へのバイデン政権の対応を支持すると答えた人は28%で、不支持は71%にも上った。特に、35歳未満の若年層では81%が不支持。また、民主党支持者でも不支持が53%と過半数を占めている。

 年代別では、35歳未満の若年層でバイデン氏支持が40%、トランプ氏支持が51%と、バイデン氏は前回調査よりもトランプ氏を下回っており、民主党支持者が多い若年層の民主党離れが進んでいることが示唆されている。今、アメリカの大学では親パレスチナのデモが起きているが、若年層の民主党離れには、ガザ紛争に対するバイデン政権の対応への不満が如実に表れているようだ。

トランプ政権に対する評価が上昇

 興味深いのは、トランプ氏に対する評価が、同氏の大統領退任後、上がっていることだ。2017年8月のCNNの世論調査では、トランプ政権は成功していると回答した人はわずか24%で、失敗しているとの回答が68%だった。それが、2021年の調査では、41%がトランプ政権は成功していると回答。また、今回の調査では、55%がトランプ政権1期目は成功と回答し、失敗と回答した人は半数以下の44%となっている。数字は、時とともに、トランプ政権を評価する見方が高まっていること示している。

 その一方、バイデン氏に対する評価は下がっている。今回の調査では、39%がバイデン政権1期目を成功と回答したのに対し、61%が失敗と回答。2年前の調査では、41%が成功と回答し、57%が失敗と回答していた。

 振り返ってみると、トランプ氏が大統領の時の方が政治は上手く行っていた、良かったと今では考えている米国民が多いということだろうか。 状況は、「もしトラ」が「ほぼトラ」に近づいていることを反映しているように見える。

たくさんの問題が起きないとバイデン氏敗北はない

 そんななか、「ほぼトラ」に待ったをかける予測をしている人物がいる。アル・ゴア氏がジョージ・ブッシュ氏に負けた2000年の大統領選を除き(もっとも、リヒトマン氏は、ゴア氏が一般投票では勝ったため、自身の予測は正しかったと主張している)、1984年以降の大統領選の勝者を的中させてきた、“大統領選のノストラダムス”として知られるアメリカン大学歴史学教授のアラン・リクトマン氏だ。「たくさんの問題が起きないことには、バイデン氏は敗北しないだろう」と、今までのところは、バイデン氏優勢との見方を4月26日付けの英ガーディアン紙に対して示している。

 アメリカン大学のウェブサイトによると、リクトマン氏は以下の13の鍵をベースに、大統領選の勝者を予測してきた。

1.党の使命: 中間選挙後、与党は米下院で、前回の中間選挙後よりも多くの議席を保持している。

2.コンテスト: 与党の指名をめぐり、対立候補がいない。

3.現職: 与党の候補者は、現職の大統領。

4.第三政党: 主要な第三政党が存在しないか、または、独立的な選挙運動が行われていない。

5.短期的な経済: 選挙期間中、経済は景気後退に陥っていない。

6.長期的な経済: 任期中の一人当たりの経済成長率が、過去2期の平均成長率と同等かそれを上回っている。

7.政策変更: 現政権は国の政策に大きな変更をもたらしている。

8.社会不安: 現政権の任期中に大きな社会不安が起きていない。

9.スキャンダル: 現政権は重大なスキャンダルに襲われていない。

10.外交・軍事の失敗: 政権は外交・軍事面で大きな失敗をしていない。

11.外交・軍事の成功: 現政権は外交または軍事問題で大きな成功を収めている。

12.現職のカリスマ性: 与党の候補者はカリスマ性があるか国民的ヒーローである。

13. 挑戦者のカリスマ性: 挑戦者している党の候補者はカリスマ性がないか、または国民的ヒーローでもない。

 リクトマン氏によると、候補者は、この13の鍵のうち6以上の鍵を失ったら敗北するとしているが、バイデン氏は、現時点で、民主党の対立候補が不在で現職であるという2と3の鍵は保持しているものの、中間選挙で民主党が下院で敗北したこととカリスマ性が欠如していることから1と12の鍵を失っているとの見方を示している。

「彼は決定的に2つの鍵を失っている。与党は2022年に米国下院の議席を失ったことから、1番目の鍵を失くしている。また、彼はジョン・F・ケネディやフランクリン・ルーズベルトではないから12番目の鍵を失くしている」

バイデン氏にとって不安定な4つの鍵

 あと4つの鍵を失くすとバイデン氏は敗北する可能性があるわけだが、バイデン氏にとって不安定な鍵は、4(ロバート F. ケネディ ジュニア候補の存在)、8(イスラエル・ハマス戦争をめぐり大学でデモが起きていること)、10と11(中東とウクライナで戦争が起きていること)だという。

 また、リクトマン氏は、13の鍵では測れない、バイデン氏を敗北に導くような出来事が起きる可能性もないとは言えないとの見方も示している。

 リクトマン氏は8月に最終予測を行う可能性が高いが、果たして勝者はどちらになると予測するのか?

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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