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「プーチンは核を使ったら遺書に署名する(暗殺される)ことになる」超タカ派ボルトン元大統領補佐官の見解

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 世界で注目されたバイデン氏の“世界最終戦争発言”だが、その発言に対し、元米政府高官を中心に批判の声があがったことは前の投稿で紹介した。その後、バイデン氏はロシアの核使用について「使用するとは思わない」とCNNでコメント。しかし、世界戦争を引き起こす意図がなくても、誤りや計算ミスは起こりうるという認識を示している。つまり、誤りや計算ミスによる偶発的な戦争が起きる可能性については懸念を示しているのだ。

 ところで、超タカ派で知られる、元国家安全保障問題担当大統領補佐官のジョン・ボルトン氏は、折に触れ、ウクライナ戦争に関する見解を示しているが、11日、英ラジオ局LBCで、ロシアがウクライナを戦術核で攻撃した場合の米国とNATOの対応について意見を述べているので、その詳細を紹介したい。

1. プーチン氏の核の脅しは、これまで同様ハッタリ

 ボルトン氏はまず、プーチン氏の核の脅しは、これまで同様“ハッタリ”との見方を示した。本題に入る前に、ボルトン氏はこう前置きしている。

「重要なのは、核使用を彼が考えることを抑止させる取り組みを強化することだと思います。プーチンは核兵器の使用についてハッタリを言ってきました。現在の脅しもまたハッタリです」

2. 核兵器が使用される可能性はある

 ボルトン氏はそれでも核兵器が使用される可能性はあると述べている。

「しかし、私は、核兵器が使用される可能性は排除していません。使用されるとしたら、ウクライナのロシア軍が崩壊した時か、あるいは、プーチン氏がロシア国内で政治的に非常に悪い状況に置かれた場合です」

3. 核を使ったらどうなるかをプーチン氏にはっきりさせておくこと

 では、米国やNATOは、プーチン氏にどう対応すればいいのか? ボルトン氏は核を使ったらどうなるかを彼や彼の周囲にいる人々にはっきりさせておくことが重要だと述べる。

「プーチンと彼の周囲にいる人々に、プーチン氏がそのようなこと(核使用)をする前にアクションを取るよう、はっきりさせておく必要がある」

 では、核を使ったらどうなるとプーチン氏にはっきりさせておくのか?

「しかし、もし、プーチンが戦術核兵器を使用するよう指令を出したら、彼は遺書に署名することになるとはっきりさせておく必要がある。彼が極端な状況に入るなら、それ(はっきりさせること)が彼を抑止するためにしなければならないことだと思う」

4. 核を使用した責任は、核の使用を決断した人物にある

 核を使ったらプーチン氏は遺書に署名することになるとは、つまりは、プーチン氏は暗殺されるということか?というインタビュワーの問いに対し、ボルトン氏はこう答えている。

「決断をした人物なしには、我々はイランや北朝鮮のようなテロリスト、また、北朝鮮、ロシア、中国が、ウクライナや他のいかなる場所でも、核兵器を使用することを許すことができないのです」

 つまり、核が使用された場合、核使用を指令した人物に責任を取らせることが重要だというのだ。ボルトン氏はさらにこう説明している。

「ウクライナや黒海のロシア軍を破壊するなどの提案はたくさんあり、もしロシアが核兵器を使ったら、私もそうすることには反対しません。ウクライナに侵攻したのは彼らだからです。しかし、彼らは核兵器使用の指令を出す責任は負っていない。指令を出した人物に責任を課すということを明確にすれば、その人物がそれ(核兵器使用)をするのを抑止する可能性を増やすことができると思う」

5. プーチン氏はキャッチできる

 しかし、そもそもプーチン氏にリーチできないのではないか? そんな疑問に対し、ボルトン氏はこう答えている。

「彼を捉えられないとは思わないし、彼もそれがわかっていると思う。アメリカに脅威を与える人物が誰であるか判断された時に何が起きたかは、イランのガセム・ソレイマニに聞けばいい。しかし、重要なのは、プーチンに対してだけではなく、他の人々にも、これ(核使用)は間違った道行きだと伝えることです」

 ちなみに、イラン革命防衛隊の司令官だったソレイマニは米軍による無人機攻撃でイラクで暗殺されている。

6. NATOの失敗

 ボルトン氏はこれまでも、NATOが早期にプーチン氏の抑止に対応しなかったことを批判してきたが、今回もそれを繰り返している。

「この戦争での基本的なNATOの失敗は、2月24日にロシアを抑止できなかったことです。ウクライナ侵攻が始まる前に、多くのことができたはずです」

7. プーチン氏暗殺はすぐには起きない

 プーチン氏が核兵器を使ったら、アメリカは彼を暗殺するのか? それについて、ボルトン氏はこう述べている。

「必ずしも、翌日にはそれ(暗殺)は起きないと思う。しかし、重要なのは、プーチンに対し、これは、彼サイドが自由に決断できることではないということをはっきりさせることだ。我々は、核使用について誰が責任があるかわかっており、それが彼であることがわかっている。(核を使用した場合)彼は責任を問われるだろう」

 核を使用した場合、それを決断したプーチン氏が責任を問われ、その責任の問われ方は遺書に署名すること(暗殺)であると示唆したボルトン氏。プーチン氏は暗殺されるのを覚悟で核を使用することができるのか?

プーチン氏、姿勢を軟化か?

 世界がプーチン氏の動きを注視する中、14日、同氏は、カザフスタンの首都アスタナでの記者会見で「追加動員は計画しておらず、大半のターゲットは攻撃したので新たに大規模攻撃する必要はない」と言及、さらには、「ウクライナが参加するなら、国際的な調停を求める」と協議にオープンな姿勢も見せた。

 戦況の劣勢により多数のロシア兵が死傷し、ミサイルも不足してきていると言われるなか、プーチン氏にはようやく負けの現実が見えてきたのだろうか?

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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