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X(旧Twitter)の利用規約の変更で「AIに画像を学習される」は誤り。2023年9月から学習対象

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
騒ぎとなっているXの利用規約。筆者撮影

 X(旧Twitter)が11月15日に利用規約を変更(改訂)することを受けて、イラストを描いている人たちのあいだで「11月15日からXが画像をAI学習するようになる」という話が広がっていますが、これは誤りです。

 11月15日から適用される利用規約は、AI学習について明確化(明文化)しただけであり、Xにおけるポスト(ツイート)の学習は2023年9月から行われています。

Xの利用規約改訂の発表を受けて誤解が広がる

 Xは10月16日、サービス利用規約とプライバシーポリシーの改訂を行い、11月15日から適用することを発表しました。

 そのなかで、新しい規約ではAI学習について以下のように明記されました。

当社が(i)お客様によって提供されたテキストやその他の情報を分析し、その他の方法で本サービスを提供、促進、改善する権利(生成型か他のタイプかを問わず、当社の機械学習や人工知能モデルへの使用やトレーニングなど)

X利用規約

 この発表を受けて、イラストを描いている人たちのあいだで、「11月15日からXが画像をAI学習するようになる」という話が広がっていきました。

 しかし、こうした話は厳密には誤りだと言えます。

Xは2023年9月から投稿を機械(AI)学習している

 と言うのも、Xは2023年9月からAIによる機械学習を行っているからです。

 現在の利用規約には、以下のように書かれています。

ユーザーは、このライセンスには、当社が、コンテンツ利用に関する当社の利用規約に従うことを前提に、本サービスを提供、宣伝および改善させるための権利ならびに本サービスに対しまたは本サービスを介して送信されたコンテンツを他の媒体やサービスで配給、放送、配信、リポスト、プロモーションまたは公表することを目的として、その他の企業、組織または個人に提供する権利が含まれていることに同意するものとします。

発効日: 2023年9月29日

X利用規約

 分かりにくい書き方ですが、「本サービスを」「改善させるための権利」「同意する」とあります。

 これにはAI学習も含まれていると読み取ることができます。

 実際に、2023年9月に更新されたプライバシーポリシーにはハッキリと機械学習や人工知能モデルのトレーニングに使用すると明記されています。

本ポリシーで概説されている目的のため、当社が収集した情報や一般公開された情報を、機械学習または人工知能モデルのトレーニングに使用することがあります

発効日: 2023年9月29日

Xプライバシーポリシー

 最初の方でもお伝えしましたが、今回の利用規約の改訂はAI学習について明確化しただけであり、XでのAI学習はすでに行われているのが事実です。

Blueskyに移行してもAI学習を拒否できない

 一連の騒ぎを受け、イラストを描いているユーザーのあいだでXを脱出して同じようなシステムのBlueskyに移行しようという動きも出てきています。

 どのようなSNSを使うかは個人の自由ですし、Xのこうした“AI学習推進の動きに反対してSNSを移行する”のは良いと思います。しかし、“BlueskyであればAI学習されない”という考えでの移行であればそれは誤りです。

 例えばSNSで公開されている画像をAIに学習させる場合、APIを利用してデータをスクレイピングする(この場合は画像を自動的に収集する)ことが予想されますが、XではAPIの利用料金が高額に設定されているため、AI開発者が安価に画像を取得することは難しくなっています。

 一方でBlueskyはそうした制限がないため、高額な予算をかけずに画像をまとめて取得することが可能です。

 つまりXに投稿した画像はイーロン・マスク氏が関係しているxAIなどに学習される可能性がありますが、Blueskyに投稿した画像はマスク氏をふくむ全世界のAI開発者に学習される可能性があるということです(あくまでも「できる」というだけの話です)。

 BlueskyはAI学習について利用規約に明記していないだけで、投稿されたポストや画像を他の利用者がAI学習に利用することを禁止しているものではないことに注意が必要です。

 繰り返しますが、Xが嫌だから、こうした動きに反対するためにBlueskyに移行するのは個々人が決めることです。しかし、その目的が「AI学習されなくなるため」であれば選択としては間違っていることになります。

イラストユーザーは落ち着いた行動を

 筆者はX社内の人間ではないため断定はできませんが、以前からAI学習が可能な利用規約であり、実際にGrokで学習結果が利用されていることを考えると、11月15日に利用規約が改訂されても大きな変化はないものと予想されます。

 今回の騒ぎのなかで、X上では11月15日からは投稿した画像がXが許可を得たので第三者に提供するかたちでダークウェブで転売されたり、写真がフェイクポルノに利用されたりするようになるといったいわゆるトンデモなデマも拡散されています。

 イラストを描いているユーザーはそうしたデマに惑わされず、事実をもとに落ち着いた行動を取ることをおすすめします。

2024年11月19日修正

 「投稿した画像がダークウェブで転売されたり、写真がフェイクポルノに利用されたりするようになる」の部分について、重要な要素である「Xが許可を得たので第三者に提供するかたちで」の説明が抜けていたため、追記しました。

 これがないと、「現状で行われているフェイクポルノの生成などもデマと言っていることになる」との指摘を読者から頂いたためです。お詫びして訂正致します。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。インターネット(SNS)で起きる炎上の解説、デマのファクトチェック、スマホやガジェットの話題、生成AIが専門。最近はYouTubeでも活動しています。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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