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結婚について知っておきたい法知識~その4「貞操義務」

竹内豊行政書士
貞操義務に違反すると、大きな代償が伴います。(写真:アフロ)

お付き合いをしているパートナーと結婚すると、お互いに貞操義務を負います。貞操とは、「配偶者以外の者(夫または妻以外の人)と性的関係を結ばないこと」を言います。

不倫疑惑をかけられた著名人が「一線を越えていません」と釈明するのをお聞きになったことがあると思います。これは、相手とは性的関係を結んでいない。つまり、貞操義務を犯していないことを暗に主張しているのです。今回は、この貞操義務について見てみましょう。

●民法には貞操義務は規定されていない

貞操義務は、「民法第〇条:夫婦は、お互いに貞操義務を負う」のように民法の条文に規定されていません。

しかし、次の理由から、結婚をすると夫婦はお互いに貞操義務を負うとされています。

●結婚すると貞操義務が課せられる理由

次の3つの民法の条文により、夫婦はお互いに貞操義務を負うとされます。

その1.重婚が禁止されている。

民法732条(重婚の禁止)

配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。

ここでいう「婚姻」とは、戸籍に表れる関係のことです。法律上の配偶者がいる者が、別の異性と事実上の夫婦生活を営んでも、重婚にはなりません。

その2.「同居」「協力」「扶助」の3つの義務が規定されている。

民法752条(同居、協力及び扶助の義務)

夫婦は同居し、互いに扶助しなければならない。

結婚生活を維持するための基本な義務です。詳しくは、私の記事「結婚について知っておきたい法知識~その2「同居義務」「結婚について知っておきたい法知識~その3『協力義務』『扶助義務』」をご覧ください。

その3.不貞行為が離婚原因になる。

民法770条1項1号(裁判上の離婚)

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

1.配偶者に不貞な行為があったとき。

不貞行為とは、貞操義務に反する行為です。つまり、夫または妻以外の人と性的関係を持つ行為です。不貞行為が離婚の原因になるのは、道徳上当然の効果といえます。

ちなみに、民法770条は、離婚の原因として、「配偶者の不貞な行為」の他に、次の場合を挙げています。

・配偶者から悪意で遺棄されたとき。

・配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。

・配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

・その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

(以上民法770条1項2号~5号)

以上3つの条文に加えて、「一夫一婦制」という結婚の本質からしても、夫婦はお互いに貞操義務を負うとされています。

●貞操義務違反の代償

貞操義務に反すると、長年築き上げてきた家庭は一瞬で崩壊の危機に瀕します。不貞をした配偶者とその相手である当事者はもちろんですが、不貞をされた配偶者やその子どもまでも心身共に深く消し難いダメージを負います。加えて、当事者は慰謝料の支払いなど法的制裁を受ける場合もあります。

また、極めてプライベートな問題にもかかわらず、仕事に影響を及ぼすなどの社会的制裁を伴う場合もあります。これは、貞操義務が道徳的な問題と密接な関係にあることが原因と考えられます。

ほとんどの方は、「自分は不貞行為とは無縁」とお考えかもしれません。しかし、人生には「上り坂」「下り坂」そして、「まさか(坂)」の3つの坂があると言われます。

万一、無縁と考えていた不貞行為の「まさか」の情況に直面しそうになったら、「貞操義務違反は相当な代償を伴う」ことを思い出してください。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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