結婚について知っておきたい法知識~その1「夫婦同姓」

結婚するには夫か妻のいずれかの姓を選択しなくてはなりません。(写真:アフロ)

お付き合いをされている大好きなパートナーと結婚をすると、法律上、次のような権利と義務が生じます。

夫婦同氏(民法750条)

夫婦は、結婚の際に夫または妻の氏(法律では「姓」や「苗字」を「氏」と呼びます。)のどちらかを夫婦の氏として選択しなければなりません。

同居協力義務(民法752条)

夫婦は同居し、互いに協力し扶助し合わなくてはいけません。

貞操義務

夫婦は貞操義務を負います(つまり、不倫はダメということ)。

夫婦間の契約取消権(民法754条)

夫婦は結婚期間中に締結した夫婦間の契約を、結婚期間中はいつでも、何の理由もなしに一方的に取消すことができます(ただし、第三者の権利を害することはできません)。

その他にも、

・姻族関係の発生(民法725・728条)

・子が嫡出子(婚姻関係にある夫婦から生まれた子、つまり夫の子)となる(民法772・789条)。

・配偶者の相続権が認められる(民法890条)などがあります。

これらのことを結婚前に知っておくと、結婚後に慌てたり後悔したりせずに済みます。

今回は、「結婚について知っておきたい法知識」として、家族法をわかりやすく解説します。

第1回のテーマは「夫婦同氏」です。まず、次の記事をご覧ください。

結婚で姓を選択できないのは、「法の下の平等」を定めた憲法(憲法14条1項)に違反するとして、東証1部上場のソフトウェア開発会社サイボウスの青野慶久社長ら2人が、来春にも国に計220万円の損害賠償を求め東京地裁に提訴する方針を固めた。代理人弁護士によると、法律婚した男性による夫婦別姓訴訟は初めて。

青野さんは、旧姓の「青野」で経営者としての信頼を築いた。サイボウズは、2000年に東証マザーズ上場。翌01年の結婚時に妻の姓を選択してからも旧姓を通称として使っていた。しかし、所有していた株式の名義を戸籍上の姓に書き換えるのに約300万円を要した。青野さんは、「働き方が多様になった方が働きやすくなるのと同じで、姓も選択できる方が生きやすさにつながるはず」と訴えている。

また、同時に提訴する予定の20代女性は、旧姓への愛着が強く、「名前はアイデンティティそのもの。紙一枚(婚姻届)で別人になったことが悔しい」と話している(以上参考:毎日新聞、2017年11月9日)。

このように、夫婦の氏についてここ数年関心が高まっています。

では、民法を見てみましょう。民法は、夫婦の氏について次のように規定しています。

民法750条(夫婦の氏)

夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

夫婦は夫または妻のいずれかの氏にしなければ結婚できないのです。しかし、氏を変えたことで、先にご紹介したサイボウズの青野社長のように株の名義書換に300万円もの費用がかかってしまったり、20代女性のように愛着ある姓を変えて自分という存在の独自性を失ってしまったりする方もいます。

また、氏を変えた方(現状は大多数が妻)には、通常次のような数々の手続(名義書換)が待ち構えています。

・運転免許証等の各種免許証

・預金口座

・パスポート

・不動産登記 

・勤務先の諸手続 等

これらの手続には戸籍謄本や住民票等の必要書類をそろえたり、新しい姓の印鑑を用意したりするなど準備が大変です。さらに、平日に役所や銀行に足を運ばないといけません。中には、青野さんのように相当な費用がかかる場合もあります。

そこで、女性の社会進出等に伴い、氏を改めることによる社会的な不便・不利益が指摘されていることなどを背景に、現在「選択制夫婦別氏制度」の導入が検討されています。この制度の概要は次のとおりです。

・夫婦は同じ氏を名乗るという現在の制度に加えて、希望する夫婦が結婚後にそれぞれの結婚前の氏を名乗ることも認める。

・別氏夫婦を選択した場合、婚姻の際に、あらかじめ子どもが名乗るべき氏を決めておく。子どもが複数いるときは、子どもは全員同じ氏を名乗る。

・選択的夫婦別氏制度が導入される前に結婚した夫婦は、一定期間内に戸籍法の定める手続に従って届出等の要件を満たせば、別氏夫婦になることができる。

この制度の導入については、平成27年12月に閣議決定された「第4次男女共同参画基本計画」において、女子差別撤廃委員会の最終見解を踏まえ、選択的夫婦別氏制度の導入等の民法改正について、引き続き検討を進めるとされました。ただし、氏の問題は、婚姻制度や家族のあり方と関係する問題です。実現にはいましばらく時間がかかるようです。

厚生労働省の『平成28年度人口動態統計報告-婚姻に関する統計-の概況』によると、平成28年度に結婚して、夫の氏を選択した夫婦は96.0%、妻は4.0%でした(ちなみに、今から42年前の昭和50年は、夫が98.8%、妻が1.2%でした)。

このように現在も大多数が夫の氏を選択しています。しかし、妻の氏を選択した方が結婚生活を便宜的、精神的な面で幸せに過ごせる夫婦もいるでしょう。

民法は、「結婚に際して、夫又は妻の氏を称する」と定めています。当たり前のように夫の氏にする必要はありません。パートナーと一度結婚後の姓について話し合ってみてはいかがでしょうか。さらにお互いの絆を強めるきっかけになると思います。