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「今や第3次世界大戦になる」トランプ氏 プーチン氏の核兵器使用も「ハッタリではない」発言の真意とは?

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 ウクライナの猛反撃を受けて窮地に追い込まれたプーチン大統領が、核兵器使用を示唆し、「これはハッタリではない」と発言したことが波紋を呼んでいる。

 このプーチン大統領の発言について、トランプ氏も黙ってはいられなかったようだ。自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、こうコメントした。

「プーチン大統領はハッタリではないと言って、核兵器を使用すると脅している。

ウクライナでの争いは起こるべきではなかったし、私が大統領なら起こらなかっただろう。しかし、私がかなり前からはっきりと言ってきたように、今や、最終的に、第3次世界大戦になるかもしれない」

時間稼ぎのためのハッタリ

 しかし、プーチン大統領の発言については、エキスパートからは「ハッタリだ」との見方が多々あがっている。

 「プーチンがハッタリではないと言う時は、ハッタリだと考えておくに越したことはない」とThe Sunに対して話しているのは防衛アナリストのマイケル・クラーク氏。プーチン大統領は30万人の予備役を動員すると表明したが、彼らを訓練するインストラクターや兵器が現在戦場に駆り出されているため、予備役を訓練して戦場に送り出せる状態になるのは来年の春になるとクラーク氏は予測している。つまり、プーチン大統領は予備役を戦場に送り込むまでの時間稼ぎとして、ハッタリをかましたというのだ。

 また、ロンドン大学キングス・カレッジの戦争研究学名誉教授のローレンス・フリードマン氏は、プーチン氏の核の脅しは「常套手段」という見方を示している。確かに、プーチン大統領はこれまでも核で脅しをかけてきた。2月の終わり、ロシアがウクライナに侵攻を開始してまもなくの時、米国の軍事介入を牽制する目的だったのだろう、プーチン大統領は「侵攻を邪魔する国は、史上直面したことがない結果に直面するだろう」と述べ、戦略核を運用する核抑止部隊が、特別警戒態勢に入るよう指示をしている。また、6月には、フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟したら軍事的な結果に直面することになると脅していたが、両国はNATOに加盟が承認された後、そのような結果に直面することはなかった。結局、ハッタリだったわけである。

核攻撃は中国を遠ざける

 アメリカン・エンタープライズ・インスティチュートの上級研究員のダリボア・ロハック氏も、The New York Postで「プーチンのから威張りは全てハッタリだ」と訴え、発言の背景には、プーチン大統領が戦争に負けつつある状況があるとしている。そのため、「ウクライナが核攻撃されるリスクがあることはシリアスに受け止められなければならないものの、ウクライナや西側諸国が、プーチンの狂気のレトリックにより退却するのは間違っている」と述べている。

 また、「プーチンは自滅的ではない」とし、その理由として「ウクライナへの核攻撃は西側諸国を決定的に戦争へと引き込み、日和見的な国々を必ず遠ざけてしまうことになる、とりわけ中国をだ。ロシアのエリートにとっては、間違いなく、埋めなければならないものが大きくなるだろう」と核兵器を使用すれば、ロシアに対して中立的な姿勢を示している国々が離れていくことになるため、プーチン大統領は核兵器を使用しないという見方を示している。

ボディー・ランゲージは“ハッタリではない”ことを示す

 果たして、プーチン大統領の真意はどこにあるのか? 

 もしかしたら、口上ではどんなに威嚇ができても、動作や表情は嘘をつかないかもしれない。ボディー・ランゲージのエキスパートのジュディ・ジェームズ氏は動作や表情から、プーチン大統領の発言は“ハッタリではない”とThe Sunで分析している。

「直接的で、語気が強くて怒っている、非常に支配的なボディー・ランゲージだった。表情で支配力と嫌悪感を示すために、前かがみになって、カメラレンズを真っ直ぐに凝視していた。手をテーブルに広げる彼の特徴的な動作をしていたが、左手は、決意を示すために何かを切るジェスチャーをしていた。彼の動きは緊急性を示していて、議論はしないことを伝えていた」

 プーチン大統領の発言はハッタリなのか、ハッタリではないのか? 

 いずれにしても、米政治学者のイアン・ブレマー氏が「どんどん孤立し、貧困になり、追い込まれているロシアは、ますます、失うものがほとんど何もないロシアになっている。世界にとっての前途は恐ろしい」と述べている通り、ロシアが世界にいよいよ脅威を与える存在になっていることだけは確かだ。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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