令和婚をした方へ~不倫は離婚の理由に、夫婦の約束は破ってもOK!?
平成から令和に元号が変わった記念日に婚姻届を役所に届出て恋人から夫婦になったカップルが大勢いるようです。
令和婚をした直後の今は幸せ絶頂だと思います。しかし、恋人同士と違うことは法津上、権利が発生し、同時に義務が課せられることです。
今の幸せを末永く維持すためにも、結婚に伴う権利と義務を知っておきましょう。
1.夫または妻の姓になる
結婚をすると、夫または妻の姓を称することになります(民法750条)。この制度を、夫婦同氏の原則といいます。
民法750条(夫婦の氏)
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
このように、法律上は夫・妻のどちらで氏でもよいという平等の形をといっています。しかし、現実は、次のように約96%の夫婦が夫の氏を選択しています。
夫婦の氏の選択統計(出典:厚生労働省ホームページ)
平成27(2015)年の婚姻件数635,156組の内、夫の氏を選択が609,756組(96.00%)、妻の氏が25,400組(3.99%)。
なお、女性の社会進出等の影響で、選択的夫婦別姓制度について議論が活発化しています。
2.「同居協力扶助義務」が課せられる
夫婦は同居し,互いに協力し扶助し合わなければなりません(民法752条)。
民法752条(同居、協力及び扶助の義務)
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
これは、結婚生活を維持する基本的な義務とされています。
同居義務
夫婦として同居する義務です。同居義務違反は離婚原因となり、(民法770条1項2号=「悪意の遺棄」)、離婚慰謝料の理由にもなります。
民法770条1項(裁判上の離婚)
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
協力義務
結婚生活を営むための義務です。当然、その内容は各当事者の事情によって違ってきます。この協力義務には、日常生活の維持、病者の看護、子の養育などあらゆるものが含まれます。
扶助義務
お互いに経済的に援助し合うことを意味します。夫婦は同居して共同生活をします。そのため、相手方が扶養が必要な状態に陥った場合には、相手方の生活を自分の生活と同じようにする義務があります。この義務のことを生活保持義務といいます。
3.「貞操義務」が課せられる
実は、貞操義務は民法の条文には規定はありません。しかしています、次の理由から夫婦は相互に貞操義務を負うとされています。
・重婚が禁止されている
・同居協力扶助義務が規定されている
・不貞行為が離婚原因になる(民法770条1項1号)
・一夫一婦制は結婚の本質とされている
判例は、「夫婦の一方が不貞行為をした場合には、不貞行為の相手方は、他方の夫または妻としての権利を侵害しており、夫婦の他方が被った精神的苦痛を慰謝すべき義務がる」としています。
不貞とは、夫婦間の貞操義務に違反する行為、すなわち配偶者以外の人と性的関係を持つことを意味します。
4.成年擬制
未成年者が結婚したときには、結婚によって成年に到達したものとみなされます(民法753条)。
民法753条(婚姻による成年擬制)
未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。
なお、この条文は、成年年齢を18歳とし、婚姻適齢を18歳とする民法改正によって、令和4(2022)年4月1日より削除されます。
5.夫婦間の契約取消権
夫婦は婚姻中に締結した夫婦間の契約を、婚姻中はいつでも、たとえ契約の履行後であっても、何の理由もなしに一方的に取り消すことができます(民法754条)。
754条(夫婦間の契約の取消権)
夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
この条文を立法した趣旨は次のとおりです。
・夫婦の契約は、一時の気まぐれや威圧などによってなされることが多い
・したがって真意の確保が困難である
・その履行は当事者の愛情や道義にあるべきであり、法律上強制することは、家庭の平和を害する
しかし、この夫婦間の契約取消権を真に受けて家庭に持ち込むと、間違いなく夫婦生活は破綻します。そのため、この条文は民法改正案要綱では削除されています。
6.姻族関係の発生
結婚をすると姻族関係が発生します(民法725・728条)。
民法725条(親族の範囲)
次に掲げる者は、親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族
民法728条(離婚等による姻族関係の終了)
1.姻族関係は、離婚によって終了する。
2.夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。
なお、民法728条2項の「夫婦の一方がしぼうした場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したとき」とは、いわゆる死後婚と呼ばれている制度を指します。
7.子が嫡出子となる
妻が婚姻中に懐胎した子および妻が婚姻後に出生した子は嫡出子となります(民法772・789条)。
民法772条(嫡出の推定)
1.妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2.婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
民法789条(準正)
1.父が認知した子は、その父母の婚姻によって嫡出子の身分を取得する。
2.婚姻中父母が認知した子は、その認知の時から、嫡出子の身分を取得する。
3.前二項の規定は、子が既に死亡していた場合について準用する。
8.相続権が認められる
夫婦はお互いに相続人になります(民法890条)。
民法890条(配偶者の相続権)
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
なお、高齢化社会による残された配偶者(主に夫に先立たれた妻)を保護すために昨年相続法が改正されました。
以上、結婚に伴う権利と義務をご紹介しました。
「今までと違っていろいろと大変だな」とお感じの方もいるかもしれません。確かに大変なことかもしれません。でも、あなたはかけがえのない生涯のパートナーを得ました。お二人が協力し合えばきっと困難を乗り越えられるはず。末永くお幸せに!