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米原子力潜水艦がアラビア海に出現 米軍がツイッターで異例の公開 プーチンの核使用に備え「準備は万全」

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
アラビア海に出現した原子力潜水艦。写真:U.S. Central Command

 ロシアによるウクライナ侵攻から10月24日で8ヶ月が経過した。

 プーチン氏が実際に核兵器を使用する可能性について様々な見方がされるなか、ロシアは一方的に併合した4州に戒厳令を敷いたり、プーチン氏の側近がこれまで使っていた「特別軍事作戦」から「戦争」という言葉に言い換えたり、ウクライナは放射性物質をまき散らす「汚い爆弾」を使う恐れがあるといった「偽旗作戦」と見なされるような主張も展開したりしている。

 バイデン大統領も、状況を懸念し、10月25日、「ロシアが戦術核兵器を使えば、想像を絶する重大な過ちを犯すことになる」と警告。一方、ロシアは、10月26日、核ミサイルの軍事演習を実施した。

「準備は万全」とペンタゴン

 そんななか、やはり気になるのは、アメリカがどう対応するかだ。アメリカは、プーチン氏が核兵器を使用した場合に備えて準備をしているのだろうか? 

 その答えは「イエス」である。

 10月18日、米国防総省(ペンタゴン)報道官のパトリック・ライダー氏が、記者会見で「ペンタゴンはどんな言葉で米国民を安心させることができるのか、 ロシアの核のシナリオに対応する準備が完全にできていると言う言葉か?」と問われて、「我々の準備は万全です。そう言えます」と述べたことが一部のメディアで報じられている。また、同氏は「我々は、24時間体制で監視しており、必要なら対応する態勢に入るだろう」とも言及している。

米軍の原子力潜水艦がアラビア海に!

 実際、この「準備は万全」発言を示唆するような動きも見られる。

 中東の軍事作戦を監督している、ペンタゴンの一部であるアメリカ中央軍が、ツイッターで、アラビア海に姿を現した原子力潜水艦の画像を公開したのだ。

 画像が掲載されているプレスリリースには、アメリカ中央軍司令官のマイケル・“エリック”・クリラ将軍が原子力潜水艦に乗船したことを以下のように伝えている。

「10月19日、アメリカ中央軍司令官のマイケル・“エリック”・クリラ将軍が、アラビア海の国際水域の非公開の場所にいる米海軍オハイオ級の弾道ミサイル搭載原子力潜水艦USS・ウエスト・バージニアを訪問した」

 さらには、以下のクリラ将軍の発言も載せている。

「USS・ウエスト・バージニアの乗員に非常に印象づけられた。海兵たちには、米軍全体に見られる非常に高いプロ意識、専門性、規律が表れている。これらの潜水艦は核の3本柱の重要部分だ。ウエスト・バージニアは、海上のアメリカ中央軍とアメリカ戦略軍に柔軟性や残存能力、迅速性、戦闘能力があることを示している」

 ちなみに、核の3本柱とは、大陸間弾道ミサイル、潜水艦発射ミサイル、戦略爆撃機(空中発射巡航ミサイル)の3つからなる軍事力構造のことで、国の核抑止力を高めることを目的としている。オハイオ級原子力潜水艦は敵から核ミサイルが発射された場合、核ミサイルで対応する能力があるのだ。

敵国及び同盟国に対するメッセージ?

 アメリカ中央軍が公開したこの画像とプレスリリースについて、米ニュースサイトVICEは「通常、原子力潜水艦の動きは機密にされている」と指摘した上で、「アメリカは、クリラ将軍が非常に貴重と呼ぶところの潜水艦を世界の海に14隻所有している。アラビア海はイエメン、オーマン、パキスタン、イランと国境を接している。アメリカが潜水艦のロケーションに言及するとはとてもおかしい。イランとロシアに(軍事力を)誇示しているとしか思えない」「原子力潜水艦のロケーションのツイートは、直接的威嚇を踏みとどまっている挑発だ」との見方をしている。

 また、防衛情報を掲載しているThe War Zoneは、このツイートについて、

「どうしても、イランやロシアといった敵国や、アメリカの同盟国やパートナーに向けたメッセージのように見える」という見方をしている。

 もしそうであるとすれば、何のために誇示したり、メッセージを送ったりしているのか?

 原子力潜水艦がツイートされたのは、折りしも、イランがロシアに自爆ドローンを提供しているだけではなく、ドローンの使い方をロシア兵に教えるための人材もクリミアに送っていると、米国務省が発表した日のことだった。

 前述のThe War Zoneは「米軍が、アラビア海にアメリカの最も壊滅的な攻撃プラットホームがいることを公にしたことは非常に異例のことであり、核の3本柱の一部分がそこにはあり、必要とされれば、すぐに対応できる状態になっていることを明確にしている」と解釈している。

 通常、ロケーションが公表されていない原子力潜水艦がイランの南のアラビア海を航行中であると明らかにすることで、核使用の可能性をちらつかせているプーチン氏やロシアをドローンで支援しているイラン、また、プーチン氏の核使用を懸念しているアメリカの同盟国に対し、アメリカは万一の核攻撃に対して準備は万全というメッセージを送ったということなのだろうか?

 アメリカ中央軍がした原子力潜水艦のツイートに対するコメントにも、「これは100%、プーチンがウクライナでの核使用の可能性について言及後のロシアに対するメッセージだ」「明らかに意図的だ」「ロシアや他の敵国に、“我々はここにいるので軽くみるな”と言っているのだ」などの見方があがっている。

 ツイートの狙いや真意は不明だが、このような解釈や見方がされるほどウクライナをめぐる状況は緊迫化しているということかもしれない。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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