結婚について知っておきたい法知識 16 結婚生活を終わりにする3つのカタチ
婚姻は「当事者の一方の死亡」、「婚姻の取消」および「離婚」の以上3によって解消します。
結婚生活に不仲は起こりうるし、円満な夫婦生活に回復するように努力を強いることが不可能なことも当然あります。
破綻した、形式だけの婚姻は、婚姻外の性的関係(いわゆる「不倫」)を生むこともありうるなど婚姻の価値を否定することにもなりかねません。
破綻した婚姻から当事者を開放し、再婚や自立の自由を保障することが、民法が掲げる離婚の第一の目的です。
以下、離婚を解消する3つのカタチについて解説します。
●当事者の一方の死亡
死亡による解消の場合は、次の4つの点で、離婚の場合と異なります。
1.生存配偶者(夫が死亡した場合は妻)が婚姻によって氏を改めた者である場合、そのまま婚姻中の氏を称するか、婚姻前の氏に復するか、自由に選択できます(民法751条1項)。
2.姻族関係は当然には消滅しない。生存配偶者が姻族関係終了の意思表示をする(戸籍係へ「姻族関係終了の届出」をする)ことによって終了します(民法728条2項)。
3.親権者や監護者の決定を必要としません。生存配偶者が単独で親権を行使します。
4.離婚と異なり、財産分与の適用はなく、生存配偶者は相続人として、死亡配偶者の財産に対して相続権を持ちます。
●婚姻の取消
「不適齢婚」「重婚の場合の後婚」「近親婚」「再婚禁止機関の婚姻」および「詐欺脅迫による婚姻」は取り消すことができます(民法744・747条)。
●離婚
民法は次の4つの離婚の方法を定めています。
1.協議離婚(民法763条)
夫婦の間に離婚の合意がまとまり、それを戸籍法に従い届出ることで成立する。
(協議上の離婚)
763条 夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。
2.裁判離婚(民法770条)
民法の定める一定の離婚原因がある場合に離婚の訴えが認められ、判決によって成立する。
(裁判上の離婚)
770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
この他、「調停離婚」と「離婚訴訟」の2つの離婚制度があります。
3.調停離婚
離婚について当事者間の話合いがまとまらない場合や話合いができない場合には,家庭裁判所の調停手続を利用することができます。
調停手続では,離婚そのものの他、次のような内容も話し合うことができます。
・離婚後の子どもの親権者を誰にするか
・親権者とならない親と子との面会交流をどうするか
・養育費,離婚に際しての財産分与や年金分割の割合,慰謝料についてどうするかといった財産に関する問題
離婚の調停が成立した場合、 申立人には,戸籍法による届出義務があります。
調停が成立してから10日以内に,市区町村役場に離婚の届出をしなければなりません。届出には,調停調書謄本のほか,戸籍謄本などの提出を求められることがあります。また,年金分割の割合を決めた場合には,年金事務所,各共済組合又は私学事業団のいずれかにおいて,年金分割の請求手続を行う必要があります(家庭裁判所の調停に基づき自動的に分割されません)。
4.離婚訴訟
離婚について家事調停で解決ができない場合には,離婚訴訟を起こすことになります。
離婚訴訟では,離婚そのものの他次のような申立てもできます。
・未成年の子どもがいる場合に離婚後の親権者を定める
・財産分与や年金分割,子どもの養育費などについても離婚と同時に決めてほしいと申立てる
なお、離婚訴訟とともに,離婚に伴う慰謝料を求める訴訟を起こすこともできます。
冒頭で申し上げた通り、破綻した婚姻から当事者を開放し、再婚や自立の自由を保障することが、民法が掲げる離婚の第一の目的です。
縁あって一緒になった二人。できれば添い遂げたいですが、場合によっては「人生の選択肢の一つ」として離婚のカードを切ることもありかも知れません。