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6万人が挑んだ「行政書士試験」~「合格見込み者」に贈るアドバイス

竹内豊行政書士
昨日、令和6年度の行政書士試験が行われました。(写真:イメージマート)

昨日、令和6年度の行政書士試験が行われました。試験終了直後に、早くも大手予備校は解答速報を発表しているので、合格を確信している方もいるのではないでしょうか。そこで、合格見込みの方にエールを込めてアドバイスをお届けしたいと思います。

まずはクールダウン

試験直後の心構えとして最も大切なことは「落ち着く」ということです。

合格を確信された方は受験勉強が報われた高揚感で「すぐにでも開業!」「次は〇〇の資格を取得するぞ!」と興奮で熱くなっていると思います。このようなテンションが高い状態では冷静な判断ができません

そのような時に準備不足のままあわてて開業したり、衝動的に他士業の受験講座に申し込んだりしたら、どうなるかお分かりですね。そうです、「ど真ん中、失敗」です。時間と金を無駄にするでしょう。

もちろん、開業や「次の資格の受験」を否定しているのではありません。ただ、興奮冷めやらぬ段階での決断は後悔してしまう確率が高くなってしまうのです。

まずは、達成感の余韻に浸ってください。そして、心身ともに落ち着いたころに「今後どうするのか」の熟考に時間を費やすことをお勧めします。

「行政書士です!」だけでは受任はムリ

試験直後の興奮状態からクールダウンできたら、次に「開業」するかどうか考えてみてください。

行政書士の本質は、その生い立ちから「分野不特定の法律系国家資格」と定義できます。そのため、「行政書士です」と自己紹介しても、世間一般の方から「法律に携わる職業の人」と分かってもらっても「どんなサービスを提供してくれるのかわからない人」とみなされてしまいます。このようなことは行政書士の生い立ちから「宿命」といえます。

「行政書士の〇〇です!」と言いながら何百枚名刺を配っても依頼はまず来ません。「売りモノ」がなければ買いようがないのです。開業までに「私は〇〇を専門にしている行政書士です」と言い切れる実力を付けなければ受任はマズ無理。運良く受任できても、思うように業務がはかどらずに依頼者からクレームが付けられてしまうのが落ちです。

資格を利用して何をしたいのか考える

開業を目指す方は自分が行政書士という資格を活用して何をしたいのか考えてみることをお勧めします。そして、やりたいことが定まったら、まずは開業までに「やりたいこと」に関する専門知識を蓄えるなど準備に注力しましょう。

そのためには、「行政書士」という資格がどういった資格なのか、つまり、前述の「行政書士の本質」を深く理解する必要があります(行政書士の本質については、拙著『そうだったのか!行政書士』に詳説しています)。

最後に、開業を目指す方にエールを込めて次の言葉を送ります。「開業の成否は準備で決まる!」

引用・参考文献:『99日で受かる!行政書士試験最短合格術』(遠田誠貴)『行政書士合格者のためのウェブマーケティング実践講座』(遠田誠貴)、『行政書士合格者のための開業準備実践講座』(竹内豊)以上税務経理協会

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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